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若干パワハラ感ありますが、命がかかった訓練のためまかり通っているだけで作者的にはパワハラ否定派です。

『俺、絶対に……絶対に強くなるから‼騎士になってオリビアを守れるくらいに強くなるから‼‼だから!……その時にこの笛もっかい返す』


オリビアに約束を立てて3年、俺、クリフはオリビアに返す予定の笛を首からぶら下げて毎日訓練に励んでいた。


「クリフ遅っせぇぞ‼‼んなことやってっと真っ二つだ‼」


模造刀同士の打ち合いの最中、俺が斬りかかると先輩はすかさず俺の脇腹を狙ってくる。

避けきれず、また模造刀を振り上げ過ぎていなすことも出来ずにまともにくらってしまい、俺は地面に叩きつけられた。


「さっさと起きろ‼斬りかかってくださいって恰好で地面舐めてんじゃねぇ‼死にてぇのか‼」

「っ‼はい‼」


自分でも何に対しての返事なのか分からずとりあえず返事を返す。

ここ、第三騎士団は王国の中でも屈指の過酷さを誇る騎士団だった。

その理由は単純。


第三騎士団が守るこの南の国境を超えると、毎回戦争で国家を潤しているサイナント国があるから。

だからこそ俺達がなめられたら王国が終わるし、もし侵攻してきても一瞬で蹴散らせるほどの力を持っていなければならない。


事実、何度も密偵らしき小隊が国境を越えたり、時には少し国として攻撃を加えてきたことがあったらしい。


俺は立ち上がり、下から先輩の鳩尾めがけて突きを仕掛けるがいとも簡単に避けられてしまう。


「動きが直情的なんだ‼もっと相手の考えを読め‼‼」

「はい‼」

「返事だけ一丁前でも意味ねぇぞ‼‼」

「はい‼」


もう何度目か分からないくらい地面に転がされ、土まみれになって口の中までジャリジャリする。

それでも、孤児院の時と違って飯の量には制限なんて無いし稽古が終われば皆結構優しいし、毎日着実に強くなっていっている気がして俺は今かつてないほどに幸せだと思っていた。

たった一つのことを除いて。


「「「おはようございます‼‼」」」


後ろから大勢の声が聞こえてきて、俺と先輩も打ち合いを止めてそちらを見た。

練習場の中央を横切ってくる40代くらいの栗色の頭に栗色の瞳の男が目に入り、俺は模造刀を握りなおして一目散に走った。


「あ、おい!クリフ‼」

「お!クリフ今日もやんのか??」

「行けー!今日こそ一発ぶちかましてこい‼」


男に向かって走っていき、周りの団員達は(はや)し立てながらも当然の様に道を開けてくれる。いつものことだった。


チリリッと風がこすれる音がして俺の周りを熱風が取り巻いた。

思いきり踏み込み男に狙いをすまして飛び掛かれば俺を守る様に炎をまとった風が円を描いて吹き荒れる。


「このクソジジイ‼いい加減俺の手紙を通しやがれぇ‼」


俺が襲いかかっているのに当の本人、クソジジイこと第三騎士団長ヨーゼフ・アシュバーンは軽く溜め息を吐いてコバエでも振り払うかのように軽く手を動かし、自身の魔法である水で出来た蝙蝠(コウモリ)を10体出した。


「まったく!懲りない奴め、少しは成長しろ」


ヨーゼフの言葉と共に蝙蝠は一斉に俺に襲い掛かる、が。

所詮は小さい蝙蝠、俺を守る炎の竜巻を前にほとんどが焼石に水状態で消えていく。

俺だって多少は頭を使った。


前回は炎の隙間から蝙蝠が入りこみ、俺の口の中に入ることで気管にまで水が入りとんでもないことになったのだ。

今回は視界の殆どを隙間なく炎で埋め尽くしていく作戦が功を奏し、このままクソジジイに一撃入れられると思った瞬間‼


あらぬ方向から足を掴まれ俺は思い切り地面に叩きつけられた。


「かっ!ゲホッ‼……なんで……」


炎は消え、起き上がりながら見ると俺の足を掴んだのはヨーゼフだった。


「馬鹿が‼自分の視界を自分で閉じてどうする⁉」

「あ……」


「「「ブッ‼ギャッハハハハハハハ‼やっぱ面白れぇなクリフ‼」」」


団員達が爆笑するなか、俺は急速に理解していた。

普通に蝙蝠を正面から飛ばしてクソジジイは身を屈めて俺の足を掴んだだけですね、はい。


羞恥から真っ赤になり、拳を握りしめる俺をクソジジイは頭を撫でて宥めてくれた。


「ま、馬鹿なこともやってみなければ分からん。案外そういう馬鹿が一番成長するもんだ」


ポンポンと頭を軽く叩いてくる手を振り払い、俺はクソジジイを睨みつけた。


「そ、そんなこと言われなくても分かってる‼それよりもクソジ……騎士団長‼何で俺の手紙を通してくれねぇんだよ‼オリビアだってきっと心配してるしそれに‼俺、手紙を送るって言ったんだ‼」


「いつも言っているだろう、さるお方のご要望だ」

「だからそのさるお方って誰だよ‼‼」


「あー……まぁその、敵にまわしちゃいけないお人だな、お前も公爵令嬢のことなんて忘れてこっちで誰か見つけたらどうだ?ほらあの飯屋の看板娘とか」


「フ・ザ・ケ・ン・ナァァァアアア‼俺はオリビア一筋だぁ‼」


俺が叫ぶと団員の中からはおぉとか口笛を吹く音が聞こえた。



オリビアに最後に会ったあの晩、俺はわざと窓から侵入した。

使用人の人達はオリビアが変になっても前に戻っただけとしか言わなくて俺には何が起こっているのか分からなくて、オリビアの本当の気持ちを確かめたかったから窓からの侵入だ。


オリビアは俺が窓から顔を出せば血相変えて中に入れてくれた。

前みたいに心配してくれた。


オリビアには何かとんでもない隠し事がある、そう考えたとき、無性に俺の弱さを実感して絶対にオリビアを守りたいと思った。

好きだって、思ったんだ。





「でもオリビアって女、すっごい悪女だって聞いたけどなー?それに王子様の婚約者でしょう?」


夜、騎士団近くにある飯屋に行けば、そこの看板娘で俺の1つ上のターナが話しかけてきた。

赤茶色の髪に赤い瞳の綺麗な顔で騎士団のみならず、近くの村からも既に結婚の申し出がきているらしい。


先輩がいつもターナにオリビアの話をするせいで、ターナもいつも俺にオリビアを諦めるように言ってくる。


「本当はスゲェ優しいし……その、別にオリビアが誰と結婚しても俺は……オリビアを守りたい」

「よく言ったクリフ‼」

「それでこそ男だ‼よし!景気づけにもう一杯行くか‼」


先輩たちが俺にかこつけて乾杯するなか、ターナだけは大きな瞳を潤ませて不安そうな顔をして上目遣いで俺を見ている。


「クリフ、今は私が何を言っても駄目だよね。もし、もしもね、クリフの目が覚めたら私が精一杯慰めてあげるから……」

「慰めるってなんだよ、別にターナは関係無いじゃん」


俺が言うとターナは途端に目を潤ませて泣き始めた。


「あ~あ、泣かしたな」

「やっちまったなー、クリフ」

「は⁉なんで俺⁉」


……なんか、何だろうなこの感覚。

ターナは俺の1歳上で今年で15歳、3年前というとオリビアは俺の1歳下だから10歳。

なのになんか、オリビアの方が断然大人っぽかった。

3年経ってオリビアはどう変わったんだろう。


多分スゲェ美人になってんだろうなぁ。


「まぁまぁ安心しろよターナちゃん、クリフは領土外禁止令が出てるからさ!」

「領土外禁止令?」


先輩の一人が話しかけるとターナは希望をもった様に瞳を煌めかせた。

さっきの涙はどこに行ったんだ。


「クリフが領土から無断で出た場合即刻捕縛されるんだ、手紙の件と言い、こんなことをやってのけるなんてもしかしてさるお方ってぇのは公爵令嬢の婚約者の王子だったりしてな!なぁ‼団長‼」


俺も先輩もクソジジイを振り返るが、クソジジイは表情を一切変えずに酒を飲みほした。


「さぁな」

「……誰だっていい、絶対に王都に戻って今度は俺がオリビアを守るんだ」


首から下げた笛を握りしめ、決意を固めて近くにあったグラスを一気に飲み干し、間違えて先輩の酒を一気飲みしてしまい俺はそのままぶっ倒れたのであった。


面白い!続きが気になる!と思っていただけたらやる気につながるためブックマークや評価をお願いします‼<(_ _)>


既にしていただいた方、ありがとうございます‼

次回8時に投稿します!


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