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哀れな赤ずきん

雨の勢いは弱まり雷雲も遠くの空へ。


後方から濡れた大地を蹴り追ってくるアリア。


仕方なく振り向き制止する。


「お前は足手まといだ。早く戻るんだ! 」


「うるさい! 人探しは多いほうが良いの。馬鹿なんだから! 」


大人しくしていればいいものを責任を感じやがって。


責任の取り方ぐらい考えろ。らしくなく焦るからこっちまで調子が狂うぜ。



多少弱まったとはいえこの雨ではどうにもならん。


シンディーの奴まだ食料集めしてるのか? さすがに雨宿りぐらいするよな。


「いいからこれ以上動くな! 」


「もう勝手でしょう! 」


反論されてしまう。やはり俺の威厳が足りていないのか。


今は無駄な言い争いをしてる時ではない。


それなのに元の関係に戻ったかのように対立してしまう。


元々こんなものと思えば冷静になれる。


だが彼女のすべてを知ってしまった今どうしても抑えられない。


まあすべてと言ったって彼女の告白のみ。まだいくらか隠してそうだが。


彼女も俺について深く知ったはずだ。もちろん俺も隠してることはいくつもある。


どうしてこうも拗れるのか自分でも分からない。



いやそうじゃない? シンディー。今はシンディーだ。


変な胸騒ぎがする。彼女に何かあったに違いない。


まさかがけ崩れにでも巻き込まれたか?


それとも倒木によって道が塞がれたか?


足を滑らせてあの深い闇に落ちたとか?


考えれば考えるほど悪い方向へ。


とにかく探すしかない。もう間もなく夕暮れ。


早いところシンディーを探さねば夜の山は危険が一杯だ。


どんな獣が待ち構えているか分からない。


ハッピー先生の教えではないが危険は出来るだけ回避すべきだ。



何とかアリアを説得したが理解してくれたか疑問が残る。


未だに文句を言ってるからやってられない。



「シンディー! どこだ? ふう…… 」


アリアの悪ふざけでこんな事態に陥ってしまった。


反省しているのか捜索に積極的。


ハッピー先生以下マウントシーの者には中を探すよう指示。


さすがに事情が事情だけに正直には言えない。


シンディーは間違いなく外にいる。


ハッピー先生に忠実なシンディーは今もまだ食料調達に奔走しているに違いない。


まさかもう戻ってきているのか? 入れ違いもあり得なくはないが……


山小屋の二人には事情を説明して山小屋と泉の周りを探してもらっている。


ただこれで本当に良いのか判断がつかない。



「アリアはもう少しこの辺を見回ってくれないか。


暗くてしかも雨の影響で視界が悪いと見過ごす恐れがある。できるだけ丁寧に。


俺はもっと先の方まで行ってみる。橋の近くまで行ったら戻るから頼んだぞ! 」


大声を張り上げたがこの強風。聞こえたかな。


「分かった。でも食材を取りに行ったんだから下りた可能性が高い。


そうでしょう大河? 私のいたずらで大変なことに。


早くシンディーさんを見つけてあげないと。私! 私! 」


アリアの焦りも尋常じゃない。こっちが焦ってどうする?


それは俺にも言えること。やはり後ろめたさからどうしても冷静でいられない。


アリアにうつつを抜かした余りシンディーを蔑ろにした。


あるまじき大失態。罪悪感がある。それ故焦ってしまう。


シンディー待ってろよ。必ず見つけ出してやるからな。



その頃バスの中。


「きゃああ! 誰か! 」


バスから漏れるシンディーの悲鳴。だが漏れた声は強風によって掻き消される。


絶体絶命のピンチ。


唯一の救いは彼の異常なまでのこだわり。狼にも狼のこだわりがあるという訳だ。


遅食い。


焦らすだけ焦らして弱ったところを頂く。


それが彼のスタイル。止められないでいる。



「へへへ…… 雨降ってるって時に誰が好き好んでこんなところへ来るかよ。


お楽しみはこれから。ゆっくり頂こうとするかな」


そう言うと再びめくり上げる。


「おっとやり過ぎた。へへへ…… 」


元に戻す。


それも飽き次に進む。


今度は靴を脱がし足を舐めまわす。


「どうだ気持ちよかったか? 」


「僕はめげない! 」


「何が僕だ? ガキみたいなこと言いやがって。そんな手に引っかかるか! 」


激高する狼。



「よし準備は良いな? それじゃあ…… 」


「ねえ狼さん僕…… 」


「うるさい黙ってろ! それにしても狭いな。いやセコイか。


仕方がねえもうちょっと広いところで料理するか」


そう言うと運転席に戻り開閉ボタンを押す。こうして固く閉ざされた扉が開く。


シンディーを雨降る薄暗い大地に乱暴に放り投げる男。


「やっぱりこうでないと。バスの中は狭くて行かんわ。


全力を出し切れないと申し訳ないしな。なあそうだろシンディー? 」


「何で僕の名前を…… 」


男はシンディーの名前を知っていた。ただの変態という訳ではなさそうだ。


異常なストーカー?



「では始めるぞ! 」


シンディーに覆い被さる。


「この日をどれだけ待ち望んだことか。分かるかお前に俺の気持ちが? 


今日だって朝早くお前の沐浴が見たくて泉のところまで行ったしよ。


もう少しでって時に邪魔者が現れやがってよう。あいつは一体何者なんだ?


ただの覗き仲間か? ああん? どうだって聞いてるんだよ。


まあいいかそんなことはよ。へへへ…… 」


「お願い…… 」


「どうした? 一発大声を出してみたらどうだ。誰も来やしねえがな」


「誰か! 」


                 続く

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