謎の侵入者
緊急会議中。
副村長の紹介を受ける。
「お言葉を返すようですが副村長」
さすがに無理がある。受け入れるには至らない。
「何も私どもが率先して悪口や焚き付けてるわけではないんです。
島の者が勝手に他所から来た者に嫌悪感を抱き噂が広がったのでしょうな」
反対派の筆頭である西原氏が噛みついた。
「だとしてもそれを抑えるのもお主らの役目ではないのか?
正すこともせず静観することもせずただ島民を利用するとは」
「何を抜かす! こ奴が怪しいから警戒するのは当然じゃないか」
「何? ふざけたことを抜かすでない! 」
「あんたの目が狂っていたらどう責任取るつもりだ! 」
言い争いに発展する。
「まあまあ二人とも静粛に」
「儂は…… 」
「それよりも続きがあるんじゃないんですか? 」
見かねた議長が止めに入り事なきを得る。
ここでは副村長と反対派が激しく対立している。いつもの光景。
実際勢力的には五分五分。
ただ島民に慕われている人格者の副村長が優位なのは間違いない。
何かへまでもやらかさない限り副村長兼島長の地位は揺るぎない。
熱しやすく頑固で怒りっぽいのが玉に瑕。
まあどの爺様も似たような者だが。
「脱線してしまったな。それで彼が例の青年だ」
自己紹介を済ます。
これで一員として認められただろうか?
うーん。そう簡単には行かないか。
だが彼らとも良好な関係を築ければ目当ての物により近づくのは間違いない。
ただ余計な情報を渡せば警戒するだろう。どう立ち回るかが鍵。
「彼は決して怪しい者ではない。観光の為にこの島を訪れた。
そう解釈してもらうとありがたい。少し用があって長居しているに過ぎない」
「用とは月祭りに参加すると言うことですか? 」
向かいの席に座る小心者で老けた見た目の若者が問いただす。
「いかにも! 彼の名は大河。立派な若者だ。
儂が参加を認めた。何か文句あるものはいるか? 」
少々強引だがこれも俺の為。村の為にもなる。
誰も表立って反論する者はいない。
副村長の言われるままに一言二言濁す程度。
こうして村で起きた騒動は沈静化に向かったかに思われた……
外では雨雲が広がりだし今にも泣きだしそうな空。
陽が雲に隠れてどんどん暗くなっていく。
そんな午後に差し掛かった。
家の者も外の者も一様に天気の急変に驚いている。
「それでは一段落したので台風対策と行きましょうか」
副村長の陰に隠れて存在感を失っている議長が仕切り始める。
もはやあれだけの存在感ではどちらが議長なのか判断がつかない。
副村長は議長の仕事まで取ってしまう勢い。
それではさすがにバランスが悪い。
台風対策へと話が進むが……
「いやちょっと待ってくれ」
「まだ話したりないんですか? できればこれ以上の発言は控えて欲しいのですが」
牽制する議長。
「ことは緊急を要する。皆よく聞いてくれ」
ガヤガヤ
ガヤガヤ
かつてない危機が迫っている。その事実は変わらないのだ。
「皆この若者が不審者だと警戒しているだろうが彼は潔白。
そして不審者の出没は確かに間違いない。別人と思われる。
だから注意してもらいたい。今日儂が言いたかったのはこの一点」
「ちょっと待ってください。彼が犯人ではないと? まさか信じられませんな」
「疑うのは構わないが彼ではない別の者だと言うことは皆頭に入れておくように。
奴の狙いが分からない。この情報をできれば島全体で共有してもらいたい」
「では一体そ奴は何者でしょうか? 」
「分からぬ」
風が強くなる。配られた紙が一枚一枚めくれていく。
「分からぬがこの島の者ではない怪しげな奴が島民に目撃されている。
しかも複数回だ。皆気をつけるのだぞ。警戒を怠るな」
ようやく次の議題へ移る。
結局マウントシーには戻らずに副村長宅で一泊することになった。
今日の緊急会議では島の代表者たちが一堂に会した。
その中には通常会議には顔を出さないマウントシーの代表、山小屋の主人も。
二人合わせて副村長宅の厄介になり台風が過ぎ去るのを待つ。
続く




