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翌朝、私は早起きをしておよそ似合っているとは言えない深緑色のドレスを身にまとっていた。装飾品は金と深緑で統一しており、眼がチカチカするほどに豪華で何というか、視界的にうるさい感じだ。


ちなみに色の理由はアレックス殿下の瞳と髪色からきている。


「どう?ベラ」


私がくるりと周って見せるとベラは手を叩いて喜んだ。


「いい感じです‼まさに悪の令嬢です!」

「ふふ!でしょう!傲慢に見える?」

「見えます!血も涙もない傲慢な我儘令嬢に見えます!」


二人でクスクス笑い、一息つくとまだドレッサーに置いてある小さな水色の髪飾りが目に入った。

昨日ハワード殿下からもらった髪飾りだ。


「どうしますか?着けますか??」

「んー……殿下にはお世話になっているけど、今日は無理かな」



今日のお茶会はアレックスルートの始めのイベントであり、ハワードルートの始めのイベントだ。

失敗するわけにはいかない。


ゲーム一周目ではアレックスルートの始めのイベントとなる。

王宮で側近候補とハワード殿下は婚約者を決める重要なお茶会。

そうとは知らず、主人公キャメルはただ王宮のお茶会に行ってみたいという好奇心から中に忍び込んでしまう。


私達はデビュタントが16歳のため、親同士が親交が無ければ今日が初の顔合わせのようなもの。

そのためドレスを着て忍び込んだキャメルを誰も部外者だとは思わなかったが、貧乏男爵家で用意出来たドレスではどうしても高位貴族のなかで浮いてしまい、(オリビア)にいびられる。

そこをアレックス殿下が助け、二人は知り合うのだ。



ゲーム二周目では一周目からのお金をちょっと持ってきているため今度は豪華なドレスで忍び込む。

私にいびられることもなく、お茶会をさぼって木の上で居眠りをしていたハワード殿下を見事見つけ、命の危険があることを知らせる。


『ハワード殿下!あの、三ヶ月後の視察には行かないでください‼貴方を暗殺する罠なんです!』


必死でキャメルが訴えるとハワード殿下は蔓を使ってキャメルを自分の居る樹上まで引き上げてじっくりとその顔を見る。


幼いながら何となくいい雰囲気の二人のスチル。


『……君、高位貴族ではないね?どこから忍び込んだんだい?』

『え……何で……』

『高位貴族の顔と名前は肖像画で見て覚えている。それよりも部外者が乗り込んで視察が罠だなんて、君の家の人間がそう仕組んでいると捉えて良いのかな?』


『ち、違います‼違うんです……』


キャメルは潤んだ瞳でハワードを見つめ、ハワードは彼女を解放する。

これがハワードとキャメルの出会いだった。

これ以降、未来のアレックスからハワードの予定を事細かに聞いていたためちょこちょことハワードの所に現れる。


そして、何となく気になる女として興味を持たれ、最終的にはハワードの命を助け、ハワード攻略となる。



「そういえばオリビア様!アレ!忘れてますよ」

「あ、そういえばそうね」


私が物思いにふけっているとベラが指摘してくれた。

私は目を閉じて思いっきり息を吸い込んで金切り声を上げた。


「ちょっとベラ‼‼こんな化粧で良いと思っているの⁉今日はアレックス殿下と私の大事なお披露目何だからね⁉」


キンキン響く声で喚いた後、力いっぱい机を叩いた。


「キャア!止めてくださいオリビア様‼」


ベラも叫び声を上げながら私の朝食の準備をしている。

この三年で器用になったものだ。





「しっかし毎朝よくやるっすねー」

「令嬢として最低の行為をこうも続けるとなると、俄然その理由が気になりますな」

「教えるつもりはないけどね」


全ての支度を終え、ディーンとトーマスと馬車に乗った。

私としてはゲームとの齟齬(そご)を少しでも無くしたいので遠慮願いたいのだが、ハワード殿下の命令の方がどうしても優先される。


馬車が止まり、御者に扉を開けてもらうとそこにはアレックス殿下が居た。


「キャー‼‼アレックス殿下♡お出迎えありがとうございます♡」


私が無駄に高いテンションで喜ぶと、元々嫌そうな顔をしていたアレックス殿下の顔は汚物を見る顔に変わった。

同じ馬車内に座っていたディーンは笑ってこそいないが膝においた拳が震えている。

トーマスは元騎士団、現在傭兵もどきで自分を律することに慣れているのか無表情を貫いていた。


私はアレックス殿下から差し出された手を思い切り握り、流れる動きで馬車から降りるとすぐさま殿下の腕に絡みついた。

そして甘えた声を出す。


「アレックス殿下ぁ♡今日は私達の大事なお披露目ですね♡よろしくお願いしますぅ」


「………父上からの命令でさえなければすぐに婚約破棄をするのに……クソッ……今日は側近候補や、兄上の婚約者を見つける日だ‼そ」


あらあら殿下、皆が集まるお茶会でクソなんて言っちゃいけませんよ?


内心では別のことを思いつつ私は続けた。


「ふふふ!照れちゃって♡アレックス殿下は可愛いですね♡」


ツンと頬を優しくつつくとアレックス殿下は悪寒が走った様に震え、私を突き飛ばした。


「ふ、ふざけるな‼」


思ったよりも強く突き飛ばされ、私は思わず横目で地面を見て受け身をとろうとしてしまい固まった。

普通の令嬢が受け身なんてとれるはずがない。


あれ⁉普通に転ぶのってどうやるんだっけ⁉


焦っている間にも地面は近づく。

下手に考えたせいで変な体勢になり、地面からの衝撃を身構えたその時!

ふわっと何か柔らかいものに包み込まれた。


芝生の様な匂いがしたと思い目を開ければ、実際芝生の様な柔らかな植物が私を支え立たせてくれた。


「兄上‼」


アレックス殿下が呼んだ方を見るとハワード殿下がゆっくりとこちらに向かって歩きながら手をかざしていた。


「アレックス駄目だろう?曲がりなりにも女性を突き飛ばすなんて紳士からは程遠い。大丈夫かい?オリビア嬢」


「兄上申し訳」

「キャァ!ハワード殿下ぁ♡ありがとうございますぅ、おかげで助かりましたわ!」


今度は私がアレックス殿下を突き飛ばし、ハワード殿下にすり寄った。

アレックス殿下が私を王宮に呼ぶことは無いため実に三年ぶりに会うことになった。


以前は一歩間違えれば天使の様な顔立ちをしていたのに、今ではちゃんと男の子になりゲームとまったく同じ姿をしている。


「いや、オリビア嬢に怪我が無いようでよかったよ」


ハワード殿下は私の手を取り軽く口づけする。

まだ13歳の少年だというのになぜだか色気がすごい‼


演技抜きで顔を赤くしながら喜んだフリをした。

視線を感じて彼の瞳を見れば、ハワード殿下は私の髪をじっと見ている。


「それはそうとアレックス、アレックスには婚約の〝拒否権など無いのだからあまり従わない様ならお仕置きされてしまうよ〟気をつけた方がいい」

「はい、兄上」


しょぼんと気を落としながらアレックス殿下は私をエスコートする形をとった。

この言葉は……。


昨日、ディーンからの伝言は『これだけ良くしているのだから君に拒否権は無いよ』だったことを踏まえるとアレックス殿下に言っていると見せかけて私に言っているといえる。


私はもう一度アレックス殿下に絡みつきながら無理やり笑顔を作った。


「仕方がありませんわ!アレックス殿下も私の愛らしさに驚いたという〝事情があった〟のですから!」


うふふと笑いながら無理やりアレックス殿下にかこつけて返答すれば、ハワード殿下もそれに続く。


「そうか、事情があったのなら仕方が無いね。じゃあ今度からは〝事情がなんであれ適切な行動をとるように厳しくしつけないとね〟」


「あら怖い!ハワード殿下、もしかしてアレックス殿下に嫉妬してらっしゃるのかしら?私だったら〝あまり厳しくされると相手の弱みでもさらけ出してしまいそう〟になります!」


「おい、俺は別に」


話の主題であるアレックス殿下が口を挟もうとするが、それを遮りハワード殿下が続けた。


「ハハ、オリビア嬢は面白い事を言うなぁ、僕がそんなことをされたらアレックスの過去の話でも持ち出して〝共倒れを狙う〟けどね。〝まぁ僕ならその後の処理も完璧に出来るから被害は少なくすむ〟けど?」


ぐぬぅっと一瞬黙り込めば、後ろからついてきていたディーンが思わずブフッと笑い声を漏らした。


「殿下の方が一枚上手っすね」


ボソッと何か言ったがあまり聞き取れず、話の主題であるアレックス殿下を置いてきぼりにしたかけあいを続けながら私達はお茶会会場に到着した。


面白い!続きが気になる!と思っていただけたらやる気につながるためブックマークや評価をお願いします‼<(_ _)>


既にしていただいた方、ありがとうございます‼

次回1時間後に投稿します!


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