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1日早いですが、投稿します‼

明日も投稿するのでよろしくお願い致します‼

「いいなぁ」


僕、ノワールはほとんど人を羨むことは無い。

例え自分に出来ないことをやってのける人間が居ても、敵にはせずこちら側につけようと思うくらいで他には何も思わない。


けど今は貴族の中で一番位の低い男爵でさえ、羨ましくて仕方が無かった。


いつもの黒髪黒目、眼鏡の変装をして僕は王宮の3階でひっそりと魔物の標本の物陰から愛しい恋人が代わる代わる男共と踊る姿を見ていた。


王宮のホールは吹き抜けになっており、3階まで昇ってくる人間はほとんどおらず、居ても逢引きなどやましいことがある者達なのでお互いに詮索はしない。


ビアの今日のドレスは赤。

フリルもレースもふんだんに使われまさに男好きの悪役令嬢の見た目をしている。


本来ドレスは婚約者であるアレックスが贈るのが通常だが、アレックスが義務的なこともしなくなってきたためビアが自分で買ったという(てい)で僕が贈ったものだ。


深紅のバラに群がる虫の様に火遊びをしたい貴族達がビアにすり寄っていく。

シナリオの都合で赤いドレスというのも気に入らない、赤はクリフの色だ。


「お呼びですかな」


日々の仕事と解決しない山積みの問題に睡眠を追いやられ、激しく眠いなかチリチリと胸の奥が焼ける感覚のまま会場の男全てに嫉妬していれば、後ろからトーマスに声をかけられた。


「トーマス、ディーンのことどう思う?」

「はて、どう、とはどういうことですかな?」


僕はビアから視線を外し、トーマスを横目でとらえた。


「クリフの言う〝あの人〟は僕の手の内を全て把握しすり抜けている、そんなの内通者が居るとしか考えられないだろう?」


じっとトーマスを見つめれば彼はきょとんと眼を見開いた後、笑い出した。


「ハハハ!余程切羽詰まっておられるのですな!この老害にまで揺さぶりをかけるとは‼」

「……ハァ、ハズレか……仕方が無いだろ、もう残すはお前くらいしか居なかったんだから」


トーマスが内通者なら、ディーンを疑っていることを言えば食いついて来るかと思ったが、剣の師匠であり人心掌握の師匠はそう甘くないらしい。

一発で見抜かれるとは……。


出来ればトーマスが内通者であって欲しかった。

そうすればまだ事が滞りなく運んだのに。


「僕の息のかかった人間は基本、お互いに接触をさせないようにしている。伝令役はいるけどそれも伝令から伝令に伝えさせて全体を把握しているのは僕一人と、一番古株のトーマス、お前だけだからなぁ」


「ははぁ、中々に手ごわい相手ですな、ノワール様に見当もつかせないとは」

「……いや、見当はついている……けど、目的が見えない。それに出来ることなら敵に回したくなかった」


トーマスは片眉を上げて意外の表情をとったがそれ以上聞いてこなかった。


下を見ると、キャメルとばかり居るアレックスとニコラスにビアが金切り声でしかりつけに行っていた。

それを遠くからほの暗いぎらついた瞳で見つめるクリフ。

アレックスは怒るビアから守るようにキャメルを背に庇っている。


「僕も、肉親の情くらいは持ち合わせているんだけどな」






夜会がつつがなくシナリオ通りに終了し、3週間後の石聖祭当日。

今日、キャメルは石聖祭のためのアクセサリーを買い、その帰り道に暗殺者に襲われる。

そこをクリフが助け、二人の仲はまた進展する。


ちなみにこの暗殺者を仕向けたのは表向きニコラスとなっており、濡れ衣を着せられたニコラスと共に黒幕であるビアに辿り着くことでニコラスとの仲も急速に進展する。


「ノワールお待たせ」


いつもの変装をして待っていると、古城の談話室にひょっこりと現れたビアを見て僕は息をのんだ。


ビアの薄紫色の瞳に合った薄い紫色のワンピース。

ちゃんとした布は胸元まででそこから上は更に白に近いレースで首まで覆っている。

スカート部分は下に向けて生地が徐々に薄い素材になっており、裾の先は少し透けて足が見えている。


悪女が男とデートしていても問題無いため、髪色は銀のままで軽く結われて水色のワンピースにかかり、輝いていた。


「ビア、そのワンピースよく似合っているよ」


暴れる下心を必死で内側にひた隠し、僕はビアの腰に手を添えて頬にそっとキスをした。


ビアは女性らしいラインがはっきりとしたスタイルのため、色気がすごい。

だがいつもの演技用の服の様な下品さは無く、妖艶な大人の女性と言った感じだった。


褒めながらも僕が着ていたジャケットを羽織らせ、結われた髪の丁度いい所に黒バラを咲かせる。

今回は忙しすぎて僕は服を贈ることが出来なかったが、まさかこうくるとは思わなかった。

もちろんあの秘密の庭園で僕だけが見るなら良いが、祭りで多くの人間に見られるかと思うとちょっと嫌だ。


僕のジャケットを着せると見える部分が狭まったからか、胸元のレースが余計に強調されて心臓が早く動き、ちょっと、いやかなり、いけない気持ちになってくる。


「ふふっ、ありがとう」


ビアは僕の行動に何も言わずただ軽く口にキスを返してきて妖しく微笑む。


「……わざとやっているな?」

「何のことかしら?」


ふふんと鼻を鳴らし、僕の恋心を手玉に取る姿はまさに悪女。

子供達も祭りに出かけているし、ディーンはビアを送り届けるとキャメル監視の方にすぐさま向かってしまった。


普段人の出入りが多いこの談話室も今は僕とビアの二人きりのため、可愛い挑発に乗ってゆっくり顔を近づけて熱いキスを交わす。


ついでに羽織らせたジャケットとドレスの間に手を入れ、ドレス越しにちょっと悪戯するとさっきまでノリノリだったビアは急にしおらしくなって退いてしまった。


挑発してきたビアがいけないんだ、ビアが。





「ノワール!あのホットドッグ食べよう!今日だけの特別メニューだって!」

「あぁ」


僕の腕に自身の腕を絡ませながらはしゃぐ姿は、さっきまでの妖艶さが嘘の様に可愛かった。

ビアは少女と大人の女性を行ったり来たりする可愛さがある。


簡易の屋台で買ったホットドッグは普段食べるものと違い、甘いホットケーキ生地で細切りのキャベツとソーセージを巻いていた。

一瞬合わないんじゃないかと思ったが、塩気と甘さがよく合う。


「美味しい!なんかアメリカンドッグみたい!」

「アメリカンドッグ??」


僕が聞けばビアはこくんと頷いた。


「ソーセージを串にさして、こんな感じのちょっと甘い生地で揚げたものなの。前世での……あれはおやつなのかな?」

「へぇいいね。今度シェフに言って作ってもらおう。サシミよりもずっと美味しそうだ!」


前世でのビアの食事情は奇妙奇天烈な物が多い。


生魚を切って豆から作った黒い汁をつけて食べるサシミだったり、糸を引くほどに腐らせた豆をまた豆から作った黒い汁をつけて食べるナットウだったり、茶色くなるまで腐らせた豆を溶かして飲むミソシルだったり……。


どれだけ腐った豆が好きなんだ。


「もう!お刺身も1回食べてもらえれば美味しさが分かるのに‼それも塩じゃなくて醤油とワサビが欲しい~!」


「出たなワサビ!作ってあげたいけど鼻にツンとくる辛さって本当に何なんだ?胡椒(こしょう)とは違うんだろう?」


「ん~、胡椒と違ってもっと鼻を突き抜ける辛さなの…………ねぇノワール、指輪だけ買ったら今日はもうあの庭園に行こっか」


「??なんで、まだ来たばかりだろう?」


「ふふっ美味しい物食べたら眠くなっちゃって。ノワールとお昼寝したいんだけど、駄目?」


ホットドッグはとうに食べ終わり、ビアは僕に体をすりつけるように抱きついて上目遣いで甘えてきた。


…………これ、僕のためか。


ビアにはバレないようにしていたが実は相当眠い。

今日のこの時間を作るために久しぶりに結構無理をした。

第一クリフの言う〝あの人〟の確証がまだ見つかっていないのに、眠るわけにはいかないとほとんど寝ていない日が続いている。


ビアは僕の寝不足を直接指摘すれば大丈夫と言うと分かっていて、自分の我儘に置き換えたんだ。


可愛いなぁ。


その気の回し方が愛しくて軽いキスをする。


「愛してるよ、ビア」

「私も愛してる」


好意を示せば当たり前の様に返してくれる、それが嬉しくて幸せでたまらない。

17歳の誕生日に人生で初めてずっと温めてきた思いを口にすれば、ビアは怯えて僕を嫌って逃げてしまった。


あの時はこんなに幸せな日がくるなんて想像していなくて、ビアが出て行った後、目の前が真っ暗になるくらい絶望していた。

けどあの時があったからこそ、この日常がとてつもない幸せなことだと実感できる。


寝不足も相まって、まるで宙に浮く様な幸福感。

これ以上無いくらいにビアを好きだと、愛しいと思う気持ちが押し寄せてくる。

大切にしたくて、僕だけのものにしたくて、でもビアの自由は奪いたくない複雑な気分。




最高に幸福だったからだろうか、それとも極度の寝不足だったからだろうか、僕は人混みにまぎれて後ろから迫りくる嫌な気配に気がつかなかった。



「ノワール‼‼後ろ‼」


ビアの叫び声で振り向けばそこには赤髪赤目のクリフが至近距離に居た。

反射で彼の剣の腹を手で弾いて心臓から逸らしたが、炎をまとった剣は僕の腹を深々と突き刺した。


「お前さえ居なければ……オリビアは俺の所に来るんだ…………」


赤くほの暗い瞳が僕を見据え、次に愛するビアを見据えた。


このままではいけない‼僕が意識を失えばビアが危ない‼


そう強く思うのに、腹からくる激痛のせいで意識が薄らいでいった。


面白い!続きが気になる!と思っていただけたらやる気につながるためブックマークや評価をお願いします‼<(_ _)>


既にしていただいた方、ありがとうございます‼


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