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大人の女性も悪くない

「ちょっと出て来ます」


ポツポツと降りだしてきた。


台風が近づいており風も強い。本来なら控えるべきだがこんなの大したことない。


ただ甘く見過ぎてまた山小屋で厄介になるような失態を犯したくない。


まあ付近を見て回るだけなら問題ないだろう。


せっかくなので島を散策することに。


懐かしい気がするのは錯覚だろうか。


どうもこの辺を駆けまわった記憶がある。


もっと言うと追いかけられ逃げ回った苦い記憶。



付近の家々は赤茶けた瓦の家がほとんどで一階が無い構造の高床式の作り。


都会ではめったにお目にかからない建築様式で大変珍しい。


「ちょっと何見てるんだい! 」


「あっちに行きなよ本当にまあいやだよ」


「ジロジロ見るんじゃない。このよそ者が! 」


いくら副村長のお達しが下ってもよそ者を排除する動きは止められない。


よそ者をここまで憎悪するのはなぜなのか? 単に俺が気に入らないだけか?


まったくやってられない。 


俺はまだガキだ。何かできるほどの力は持ち合わせていない。


しかも一人では限界がある。残念だがお望みのような侵入者像を演じられない。


暴れも騒ぎも叫びもしない。ただ話を聞くだけだ。


「あの…… 」


話しかけるもすぐにどっかへ行ってしまう。


「すみません…… 」


立ち止りもしない。


困った島民であり困った噂好きの老人たち。


もう俺には手に負えない。こっちから無視してやる。


副村長の協力があればそれだけで十分。余計な関わりは極力避けるのがいい。


観光ついでの島めぐりももこれくらいで。


下の世界にも多少慣れた。


そろそろ戻るとするか。



そんな風に考えていた矢先呼び止められる。


「あら大河さん」


大きな荷物を抱えこちらへ歩いてくるシルエットが弱々しい。


「おう、いつかの迷い人。ちょうどいいこの袋を持ってくれないか」


比較する訳ではないががっちりした力持ちの女性。


ミス・マームと山小屋の女性の二人だった。


二人の荷物を持ってやり言われるままついて行く。


「あの…… 二人はここへ何をしに? 」


汗が垂れ、目に染みる。視界が悪化。


大丈夫ですかと心配されるがもちろんこんなの大したことはない。


二人の一歩後ろを歩く。


汗もそうだが一番の難点は雨が強まったこと。小雨程度だったものが急変。


雨が強まると雨なのか汗なのか分からなくなってくる。


雨の勢いがさらに増す。


さすがに耐えられなくなったのか傘をさす女。


「何ってふふふ…… 夫のお迎え」


もう一つ傘を取り出すとミス・マームに。


大人の女性に挟まれ何とも言えない居心地の悪さ。


いい匂いがする。これはもう堪らない。くらくらしてきた。


「大河君だったっけ。あの人が心配してたわよ。


ちっとも顔をださないものだから。ふふふ…… 」


あの人? やはり夫ではないらしい。


実際には二人はどのような関係なのか。聞くのは忍ばれるが興味がある。



「そう言えば今日集会に来てましたね旦那さん」


思い切って攻めてみる。


「ふふふ…… 旦那? 勘違いしないで。私たちそんな関係じゃないの。


ただ二人で山小屋を管理してるだけ」


「大河さん失礼ですよ。立ち入ったことに踏み込んではいけません。


私どもは彼女たちの協力なくしてはやっていけないんですよ。


それにプライベートを詮索するのは失礼です。分かりましたか? 」


「大げさなんだからもう。二人は大人な関係なの分かった大河君? 」


「また誤解を招きかねない発言をして。もう知りませんよ」


「まあいいじゃない。私と医者の彼がマウントシーのお世話を任されているだけ。


だから夫を迎えに来たって言うのも冗談」


「何だそうだったんですか」


「ミス・マームと私が週に二日山を下りて食料の買い出しに行ってるってわけ」


「そう言うことです。少し急ぎましょう。間もなくバスが出てしまうわ」


両の耳から入ってくる大人の女性の吐息に興奮を隠せずにいる。


そんな状態で波状攻撃をお見舞いする二人。


わざとやってないか?


俺は試されてるのか? まあいいかどうだって。



「急ぐのよ君。ハリーアップ」


「もう大河さん何してるんですか? 」


「大きいわね。もう少し小さくしてなさい」


「濡れますよ大河さん。こっちに来て。そっちに行かないで。もう大河さん」


「ああバスがバスが…… 」


「大河さん大河さん…… 」


まったくこの二人は一体? うるさくて落ち着きがない。


それでいてバスには間に合いそうにないし。俺は一体ここで何をしてるやら。



うるさい!


二人には聞こえないように心で思うだけに止める。


それにしてもうるさい。ミス・マームも外では性格が変わってる気がする。


もしかすると流されやすい性格なのかもしれない。


「ほら早く」


「大河さん間に合いません」


本当にうるさくて敵わない。



マウントシーに向かうバスは悪天候のため停留所で足止めとなった。


協議した結果本日の運行は取りやめ。


「困ったどうしよう」


「仕方ないですよ。でも困りましたね大河さん」


このバスを利用する者は次々と不満を露わにする。


ただ利用者はこの二人だけで特に彼女が騒いでるのだが。


気にすることもなく元の道を戻る。このようなことは島では良くあるらしい。



「仕方ないわね。また副村長宅に泊めてもらいましょう。あの人もいることだし。


あなたもそのつもりでしょう」


「そうですね。でも中身が…… せっかく買ったのに残念です」


商品が腐らないか心配だと嘆くミス・マーム。


せっかく買い込んだ物を一から買い直す苦労は出来ればしたくないとのこと。


理解は示すがだからと言ってどうすることもできないのも事実。


もはやなるようにしかならない。


「ああ…… 」


結局副村長宅へ引き返すことに。


                続く

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