第35話 出航
俺は、 前世の夢を見終わったのと同時に目を覚ました。 嬉しい様で悲しい夢だった………
話を戻し、 視野には、 白いタイルの天上にLEDのライトという、 またいつも通りの光景が広がっていた (まだ一度しか見たことが無い)。
流石に、 今回はこの部屋に誰も居ないようだ。 取り敢えず、 室内から出る事にした。 因みに、 服装は前世でも着ていたワイシャツに茶色のズボン、 あとこげ茶の革靴である。
部屋を出て廊下に着くと、 まだ行った事のない方の廊下から物音や人の声が聴こえてきた。 俺は、 そこに歩いて行く事にした。
どうやら、 其処は部屋になっていたようだ。 俺は軽く戸を開けて覗こうとした。 しかし………
「おお! カトウ殿、 ようやく目覚めたか」
左側からの、 聞き覚えのある声に行動を阻まれた。 俺は、 その方向を見る事にする。 しかし、 一言で言えば、 見るべきではなかった。
「せ、 船長……… その格好は………」
「ん? どうした?」
船長の今の姿は、 前世の世界にいる明香さんですら、 人前で見せない姿をしていた。 因みに、 明香さんのそんな姿を見たら、 多分ご自慢のVSSで殺されます。
その姿は、 なんと、 下着なのだ。 しかも風呂上がりなのか、 彼女の金髪や肌は輝きを反射し、 すべすべで身体付きも思っていた以上に筋肉質ではなく美しかった。 ………あと、 胸自体も思っていたよりはあった。
………おっとすみません。 俺は紳士ではないから。
「その格好じゃ、 目のやりどころに困りますよ……」
「別に良いではないか、 私のとこの兵士はもう慣れているぞ」
え? ホント?
「貴女のところの兵士、 全員男ですよ? 俺も歳頃ですが、 下心で見る輩も居るのでは………」
男はそういう生き物だからな………
……… 俺は違うからね!!
「大丈夫だ。 そういった輩には、 こうすればそんな目で見なくなる」
彼女はそう言うと、 まるで蹴りを繰り出してくる様な体勢をして来た。 そして、 息を吐く声と共に、 男の急所 (俺の) に向けて膝を繰り出して来た。 彼女のタオルが飛ぶ。 当然、 俺はそれを対応して、 背後に向けて地面を蹴るが、 彼女は俺がさっき居た場所の数センチ手前で、 膝蹴りを中止していた。 どうやら、 本気ではなかった様だ。
彼女はその体制を5秒程停止させた後、 首にかけていたタオルを直し、 元の体勢に戻った。
「これした後にこう言うのだ『次は本気でやる……!』、 と」
「え、 ええ……」
………うん、 怖い。
「………ところで、 カトウ殿、 ちょっと付いて来て欲しいのだが………」
「……… はい、 分かりました」
うん、 さっきの忘れよ……
船長は、 自分が入ろうとした部屋に堂々と入った(下着のままで)。 俺も彼女に続いて部屋に入った。
その部屋に入ると、 そこは壁や床がコンクリートでできた巨大な部屋であった。 巨大さを言うなら、 奥行きは少なくとも200m以上で幅は70m以上、 最後に高さは50m程度だ。部屋の奥は巨大なゲートになっている。 そんな部屋の中心に、 一際目立つ鉄製の軍艦があった。
その軍艦は、 艦首と艦尾に二連装の回転砲塔を艦首に二基、 艦尾に一基搭載しており、 中心は艦首の方から艦橋、煙突(二本)、カタパルト(艦載機搭載済) の順に並んでいる。 あと中心部の両舷には、 片舷に二基ずつ対空砲が並べられており、 カタパルトの下には魚雷発射口の様なものがあった。 当然、 その軍艦は鋼鉄製である。
「カトウ殿、 あの軍艦? は見た事はあるか?」
外見は型落ちでも、 この世界には存在しない代物だ。 当然、 この世界の住人である船長には知る由も無い。
ただ、 一言言えるとしたら、 野蛮な人海戦術からのアボルタージュをされない限り無双は出来るだろう。
「重巡洋艦『青葉』か……………
俺の世界じゃ型落ちな軍艦ですね。 でも、 対空用の武装はファランクスバルカンにオートメララ127mm単装速射砲、 あとレーダーなんてもんも真新しい代物に変えられているな (流石にイージスシステムは搭載していそうにはないが)」
「ふぁらんくす? おーとめらら? れーだー?
………そ、 そうなのか?」
主砲以外、 日本の護衛艦と同じ装備だ。 もしかしたらミサイル積んでるかもしれない。 まぁ、 船長に兵装の名前を言ったって、 彼女には知る由も無いだろう。
ところで、 あの転生エルフは日本が好きなのか? 俺もあの兵器は好きなのだが………
「だが、 成る程だな」
「何故に?」
「あの図体もあるだろうが、 主武装である大口径の魔砲を中心に置くことにより、 砲撃時の反動は大分軽減されるだろう。 更にその魔砲を装甲で覆うことにより砲手の身を守ることが出来る。 我が国の軍艦をにも搭載できないだろうか………」
確かに、 回転砲塔は画期的だ。 だが、 回転砲塔は重量があるからな……… それに、 この世界の造船技術で作ることが出来るだろうか……?
「おーい! カトー! もう出航出来るようにしたから放送室で放送して全員集めて来てくれ〜!」
「嗚呼、 わかった! 」
俺はその部屋を走って外に出た。 一回、 ここに居たことがあった為、 放送室を見つける事は容易であった。 そして、 俺は放送で兵士や捕虜(海賊や敵国の兵士)を軍艦のある部屋に集め、 乗船させ、 全員搭乗したところで鋼鉄の軍艦は異世界の大海原に出航した。




