雨に濡れた赤ずきん
廊下に響く足音。
「誰か来る! 」
急いで服を着ることに。
「おいこれ? 」
「私のじゃない。あなたが持ってたじゃない」
「俺だっけ…… 」
「あなたまさかただの変態? 」
「今は言い争いをしてる時じゃない。来るぞ! 」
納得のいかないアリアはむくれる。
勢いよくドアが開いたかと思うとそこからブリリアントの姿が。
「何だブリリアントか」
二人を確認すると何か言いたそうな顔でほっぺを膨らます。
もはや言い逃れはできない。
裸でもなく下着姿でもなく抱き合ってさえいない。
だが密室で男女が二人っきりでは何をしていたか想像がつくもの。
ブリリアントではそこまでの発想はないと思うが……
「あの…… 二人の事は後に回すとして今はシンディーさんが戻ってこない件で。
てっきりここに三人いると思ったんですが…… どうやら外出したみたいですね。
射撃訓練が終わり三人の行方を探していたブリリアントたち。
「大河さんもアリアさんも勝手にどこかへ行ってしまうから」
「済まなかった。ちょっと用があって抜けれなかったんだ」
「ふふふ…… 大河ったら嘘ばっかり。抜いたくせに」
俺を困らせようとブリリアントがいる前で下品な発言。
焦って顔を赤らめるとブリリアントもなぜか一緒に。
「あの…… 大河さん? 」
「いや何でもない。あいつのことは気にするな」
「そうですか。それではお二人にもご協力願います」
ブリリアントは急いで要件を済ますと少し迷ってから例の報告。
「ではこれで」
俺たちもすぐにシンディー捜索に加わる。
アリアがハッピー先生の真似をして追い払うから。
それだけではない。余計な頼み事までしやがって。
その尻拭いを俺たちがやるって訳だ。
後先考えないアリアには困ったものだ。
報告書。
要注意人物一覧。
岬アリア
正体不明。ハッピー先生との血縁関係にあらず。
虚言癖あり。
すべてが疑わしい。
深海エレン
よく館を抜け出しては近くの小屋で謎の人物と接触。
何やらよからぬことを企んでいる模様。
奥噛満男
バスの運転手。
今年島にやって来た男。過去は不明。
寡黙で何を考えてるか分からない。
副村長襲撃の犯人と目されている。
森の熊。
この辺りに出没すると噂のメス熊。
見かけることは少ないが最近頻繁に目撃されるように。
要警戒。
シンディーは夕食の材料を揃え終えると山登り開始。
かご一杯に採れたキノコや山菜を片手に来た道を戻る。
マウントシーに繋がる一本道を進むと橋が見えた。
これがいわゆる帰らずの橋。
狭いこともなく人がすれ違うこともできるし車だって通る。
行きはそこまで気にならなかったが橋を渡ってる間中、横に広がる暗き闇。
闇に閉ざされた世界を想像すると足が震える。
吸い込まれそうで嫌だ。
それにさっきから殺気が。胸騒ぎがする。
大丈夫。怖くない。僕は平気だ。
一歩ずつゆっくり進む。本当は急いで渡り切りたいが慎重にならざるを得ない。
そうこうしてるうちに空はどんどん暗くなり雨が降りだしてくる。
橋を渡り終え、あと十分でマウントシーって時に雨が激しくなる。
雨具を持ってこなかったシンディーは立ち往生。仕方なく大きな木の下で雨宿り。
しかし雨の勢いは収まるどころか留まるところを知らない。
あっと言う間に視界は無くなり横殴りの雨が容赦なく襲ってくる。
これはまずい。どうすれば?
雨宿りから十分が経過。遠くから音と共に光が見えた。
運良くバスが通りかかる。ライトに照らされ浮かび上がるシンディーの姿。
気付いた運転手が親切にも乗せてくれた。
濡れた服をハンカチで拭き上着を絞る。
ハッピー先生のおかげで頭巾が役に立った。
「ありがとうございます」
改めて礼を言う。
無言で頷きじっくり様子を窺うおかしな運転手。
ちょっと気持ちが悪い。
せっかく助けてくれたのに失礼だったかな。
ぼく…… 見られてる気がして嫌だ。
でも傷を見てるようでもなく何だろうか?
運転手はシンディーの服の下から透けて見える何かに興奮を覚えてる様子。
そうシンディーは下着をつけ忘れたのだ。
大河との行為の途中でハッピー先生に命じられ急いだあまり着替えを疎かにした。
スースーすると思ったら付け忘れちゃった。
でも気にしない。誰かに会う訳じゃない。
あと少しだもん。
油断した赤ずきんに狼の影が忍び寄る。
最悪の形。
雨が降り服がずぶ濡れでもはやそこから透け放題。
まあいいか。誰も気にしないさ。
バスは少し走ったところでストップ。いつもの停留所ではない。
「停留場までお願いします。できれば館まで行っていただけたら嬉しいんですが」
丁寧にお願いするが反応がない。
続く




