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オオカミと狩人

車内には当たり前だが他に乗客はいない。


このルートを利用するのはマウントシーの住人に限られる。


もちろんたまに山登りや遠足に来る者もいるし土日には島外からの観光客も。


ただそれも限定的だ。マウントシーの住人が下山しない限りバスに乗客はいない。



「あの…… 済みません」


もう一度呼びかけるがやはり反応がない。どうしてしまったんだろう?


「分かりました。降ります」


痺れを切らし行動に出る。


まさか気が付かないはず……


「へへへ…… そんなこと言わないでもう少しここに居たらどうだ。ふふふ……」


ようやく反応したと思ったら笑っている。


何この人? ちょっと気持ち悪い。



「運転手さん? 」


「あるんだけどな俺にも名前ぐらい。へへへ…… 」


豹変した運転手。無口だった今までと違い喋る喋る。


「ええと…… 奥噛さんでしょう? いつも乗ってますから」


「そうかい。でも俺の本当の名前は奥噛じゃなくて『墺噛』だけどな。


間違ったのを訂正するのがうっとうしくてよ。へへへ…… 」


嫌らしい笑みを浮かべる。


「墺噛さんですね。分かりました。ですから早く降ろしてください。


早く帰って夕食に間に合わせなければいけないんです」


かごを片手に立ち上がる。


「へへへ…… そういう訳には行かないんだよお嬢さん」


いつもと明らかに様子が違う墺噛に恐れを抱く。


大河に言われ携帯した銃を取り出す。


銃はさほど大きくないのでかごの奥深くにしまっていた。


「これ以上ふざけますと大変なことになりますよ」


声も手も震えどうにもならないが脅しにはなるでしょう。


これでごまかせる相手ならいいんだけど。



僕は銃を使えない。見るのも触るのも使うこともできない。


でも大河さんに説得されてかごに入れた。実際は大河さんに入れてもらった。



あの日あの時両親は亡くなった。


反対派だった二人。集会に突如乱入した賛成派。


銃の所持を巡って否決となった腹いせに集会に乱入した男による銃乱射の悲劇。


記憶があるのはそこまで。それ以降のことは記憶にない。


僕が幼かったのと詳細を誰も語らずに今現在まで封印したから。


でも実際僕はその現場を見ていた気がする。


パパ! パパ! パパ!


目の前で両親が惨殺されるところも他の仲間が島民が次々に凶弾に倒れたのも。


隠れてこっそり見ていた。男が現場を立ち去るまで一言も声を出さずに堪えた。


実際は出そうとしてもうまく声が出なかった。


そのことが原因で銃を触ることもできなくなってしまった。


もちろん訓練以外で銃を使う機会はなかったが……


ただ皮肉なことにあの悲劇により銃所有が認められた。


そこから現在まで規制はない。


大人用の物から子供用の物まで女性専用のお洒落なデザインの物まである。


結局騒動は何の意味もなかった。


やられる前にやる。


たとえ悲劇が起ころうとも関係ない。


銃所持の権利は島民の権利の一つなのだから。



「どうした。俺様が怖いか? 」


過去がフラッシュバック。


痺れを切らした墺噛は向かってくる。


「それ以上近づかないで! 」


緊迫の瞬間。


絶体絶命のピンチ。


それはシンディーにも墺噛にも言えること。


「そんなものに弾が入ってるのかね…… 」


「撃ちますよ。僕撃つよ! 」


「撃てるもんなら撃ってみやがれ! 


たとえ弾が入っていたとしても当たる訳がない。へへへ…… 」


「嫌らしい笑いは止めて! 」


「銃のことは俺の方が詳しいはずさ。そんな構え方じゃ絶対当たらねえ」


冷静に分析する墺噛。


「では遠慮なく」


パンパン

パンパン


墺噛を目がけて発射。


「けっ! 本当に撃ちやがった」


「警告です。バスから降ろしなさい! そうしなければ発射しますよ」


脅しをかけるが半笑いは止まらない。


「ほらどうした撃って来いよ! 」


挑発を繰り返す男。一体何を考えてるの?


次の瞬間撃ったと同時に身をかわしもう一発撃つ前に銃を振り払う墺噛。


震えた手から零れ落ち銃を奪われる。


武器を失ったシンディーにはもはや打つ手なし。



はあはあ

はあはあ


抵抗するシンディーを抑えつけ無理矢理脱がしにかかるマウントシーの狼。


ワンピースを引き裂くと下着のシャツ一枚になった。


シャツから透けて見える二つのきれいな胸が男を狼へと変身させる。


「止めて! 痛い! 」


シンディーが何を言っても通じない。ただ欲望のままに目の前の少女を貪る。


男は愛情の証か穢れた舌で全身を舐めまわす。


そして少しずつ下着を上へ下へとずらし始める。


ギリギリ見えるかどうかのところで元に戻しそれを何度か繰り返す。


その間も嫌らしい目と荒い鼻息、汚れた肉体から発する独特の臭いにさらされる。


耐えきれずに悲鳴を上げるが決して届きはしない。



「助けて大河! 助けてパパ…… 」


最悪の事態。


                   続く

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