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愛しのアリア

最後の扉に手をかけたその時邪魔が入る。


「どうしたんだい大河。君変だよ」


アリアだ。未だにシンディーを演じている困った奴。


「ねえあったでしょう。僕の中の傷。ふふふ…… ほらここ」


そう言うと腕を掴み胸に持って行く。


俺にどうしろと?


「深く深く傷ついた心。あなたには見えるかしら? 」


もはやただのアリア。シンディーの振りは止めたらしい。


チャンス到来。


これで俺は逃れられる。このイカレタ女の誘惑から。


だがいくらもがいても抜け出すことが出来ない蟻地獄。


「そんな手に乗ると思うのか? 俺はお前が嫌いなんだ! 」


「そう大河…… 」


悲しそうな目で見つめる。


これ以上こいつの下手な芝居に付き合ってられるか。


「あなたの気持ちは分かってるつもり。仕方がない。


あなたにとって有益な情報を教えてもいい。これは取引よ」


「お前から俺が? どんな情報を欲してるって言うんだ? 」


体が勝手に吸い寄せられる。もう止まらない。


崩壊する理性。


今までのはすべて振り。


本当は俺だって求めていた。


ここまでされて応えない男はいない。


俺は彼女の本気に応えたい。



二人は見つめ合いお互いを認め合う。


「アリア」


「大河…… 」


愛を交わす。


男は惹きつけられるように女の誘惑に屈する。


女は嬉しさの余り涙を流す。


ここまでシンディーを真似なくてもね……



男は知る。


女が、アリアがこのマウントシーに相応しくないことを知る。


女のすべてを知った時男は後悔するのだろうか?


もはや悲劇的結末しか残されていない。


それが分かっていながら最善策を取ろうとしない。


今すぐにもマウントシーを出て行くべきだ。



何時間? 何分? どれだけの時間が経っただろうか?


求め合った男女は満たされた表情で横たわる。


「ごめん大河…… 」


冷静さを取り戻し一気に現実に引き戻されるアリア。


「勢いでこんなことを。私はシンディーさんに嫉妬してたのかもしれない。


二人が結ばれるのが耐えられなかった。この感情は誰にだってあるものでしょう?


ただここの子たちはそんな感情を持ち合わせているとは思えないけど。


言い訳ばかりしてごめんなさい。私のしたことは最低な行為よ。


シンディーさんを騙した。そしてあなたを…… 」



「もういいよ。これ以上何も言うな! 俺だって罪悪感に苛まれそうだ」


「ふふふ…… 二人仲良く地獄に堕ちるのも悪くない」


肩を寄せ子供のように甘えるアリア。


これが本来の彼女の姿なのかもしれない。


俺は一体彼女の何を見ていたのだろう?


「冗談だろ? 俺はそんなの信じちゃいないがな」


「もう大河ったら信じられない! 」


二人で笑いあった。



「ねえ知ってるこの島に伝わる三つ目の伝説」


「三つ? さあね。俺には関係ないことだ」


再び探りを入れるアリアに警戒する。


「まあいいわ。興味が無いならそれはそれで」


「おいおい。気になるだろう。ちゃんと教えてくれよ」


「三つ目の伝説それは…… 」



横でアリアの作り話を聞きながら窓の外を眺める。


午後から次第に雲が湧き、急に暗くなったと思ったら雷が鳴りだす。


さっきまでおかしな空を何とか保っていたが堪えきれずに雨粒が勢いよく落ちる。


一瞬でマウントシーは大雨に見舞われる夕暮れ。


「ねえ聞いてるの大河」


「ああ大体な」


実際はまったく。シンディーが気になって上の空。


聞いてる振りをしてる。だから実際には何一つ理解していない。


うんうんと適当に相槌。ばれたらまずいがこれも高等テクニック。



「それからもう一つ。これは眉唾ものだけどね…… 」


話しが長い。いつになったら終わるんだ。早く探さなくてはいけないのになあ。


「他の女のこと考えてたでしょう? 」


「いや…… ただ心配してるだけだ」


「ああシンディーさんね。それより聞いてる? 」


うんうん


もはや頷くのみ。


やっちまったから関心が次の女に移るなんて最低な人間じゃない。


俺はただ空の変化が気になるだけ。



「……私たち二人は決して結ばれない。それはあなたも分かってるでしょう?


でも来世では一緒になれるって信じてる。


だから行ってみない? 二人が幸せになれる場所に」


彼女は本気だ。適当に聞き流していた俺にもその熱意が伝わってくる。


しかし仮に見つけることが出来ても俺は選択しない。


悪いが他を当たってくれ。あそこは理想郷なんかじゃない。



「駆け落ちでもしようって訳か? 」


アリアの本心が知りたい。


「違う。できるならそうしたい。でも今の私にはできない」


「そうだよな。とりあえず祭りが終わってから考えようぜ」


今はそう濁すしかない。


彼女の覚悟は相当なもの。


このまま放っておいていいのか? 一度ハッピー先生に相談するか。



アリアは本当に傷ついていた。


今日だけは嘘をついてなかった。


俺を欲していた。


一体アリアは何者? ただの少女ではないのか?


ああそうか。もう穢れなき少女とは行かないか。


聖女ではない。俺が求めていたものではない。


念のために涙を採取したがたぶん違うな。


聖女の涙とは一体?



アリアは俺と交わって聖性を失ったのではない。


元々失われていたのだ。


「ねえ大河。真剣に考えておいて。私は本気よ」


「しかしどこにあるとも分からない眉唾情報を鵜呑みにしろと? 」


「愛の形はそれぞれ。私たちの愛の形も歪だけど決して間違ってない」


「ああ分かった。駆け落ちは真剣に考えておく」


重いな。駆け落ちだけでなくまさか…… ブタじゃあるまいし。



いざ行かん! 雲の向こう聖地レドシジア!


おっと感化されてしまった。



足音がする。


廊下をこちらに向かって走ってくる。


勢いよくドアが開くとブリリアントの姿が。


                  続く

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