第36話 とある艦長の話
今回も話は短めです。
「アラス海域に到着したな」
二階建ての艦橋の中で、 一人の老人が180度張り巡らされたガラスの窓の向こうを観測しながら、 そう声に出す。 窓の外には、 艦首と1・2番砲塔、 青い海に少し離れたところに大小の島が不対象的に配置されている。
「ここがアラス海域ですか……」
一人の若いセーラー服を着た青年が、 操舵装置を操作しながらそう声に出すと、 目をキラキラとさせて窓の向こうを見回した。 それを見た老人は、 呆れた表情をしながら窓の外を双眼鏡で覗いた。
「艦長殿、 ここが貴方様がギャングと戦った異世界の海域なのですね!」
操舵員が、 そうウキウキとした声と表情で老人をじっと見ながら質問をする。 彼は双眼鏡を覗きながら呆れていたが、 ある言葉を聞いて表情を変えました。
「……… 新人、 一つ言っておくが……
儂はこの世界で、 まだ一度も戦争には参加してないぞ」
「え………? 艦長の艦の主砲が一度火を吹けばギャングの機帆船が9隻同時に轟沈したという話は………」
「ホラ話だろ」
「じゃあ、 艦長が軍艦に乗ると、 最大速力と旋回性能が上昇したというのは………」
「風の噂だろ……… というか、 よく信じたなそれ」
「ええ、 艦長は幾たびの海戦を勝利に導いてきましたから……」
「なんだそりゃ………」
艦長と呼ばれた彼は、 話を聞いているうちに、 呆れることしか出来なくなり、 無視することにして、 再び双眼鏡を覗きました。
「所で艦長……」
「………」
無視です。
「最近、 若返ってませんか?」
「………そうか?」
艦長は、 初めは無視しようとしましたが、 この話になると、 体を一瞬ビクッとさせました。 そして、 艦長は彼の話を聞く事にしました。
「だって、 出航してから結構一緒にいますが、 髪の色もシワの数も口調までなんか若返っているような気がするんです」
こればっかりには、 この部屋にいた他の船員達も彼の顔を見ながら頷きました。
「そう…だよな……?」
艦長自身もこれには疑問に思っていたらしく、 深く考え始めました。
「あの…… 考え事をしているときに申し訳ないのですが……
艦長、 我が国からの電信であります」
手帳を片手に、 部屋の入り口で艦長に向けて敬礼をして部屋に水兵が入って来ました。 ですが、 扉を開けっ放しにしているその部屋に辿り着くと、 その部屋内の水兵達が上司を見つめていたり、 その上司が部屋の外を眺めながら考え事をしている状態であった為、 無理してでもその空間に入って来ました。
「あ、 ああ…… 読み上げろ」
気の抜けたような声で、 その水兵に命令を下しました。
「『昨夜9時、 我ガ国ノ商船襲撃サレタシ、 敵武装集団ヲ発見シダイ商船ヲ取リ戻シ、 敵武装集団ヲ殲滅セヨ』との事です」
「……国は我々の艦の武装解除の事は言ったか?」
「そちらで判断せよ、 らしいです」
「そうか…… 係に伝えろ、 試作品である例のアレを使用せよと」
「はい! 了解であります。
手帳を持った水兵は部屋を出ました。 あと、 艦長は、 被っていた帽子をしっかりと整え、 部屋に残っている部下にこう命令を下しました。
「これより、 戦闘態勢に入る! 周囲を警戒せよ!」
と………




