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古城で見つけた貴族の私生児である少年、コリンは魔法が使えた。

聞けば氷魔法が発現したとき、思わず貴族である父の手に触れてしまい彼の手を肘まで氷漬けにしてしまったらしい。


それに怒った父に追放されたと言っていた。


コリンに衣食住を安定させるから助けて欲しいと協力を仰ぎ、ハワード殿下が来るまで雪に紛れるために白い服で雪の中で待ち、おじいさんにコリンの魔法を補強する水が凍らないように湯を沸かし続けてもらい作戦に移った。


そこからはディーンとトーマスにここが物語の世界だと話し、協力してもらった。


古城に住んでいた子供達の中にはちらほら魔法を使える者もいて、協力して吹雪を発生させてもらい、殿下は泥水を被せて仮に護衛に見つかっても他の子供達と区別がつかないようにした。


そして私は気を失った。






白い空間に一人の少年が立っていた。

見た目は13、4歳だけど、ガリガリに痩せ細っているから多分本当の年齢はもうちょっといってる。

綺麗な水色の髪に黒い瞳をしている。

少年の名前を私は知らない、でも謝らなければと思った。


「ごめんなさい、どうしてもハワードを助けたかったの。貴方の死体を焼いてしまって本当にごめんなさい」


泣くことはずるいから絶対に涙がこぼれない様に謝罪の言葉を告げると私は唇を噛みしめた。

頭を下げ続けているが、彼からは沈黙が続いた。


「…………プハッ!もう駄目だ‼アハハハハ‼顔を上げていいよ」


予想だにしない明るい声が発せられ、顔を上げると彼は腹を抱えて笑っていた。


「?」

「アハハッ!何その不思議そうな顔‼何々?俺が恨んでると思ったわけ?」


ずいっと顔を近づけられ、思わずのけぞると彼は貴族の様に恭しくお辞儀をした。


「この度は王族にえ~と……昇格?する……えいよ?……あーもう分かんないな!とにかく、俺別に怒ってないよ!貧民街の子供が王族になるなんて死んだあとだとしてもスゲーことじゃん!」


カラカラと笑う彼からは悲壮感や怒気はまったく感じられない。


「それでもごめんなさい」


貧民街には死体を捨てる場所がある。

私はそこから彼を回収した。

彼の死を悼むでもなく、ただハワードの代わりとして使ったのだ。


「アハハッ魔王様は強情だね、じゃあさ、一個だけお願い」

「何?」


私が聞き返すと彼は手を握ってきた。


「魔王城に居る子供達がさ、なんかこう……勉強できるようにしてやってよ!俺、何が必要とかよく分かんないけどもっと本とか読めたらなって思ってたからさ!」


私は大きく頷いて、その拍子に涙が零れ落ちた。

急いで拭うと、少年は顔を近づけてきてそっと囁いた。


「あとさ、早く起きないと本物の王子様に悪戯されちゃうよ?」

「え?」


強い風が吹き少年の姿が霧に消えると、急に体が重くなった衝撃を感じて私は目を覚ました。

見ればすごい近くにハワードの顔がある。


「ハワード殿下?」

「あ、いや‼これは…………ビアが倒れたから心配で‼」

「??殿下、大丈夫ですか?顔が真っ赤ですけど」

「~~~~っ‼」


ハワード殿下はゲームでも今世でも見たことがない表情で真っ赤になって口を抑えている。

ゲームの強制力が働いて今度は病気で死ぬのかと思ったが、何だか体調は良さそうだった。

見まわすとそこは私が古城で使っている寝室。


さっきのあれは……私が都合よく作りあげた夢??


「殿下……あの、どこから話せばいいか分からないですけど……」


私が話しかけるとハワードは一息ついてまた私のベッドに腰かけてきた。


「ディーンとトーマスから聞いたよ、ここは物語の世界で僕には物語通りに死んで欲しいんだって?」


悪戯っぽく聞きながらベッドのわきにある水差しから水を注いで渡してくれる。


「あ、ありがとうございます……あの、信じられないとは思いますが」

「信じるよ」


私がどう説明しようか考えながら話しているとハワードは強い口調で言ってきた。

というかハワード、なんか近くないですか?


いつも綺麗なエメラルドグリーンの瞳が熱をもっている様に輝いて一心に私を見ているように見える。

いや、会話しているんだから私を見ているのは当たり前なんだけど……。


「ありがとうございます……それでその」

「あぁ、死ぬのはいいんだ。さっき決めた……それよりも」


じぃっとハワード殿下が私を見つめながら様子を伺ってくる。

その真剣な様子に私もごくりと唾を飲みこんで次の言葉を待った。


「誰が好きなんだ?」

「え?」


「恋愛小説だろう?大抵の令嬢は恋愛小説を読みながら登場人物の一人に恋をするものだと聞いた、で、ビアは誰を好きなのかな??」


ハワード殿下はいつもの人の良い笑みを浮かべながらも何か後ろに黒い物を背負っている。


「えぇっと……それ、関係ありますか?」


流石に〇〇に恋しています!小説のキャラクターです!なんて言える年でも無いので水を一口飲みながら冷静に聞くが、ハワードの笑みは崩れない。

というか、説明が面倒だから流しているけど本当は疑似恋愛のゲームだし、なお恥ずかしい。


「ん?僕はビアのお願いを無条件に聞いてあげているのに、そんな簡単な質問にも答えてくれないのかな?」

「…………い、言いたくありません。それとこれとは別問題です。私も殿下の命を守るために命を張りました。今は対等なはずです」


水の入ったコップを両手で持ち、キッと睨みつけるがハワード殿下は笑顔のまま徐々に距離を縮め、そっと私の髪に触れてきた。


「ビア、そういえば前の年齢は17歳なんだってね?僕よりずっと年上じゃないか、少しくらい年下の我儘を聞いてやるのが年長者の務めだと思うけどな?」


甘える様に言っているが、今世ではすでにハワードの方が体が大きい。

じっとりと斜め上から見下ろしながらハワード殿下は視線をそらさない。


「……今は同い年です」


ポツリと抗議してみるが、ハワード殿下はお構いなしに笑みを崩さず私の首に触れて、手を握ってきた。

ちょっと首がくすぐったい。


「強情だね、いいよ、なら順番に僕が聞いていこう。ニコラス?……違うな、じゃあアレックス?……クリフ」


クリフの名前が出た瞬間思わずピクッと動いてしまった。

我ながら分かりやす


バキンッ‼


何かが割れる音がしてそちらを見れば、花瓶に入っていたバラが花瓶を押しのけて成長していた。何かを求めるようにわさわさと部屋中に広がっていき、赤かった花弁は徐々に黒ずんでいく。


「へぇ??クリフか……小説の中の登場人物に恋をして?寝て起きたらその小説の中に入って??憧れていた登場人物と本当の恋に落ちる???」


やけに甘ったるい声で瞳をぎらつかせながらハワード殿下が言った。

なんかものすごく怒っているし、流石に怖い。

思わず後ろに下がろうとするがもう既にベッドの端で逃げ場は無い。

床には茎も葉も花も黒く変色したバラが波打ち、ところせましと浸食していく。


「あ、あの殿下……大丈夫ですか?」


「うん?大丈夫だけど??いやぁとても素敵な話だと思ってさ!自分が助けようとして逆に助けられた恋しい男が?例えば物語が始まる7年後とかに再会して??妙齢の男女になった2人は真実の恋に落ちる‼ハハハ‼素敵な物語だね‼」


眼は全く素敵と思っていないんですけど……。


「殿下、あの今日は疲れてますし」

「ノワールだ」


ハワード殿下は虚ろな笑いを一瞬で消し去り、急に真剣な顔をした。


「ハワード・ウェントワースは君が殺したんだろう?ビア、だから僕はもう平民のノワールだ。今までどれだけ言っても直さなかった敬語も、敬称も全て平民には必要無い、分かるね?」


「は、はい」

「はい???」


黒い笑みを浮かべたハワード改めノワールが聞き返してくる。


「…………うん、分かった」

「いい子だ」


ノワールは満足そうに頷くと私の左手をとりキスをしてきた。

いつの間に仕込んだのか、彼がキスをした後には左手の薬指に蔓が巻きつき黒バラが咲く。


「殿……ノワール、これはどういう……」

「うん?ただのバラだけど?」


にっこりと黒い笑みをつくり、平民ノワールはしばらく私のベッドから降りようとしなかった。


面白い!続きが気になる!と思っていただけたらやる気につながるためブックマークや評価をお願いします‼<(_ _)>


既にしていただいた方、ありがとうございます‼


次回8時に投稿します!


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