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※キャメル視点です!
「キャメル、君が好きなんだ、僕と結婚してほしい」
「キャメル、俺の方が兄上よりも君のことが好きなんだ」
「キャメル嬢、ずっと貴方を見ていた」
「キャメル……身分違いなのは分かってる、けど!俺はずっとお前のことが」
「あ~ん、もう最っ高♡」
私、キャメルは前世で死ぬ前はずっとこの時巡りの聖女をやっていた。
逆ハーエンドの総数実に57回。
私の幸せはゲームにあった。
前世でどうやって死んだのかはよく覚えていない。
でもいつも通り寝て、起きたら私は9歳のキャメルになっていた。
「もう最っ高♡」
これがこの世界に来てからの第一声。
これから私の人生は幸せ一色だと思っていた。
「まずは13歳の時にハワードを助けて、それから16歳になったら陛下を助けた後はバラ色の生活♡」
嬉しくて嬉しくて仕方がない中迎えた13歳のお茶会、私は招待されていないけどアレックスとハワードに会うために潜入したお茶会で絶望した。
「ビアは王妃の座が欲しいんだろう?だったら僕を選べばいいじゃないか」
「ハワード殿下、何度も言っていますが私はアレックス殿下の婚約者ですよ?」
「ハハッ今はまだね。僕が言えば父上の気持ちも変わるさ、後はビアの気持ち次第。ビアは僕のこと嫌いじゃないだろう?」
「それは……まぁ……」
「なら僕のことをちゃんと見て欲しい、今度デートに行こう!ビアの好きな甘いものでも食べながら話そう?」
物陰に隠れてタイミングを見計ろうとしていると、こちらに向かって歩いて来る悪役令嬢オリビアとその悪役令嬢の後をついていくハワード。
何、あれ。
悪役令嬢は趣味の悪い派手なドレスを着ているはずなのに、今のオリビアは薄紫色の清楚なドレスを着ていた。
そしてその後をついて行きながら悪役令嬢と手を繋ぎたそうに何度も彼女の手を見つめているハワード。
悪役令嬢にあんな優しい微笑みを見せるなんてゲームのハワードなら絶対に無い。
というか、ゲームではハワードは不敵に笑うけどいつも私の先回りをして誘ってくる役。
あんな風に女に媚びるなんて絶対にありえない。
それに何?ビアって愛称?気持ち悪い。
「兄上‼またお茶会を抜け出して‼それにオリビアは俺の婚約者です、諦めてください‼」
この頃にはもうハワードへの劣等感が凄まじく、それでも頑張ろうと13歳にしては大人びた雰囲気のはずのアレックスは少年らしい快活な声を出してハワードの前に立ちふさがった。
その顔にはハワードへの妬みなど一切無いといった明るい表情をしていた。
「何……これ…………」
「へぇ?3年前までビアのことをけなしていたお前が今度は婚約者面か!恥も何もお前には無いのか?」
「い、いいんですよ俺はこのままで‼俺は今のままで十分魅力的ですから‼」
顔を赤らめながらも胸を張るアレックスも私の知っている彼じゃない。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い‼‼
「誰だそこに居るのは」
吐き気で蹲っていると、低い声でハワードが聞いて来た。
まずい、どうしようゲームと展開違うし……。
その時私は閃いた。
多分これはよく言う悪役令嬢物で悪役令嬢が転生者だから変になっちゃったんだと思う。
けど私は正規の主人公。
しかも今日はどうしてもハワードルートに行きたくて、一周目だけど父の金庫からお金を盗み二周目のドレスを着ている。
大丈夫、私が姿を現せば全て綺麗に収まってくれる。
「あ、あの……私怪しい者じゃないんです」
か弱い声を出して茂みから出れば、ヒーロー二人に守られている悪役令嬢が居た。
本当に気持ち悪い、でも貴方のターンはここで終わり。
「キャメル⁉」
悪役令嬢が私に気がついたらしく、私の名を呼ぶが無視。
私はじっとハワードを見つめた。目を潤ませてゲームみたいに甘えた声をだす。
「私、ハワード殿下にお伝えしたいことがあってきたんです。ハワード殿下、このままでは貴方は貧民街で暗殺されるんです!」
渾身の演技でひ弱な令嬢が頑張って言いました感を出したが、その場にいた全員は無言。
?なんで?
「……兄上が暗殺される件ならもう既に片付いている、君は何者だ?」
「え?えっと……」
結局、初めてのお茶会の日はこの後王子二人に詰問され、そこを悪役令嬢が割って入りとりなしてくれた。
最悪、悪役令嬢さえちゃんとしてくれれば私は今頃ハワードと仲良く出来たのに。
何をしても上手くいかない。
しかも確認するとクリフの事件は起きなかったことになっているし、ニコラスまでも悪役令嬢好きになっていた。
16歳のデビュタントも待ち望んでいたのに、アレックスは男に囲まれていても助けてくれないし、国王は先に心臓病が発覚したとかで薬を飲んで倒れなかった。
しかも……。
「ビア、愛しているよ」
「ふふっありがとう」
「あれ?返してくれないの?」
「ちょっとハワード!もう、近いって!」
ゲームではただのデビュタントのための夜会だったはずなのに、なぜかハワードと悪役令嬢の婚約式が一緒に取り行われた。
しかもあの女は悪役令嬢らしく胸を強調した露出の高いドレスを着ているのに、ハワードはそれを受け入れている。
もう言葉にならない。
時巡りの魔法が使えるようになった感覚はあったため、格好悪いが自己申告すると私は聖女になれてしかもアレックスとすぐに婚約出来た。
アレックスは必死で愛そうとしてくれているが、その姿はゲームとは似ても似つかない。
こんなの違う、私の求めてたハッピーエンドじゃない。
〝リセット〟したくて力を使ってみるが上手くいかなかった。
原因は何となくわかった。
ハワードが死んでいないからだ。
最強の攻略対象者ハワードを殺すなんてか弱い私には出来ない、そう考えていると王太子妃になったあの悪役令嬢を見つめる王太子妃専属の護衛、クリフの存在に気がついた。
ハワードの魔法は植物、クリフの魔法は炎の竜巻。
試しにクリフへの差し入れに麻薬みたいな物を混ぜて少し唆せば彼はすぐさま動いた。
そして、ハワードを殺してくれて私はこの世界を〝リセット〟することが出来た。
2周目はこんな失敗しない。
ちゃんとお小遣いももっているし、何よりまずはクリフを助けにいった。
でも子供の頃のクリフは生意気で好きじゃないし、何かゲームと違って楽しくないから先にアレックスとハワードに会いに行ったのに上手くいかない。
好かれるのはいつもあの悪役令嬢。
3周目も4周目も、私があの悪役令嬢に虐められているフリをしてもいつも悪いのは私になる。
10周目くらい。
あの悪役令嬢が居なければ全部上手くいくと思って9歳に戻ってきた瞬間に殺したのに上手くいかなかった。
私は牢屋に入れられて惨めな7年間を過ごした。
でもそこでも時巡りの聖女の力が覚醒して、牢の番人は私を助けてくれた。
アレックスやニコラス、ハワードへの腹いせにあること無いこと王都で言いふらせば皆私の味方をしてくれて反乱が起きた。
そして、ハワード達王族は殺されてまたリセットすることが出来た。
だから大丈夫。
聖女が言うことを皆信じてくれるし、民は全員私の味方。
「出ろ」
多分1週間くらい経った日の朝、私の指や腕を折った老いぼれが来て牢屋から出るように命じてきた。
「これからお前は王都の代理人が集う議論の場に出される」
それだけ言うと老いぼれは私の腕を掴んで無理やり立たせて歩かせる。
むかつく。
私は主人公で聖女様でこんな老いぼれが触れて良い存在じゃないのに……。
捕まった時、老いぼれの時間を一気に戻して存在を消そうとしたけど無理だった。
魔法を使おうとした瞬間に次々と指や腕を折られて激痛で集中出来ない。
でももういいの、貧民も平民も貴族も誰もが私の味方。
長い回廊を歩くと正面には荘厳な扉と、衛兵が見えた。
衛兵に向かって視線を送るとなぜか睨まれる。
??何?
老いぼれの指示のもと、扉が開くとそこには円形の広い講堂の様な場所に所狭しと人が居た。
中心の部分を良く見える様に一段雰囲気が違う円形の場所以外は映画館みたいに段々に高く造られている。
観客、と言っていいのか分からないが、彼らは全て今入ってきた私を見ていた。
怖い瞳で皆睨んでくる。
何?皆ピンクの髪にピンクの瞳の私が聖女様だって知っているでしょう??
ハワードが私の言葉を聞いて言い出した議論の場。
ハワードが死なない限り私は世界の時を戻せない。
後ろで老いぼれが見張っている限り、時巡りの魔法を使うことさえ出来ない。
悪役令嬢オリビアは心配そうな顔でハワードの腕を軽く引き、ハワードは安心させるように優しくその手を握ると私に黒い笑顔を向けてきた。
「さぁ、お互い待ちに待った議論を始めようか」
にっこりと、それは素敵な笑顔で言う彼はギロチンの刃の様な鋭い視線を私に向けてきた。
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次回、3月6日に更新します!
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