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番外編1 クリフのその後

「良かった!私だけじゃなかった‼」


国王陛下が倒れた夜会でオリビアは俺、クリフに抱き着いてきた。

思えばあれがここ最近で一番幸せだった記憶だ。

そこからは現実か夢か幻かよく分からない泥沼の中にいた。


聖女様の言う通りにして、本当にオリビアがこっちを見てくれたことで俺は更に聖女様の言葉を疑わなくなっていた。


怪しげな薬を渡されてもよく分からないままに飲んでいた。


「……どっか…………消えて」


オリビアが泣きながら俺の耳を撃ち抜いて、ほんの少し正気に戻った。

よく分からないけどこれ以上はよくないと思ったんだ。


姿を消したことで聖女様と会うことも無くなり幻覚と苦痛に苦しんでいるとき、俺はある新聞を目にした。

そこには今の俺に起こっていることが書かれていた。


幻覚も苦痛も聖女が元気になる薬としてくれた物のせい、俺の過去も全部聖女が仕組んでいたと。

そして王族主催の議論の場が出来るまでその新聞は毎日発行された。


どうしようもなく気になって議論の場に行ってみれば、警備の騎士と衛兵は俺が来ることを知らされていたらしく顔を見た瞬間に通してくれた。






「全部、アンタが仕組んだことだったんだよな」


聖女の処分が決まった翌日早朝、王宮の地下牢で寝ているとまだ日も昇っていない時間にそいつは護衛の騎士をつれてやって来た。

水色の髪にエメラルドグリーンの瞳、むかつくほど綺麗な顔と、わざと見せているのかボタンを数個外したシャツからわずかに見える首には人の歯形がくっきりあった。


多分、いやほぼ間違いなくオリビアの仕業だろう。

オリビア……そういう趣味だったのか…………。


こいつとオリビアのあれこれを想像してしまいそうになり、意識を無理やり目の前の男に集中させる。

ハワード殿下は牢屋に来て以来、無言でじっと俺のつま先から頭までを眺めまわした。


「…………ハァ~、そうだ、ゴミ聖女に追い打ちをかけるために用意したがまさか逆のことをするとはな……まぁ、ビアにはあれで良かったんだろう、一応礼を言う」


「お前からの礼なんていらねぇ、あれはオリビアのためにやったんだ!殺すならさっさと殺せ‼」


俺は意識が朦朧(もうろう)としていたとはいえ、二人がキスしてそれにむかついて刺したことをちゃんと覚えている。


あれは半分が薬、もう半分は紛れも無く俺の意思だ。

だから罪は償おうと思っていた。

刺した相手が王族なのだから、死刑も覚悟はしている。


もう死刑なのだから敬語も使わずハワード殿下に告げると、殿下はそれを鼻で笑ってきた。


「短絡的だな、ビアはこんなヤツのどこがよかったんだか、ハァ…………お前には二つ道をやる、僕に一生の忠誠を誓うか一生ここで過ごすか二つに一つだ。今すぐに選べ、選ばないなら後者になる」


「こ、殺さないのか?」


思わず格子に手をかけて聞くと、ハワード殿下は俺を馬鹿にするように歯形のある首をさすりながら鼻を鳴らした。


「ビアはああ見えて情が深くてね、お前を殺せば口には出さないだろうが酷く悲しむだろう……それに、第三騎士団長から嘆願書が届いている、僕の下僕となるから息子は殺さないでほしいとね」


「親父が……」


いつも俺を叱りつけ、血はつながっていないがいつも俺を心配してくれた本物の親父。


「さっさと選べ、早く終わらせてビアの寝顔を見ながら寝たいんだ」


俺の生死など心底どうでも良いようにハワード殿下は言った。


「殿下、俺は…………」







数日後、俺はまた国境付近の第三騎士団に来ていた。

戻ると第三騎士団の面々は俺を歓迎してくれた。

親父からは一発強烈なげんこつを食らい、毎日素振り4000回と1年間の雑用を言われただけで終わった。


俺は結局ハワード殿下に忠誠を誓うことを選んだ。

俺が死んで悲しむ人が確実に二人も居る。

だったらその人達の喜ぶ方に行きたい。


ハワード殿下から言われたのは一生この国境を死守すること。

指示があれば暗殺でも何でも一切の口答えなくやること、オリビアにハワード殿下の温情で幸せに生きながらえている内容の手紙を一通だけ送り、それ以後は連絡を取らないこと。


そして、3年以内に結婚すること。


「クリフ!ご飯出来たよ‼」


赤茶色の髪を一つにまとめ上げ、騎士団近くに居た飯屋の看板娘、ターナがご機嫌で言ってきた。

雑用の俺はターナが作った飯をとりわけ、団員達に渡していく。


戻って来てみると、ターナは飯屋の看板娘から騎士団の料理担当になっていた。

話を聞けば名前は知らないが貴族からかなりの給金とともに依頼されたらしい。


「ふふふ!クリフ~、ねぇ!悪女なんて好きになるものじゃないでしょう?約束通り慰めてあげよっか?」


「いらねぇ」


全てが殿下の手の平の上なのもむかつくし、オリビアに気持ちを残したまま結婚するのも本気で俺を好いてくれているターナに悪い。


そう思い、相手を探すがなかなか見つからない。

なんせ俺は被害者ではあるが、王都での大罪人でもある。

出来れば他に愛人がいる様な人と結婚したいと思い探すが、断られ続け、ターナからの圧は増すばかりだった。


面白い!続きが気になる!と思っていただけたらやる気につながるためブックマークや評価をお願いします‼<(_ _)>


既にしていただいた方、ありがとうございます‼


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