第37話 空に憧れているわけではないのだが…
ん…… 休日の時は小説のネタが思いつかない……
俺事、 加藤健二は今、 重巡洋艦『青葉?』の若干船尾側の甲板にいる。 クエスチョンマークを付けているが、 これはただこの艦の外見が重巡青葉と瓜二つなだけだったから勝手に重巡青葉と読んでいるだけだ。 造船した本人に聞いてないから、 仕方ないよね。
さて、 話を戻すが、 見上げると其処にはカタパルトがあった。 更にそのカタパルトの上には一機の渋い緑色の水上機が乗っかっている。
因みに、 その水上機は、 機体の下に小ぶりな船艇をつけたような単発の複葉機である。
(あれは零式水上観測機か?)
旧日本軍の軍用機、 知ってるちゃ知っているけどたまにどれがどれだかわからなくなるんだよな… まぁ形が似ているから仕方がないか………
とは言え、 零戦と隼の違いくらいは分かるからな!
「よ! 加藤どうした?」
「うわっ!?」
突然の背後からの声により驚かされ、 情けない声を出した。 驚いた後、 背後に振り向くと、 そこには金髪で耳が尖った少年が一人いた。 当然、 見覚えがある顔だ。
「なんだ…… お前か…」
「お前ではなくモーゼルなんだが」
「まぁ良いじゃねぇか」
たかがそんな事で…… ところで、 この艦を操舵をしなくていいのだろうか……?
「そういえば、 この艦の操作をしなくて良いのか?」
俺は、 素直に思った通りの事を言った。
「加藤が船長と言ってる奴に操舵を任せてる」
「大丈夫なのか……?」
「大丈夫だろ、 船体を操作するのはあちらの方が良いだろうし、 それにいざとなれば自動操縦出来るし」
「まじか」
いやいや、 それはないだろ…
彼等は帆船乗りなんだぞ、 帆船と近現代艦なんて操舵は判らんがそれ以外は天と地ほどの違いがあるはずだし…
…… まぁ、 操舵はこの艦の方が何倍も楽ではあるだろうけど…
… 帆船の舵輪重かったな〜
… あの船長なら今頃、 『図体がでかいのに何で速くて操舵性も良いんだ! 』なんて言ってそうだ。
「そう言えばあの船長… 『図体がでかいのに何で速くて操舵性も良いんだ!』なんて言って驚いていたぜ」
「…まぁ、 そうだろうな…」
思ってた事と全く同じじゃねぇか… こういうのは、 十八番じゃないんだがな…
「………なぁ加藤?」
「……ん? どうした?」
この質問が、 俺に会いにきた理由なんだろうな……
素直に聞きますか。 どうせ、 『〜操作出来る?』なんて質問だろうし…
「飛行機って操作出来る?」
飛行機? 冗談を…
「あ、 飛行機って言ってもあれだから」
モーゼルはカタパルトの方に指を指しながらそう言った。
「水上機か…」
昔、なんかの映画のワンシーンで『これは飛行機じゃない… 翼のついたヨットよ!』っぽい事を言ってたな…
……まさに、 アレだ。 あの映画のワンシーンと同じ状況だ。 だが、 あの映画と違うところは、 使い古されたエンジンが双発の民間の飛行艇か、 型は古いが新品同様でエンジンが単発の軍用複葉機(水上機)と言ったところだ。
「ところで、 なんで俺を選ぶ?」
俺は気になった事をまた口にした。
「だって、 エンストしたけど、 いとも簡単に戦車を下から」
「は? たったそれだけ?」
「それだけだよ」
……… 阿保か。
「…阿保、 戦車と飛行機とで、 操作の仕方は一緒だと思っているのか? 答えは違うに決まっているだろ! 戦車はただ、 地面や敵などを注意して走って居れば良いが、 飛行機は違う。 飛行機は天候、 高度、 風速、 燃料、 離着陸、 敵… とかを注意しないと死ぬんだぞ! ましてや故障でもしてみろ! 戦車ならただ止まって修理とかすれば良いが、 飛行機は場合によっては逃げ出す前に地面に激突して人生終了してしまうんだぞ! そんな死に方嫌に決まっているだろ! 常人とか頭の良い素人なら絶対反対するね!」
……ああ、 ちょっと言い過ぎたかな…… だが、 危ない事を他人に押し付けるなよ、 少しは、 かの有名な世界初の飛行機を作った兄弟を見習うのはどうだろうか?
「……… そうだよな… 加藤、 ごめんよ… 素人に無理難題をなすりつけようとして………
…… よし! 作った本人がその機体を乗りこなさないとな! じゃあ行ってくるわ!」
モーゼルは立ち去ろうと、 俺に背を見せた。 何か吹っ切れたような表情になったな……
「モーゼル、 待て!」
「へ?」
待てと呼ばれて、 モーゼルは振り返った。 当然、 驚いた表情だ。
「一つ質問だが…… 飛行機を操作した事はあるか?」
「………」
彼はそれを聞いて、 表情を曇り空のように曇らせた。
「無いよな…… わかった。 一つ頼みがあるのだが、 聞いてくれるか?」
「……… まさか!? 忠告したそばから自殺するつもりか!?」
自殺ね〜
………するかよ。
「阿保、 飛行機を操作した事があるこの俺が飛行機の事故如きで死ぬかよ」




