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幻の酒・グリー酒

副村長宅に着いたと同時にミス・マームが声を上げる。


「大丈夫かしら彼女たち…… 」


心配性のミス・マーム。過保護は良くない。


いくらまだ子供とは言え一晩ぐらい何とかなる。


野生動物が襲ってくる訳でも大雨で館がどうにかなる訳でもない。


土砂崩れで何日も会えない訳でもないのだ。


まあ仮にそうなったとしても彼女たちなら問題ないさ。


一体何をそんなに心配する必要があるのか。



「どうしたの? 」


「今日緊急会議があり大河さんと管理人さんが出席したでしょう。


私たち二人も買い出しの為に下山。通常なら会議と重ならないんですが……


緊急だったのが仇になりマウントシーの皆を放っておく形に」


ため息を吐く。


「今晩ぐらい何とかなるでしょう」


「それがそうでもないんです。食糧もほとんど底をついてるし……


非常用の物はすべて倉庫の中。鍵は私が管理しているため入れません。


もし明日も帰れないようなら大変なことになる。ああどうしましょう」


そうならないように食糧を調達したのにそれが裏目に。


だがあらかじめ予想するのは不可能。ある程度仕方がない。



「大丈夫よ。きっと」


女が励ますがミス・マームは上の空。


「ほら落ち着いて」


話に割って入る。


「明日になってもバスが動かなければ俺が山を登ります。心配は無用です」


「それだけじゃ…… それだけじゃないんです! 」


最悪それしか方法が無い。だがまだ何か恐れている様子のミス・マーム。


隠し事は良くない。何でも俺に話して欲しい。できることは何でもするから……



「さあ入りましょう」


「でも…… その…… 」


「とにかく中に入ろう。ねえ。考えるのはそれから」


副村長に事情を説明し二人分の寝床を確保する。


ミス・マームは疲れているとのことで部屋で大人しくしてもらう。


心配性が再発したのだろう。この天気だし無理もないか。



晩飯を済ませお茶会に移る。


「いや今日は客人が多くてにぎやかでいいわ」


それぞれがコーヒーや紅茶にデザート、スナック類など好き勝手に。


副村長と管理人の男は酒と自由に楽しんでいる。


「大河君もどうかね」


「ダメです。未成年なんですから」


ミス・マームが臭いを嗅ぎつける。


「いや俺は別に付き合っても…… 」


「ダメです。私の目の黒い内は許しません。大河さんも誘惑されないで」


「ならばお主はどうじゃ? いや済まん冗談じゃ」


ミス・マームは一切飲まない。


シスターだからとか言うものではなく体質らしい。


でもこれくらいはっきりしていた方が良い。


酒を飲むとだらしが無くなり人間がダメになると疑わないミス・マーム。



「では皆さんそろそろ部屋に戻りたいと思います」


引き止める意味はない。


彼女は寝る時間も決まっている。一分でも遅れない。


早寝早起きが基本。でも館では……


「お酒はほどほどにしてくださいね」


せっかくの席に水を差す。



「そう言えば」


マームが戻ろうとしたところを副村長が止める。


「今日やっと完成したそうじゃ。祭りに使う神酒が三本届いた。


例年通り一本を供えに、もう一本を試飲に、最後をミス・マームに。頼んだぞ」


「分かりました。それでは預からせていただきます。ではおやすみなさい」


「よしそれでは他の者は届いた酒の味見と行こう。ははは…… 」



この島の動物たちの絵をパッケージにしたカラフルな色の瓶を開け皆に振る舞う。


「どうじゃ旨いか? 」


「ははは…… うめえ。うめえ」


「ほれお主も飲んでみよ」


「いやでも…… ミス・マームが…… 」


「細かい事を気にするでない。これはお神酒じゃ」


「それでは少しだけ」


うまく嵌められた気もするがどんな味がするか興味はある。


盃を空ける。


「うむ。それでこそ男じゃ。もうドンドン飲め」


管理人にも勧められて計三杯も飲まされる。


味見のつもりだったがこれはいけない。つい飲み過ぎてしまう。


「この島の酒は最高じゃ」


副村長は酔いが回って気分が高揚している。



島では盛んに酒造りが行われており島の数少ない特産品。


付近の島々も同様に酒蔵があり生産・販売されている。


これを買い求めに観光客が押し寄せてくることも。


祭りの時期には幻の酒が造られる。


幻の酒は祭りで使う神酒のことで特別に三本だけ造られる。


作り方も独特で杜氏以外誰も造り方を知らされていない。



もう一杯と勧める内に中身は空っぽになってしまった。


仕方なく他の酒に手を出す。


日本酒に焼酎に洋酒。何でもある。


頭が痛くなってきた。何だか胸がむかむかする。


うお! 気持ちわるい。


吐き気を催す。


トイレを借り最悪の事態は免れるがもうフラフラ。



戻ると副村長が出来上がっていた。


相当度数が高いのだろう。もはや副村長が何を言っているのか分からない。


管理人の二人も酔ってはいるものの強いのか遠慮がちなのか顔には現れない。


飲むペースがどんどん早くなっていく。


一時間もすると皆酔い潰れてしまった。



こうしてただのお茶会だったはずの地獄の飲み会はお開きとなった。


                続く

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