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ちょっと少ないです。
※ハワード視点です!
「予想よりも結構いかつい子でしたね~」
馬車に揺られながら遠のいていく公爵邸を見ていると、僕、ハワード・ウェントワースに御者に扮した従者、ディーンが話しかけてきた。
通常であれば王族に自ら気軽に話しかけるなどあってはならないが、僕らの間ではこれが当たり前だった。
「そうだな、それに思っていたよりもずっと馬鹿だったな」
「え?そうすか?殿下と張り合っているときなんかスゲェと思って聞き耳たてていたんすけど」
「たしかに令嬢で、しかもまだ10歳と幼いのにあの気迫や機転は見事だと思ったが……」
「いや、幼いって殿下も同じ10歳っすよね」
ディーンの言葉は無視し、僕は目を閉じてさっきまで居た弟の婚約者を思い出していた。
オリビア・オルブライト公爵令嬢。
3歳の時に災厄の異名をとる闇魔法が発現し、自身の周囲を跡形もなく消し飛ばしたことから腕に封印の刻印をされ、魔法をほとんど封じられている。
戦争に使われれば一瞬で戦況が変わる強力な魔法のため、父上は急ぎ弟のアレックスと婚約をさせ王国内に繋ぎとめることにした少女。
魔法は強く魔力も多く、身分も高く、また王子の婚約者。
甘やかされて育ったため、他者を思いやる心が無く傲慢な印象の取るに足らない令嬢だと思っていたが……。
『例えば、この世界の神様が誰かを傷つけようとしています。殿下はその人を助けたい、でも神様に逆らえばその人はもっと傷つくし周りの人にも被害が及ぶ、殿下ならどうしますか?』
「誰かを助けるために馬鹿なフリをしているのか?自分の評価を下げてまで?」
そんな行動、貴族としては正真正銘の馬鹿だとしか言えない。
己の名誉や欲のためにと言われた方がまだかしこい生き方だと言える、だが。
「彼女に愛された人間は幸せだな、その時の状況など関係なく絶対の味方だと信じられるのだから」
「そっすね~」
僕を取り巻く状況は複雑だ。
上辺では誰もが僕を次期国王だと誉めそやすが実のところ、ほとんどの者が僕には国王になってほしくないと思っている。
殺されそうになった回数も片手では数えきれない。
今でこそ、平民や私生児などから使えそうな人材を引き抜き信頼できる者で周りを固めているが彼らを盲目的に信じていいのかと考えてしまうときもある。
馬車が王宮に到着し、降りるとそこには弟のアレックスとニコラス公爵が待っていた。
「兄上、俺の言った通りだったでしょう?」
「あぁ、彼女は僕の予想を超えた馬鹿な令嬢だったよ」
僕の答えにアレックスは満足したようにフンと鼻を鳴らした。
どうやら僕の予想が外れ、自分が合っていたことが嬉しいらしい。
ニコラス公爵は深々と頭を下げてくる。
「この度は両殿下のお手を煩わせてしまい誠に申し訳ございません」
「いや、公爵が気にすることじゃないよ。僕が勝手に憶測をたててやったことだ…………それよりもアレックス」
「はい?」
「お前はオリビア嬢のこと、どう思っている?」
途端にアレックスは眉間に皺を寄せ、なんでそんな分かりきったことを聞くんだという顔をした。
「その……公爵の前で言うのもなんですが、令嬢として最低ですね。傲慢で品が無く欲深い。彼女が将来妻になるかと思うとぞっとします」
兄であるニコラス公爵はここまで妹がコケにされているのに黙って頷いていた。
僕はその2人の様子を見て心の中で笑ってしまった。
「そうだな、アレックスには別のもっと淑やかな女性が合うと思うよ」
「‼ですよね‼兄上もそう思いますよね‼」
パァッと笑顔になったアレックスの肩を宥めるように軽く叩き、僕は二人の間を抜け、ディーンを連れて自室へ戻った。
「手元に最高のお宝があるのにその価値に気が付けない人間は愚かだな。そう思わないかディーン?」
「そっすねー……って殿下まさか弟君から婚約者を盗るつもりっすか?」
「人聞きが悪いな、僕はアレックスが要らないと言っているから快く交換してやるだけだ。類まれな花はその価値を正しく理解している人間こそがもつべきだ、違うかな?」
僕が自室の引き出しからオリビアの事が記載されている書類を出していると、ディーンは微妙な顔をしていた。
「違わないっすけど……公爵令嬢ちゃんが嫌がったらどうするつもりっすか?」
「ハハッそんなことにはならないから安心しなよ」
僕はバサバサと書類を読み、その中の一枚をディーンに渡した。
渡した書類にはある少年のことが記載されている。
オリビアが孤児院に行ってからずっと親交を深め、オリビアが率先して守り、そして傷を負った少年。
「まずは邪魔者の排除といこうか」
にっこりとディーンに笑いかけると彼は震えあがった。
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