第38話 浮きではなくフロートだ
「へ? 今何と……?」
飛行機を操作した事があると言ったら、 彼は驚いた表情でこう言ってきた。 どうやら、 彼の思考が停止したらしい。
「俺は飛行機を操作したことがある、 と言っただけだが?」
「乗れないとか言ってなかったっけ?」
「そんな事一ミリも言ってないが…」
俺の覚えてる範囲では言ってない筈だ。 というか、 俺のいたところはな…
「……加藤が前世の時にやってた仕事はパイロットか何かか……?」
「いや、 ただのレンジャーだが?」
俺はパイロットではない… ただ上司から『ここにある乗り物は全て使えるようになっとけ』 とかと言われただけだし…
「…レンジャーって、 そんな仕事だっけか?」
「さぁ、 うちが居たとこが特殊なだけだと思う」
「そうか……」
まぁ、 乗り物を運転できない明香さんは例外だけどね。 100mにつき一回の故障って…
「まぁ、 そんな事より操縦席に乗せてくれや。 あと、 カタパルトから飛ばしたら失敗すると思うから水上から飛ばさせてくれ。 それと、 これのマニュアルがあれば読ませてくれ」
「りょ、 了解。 すぐに準備してくる、 あと機関を停止させなければ……」
そう言いながら、 艦内に戻って行った。 俺は再びカタパルトの方へ目をやり、 「飛べるだろうか?」 と呟いた。
それから数分後、 ゆっくりと速度を落とし、 最終的には機関を停止した。 停止すると、 クレーンが起動し始めて、カタパルトに載っていた零式水上偵察機が海上に降ろされた。 波もなく、 風もあまり無い為、 きっとフライトさせるのには良い日だろう。
しばらくその光景を眺めていると、 モーゼルは右手に一冊の本を持ちながら、 俺の方に走って来て、 目の前に来ると息を荒くしながら俺のところで止まった。
「加藤、 もういつでも飛ばせるよ! あとマニュアル」
「よし、 もう行ってくるわ」
俺はマニュアルを貰ってからあることに気づいた。 それはマニュアルの横に白い紙が折り畳まれていた。
「この紙は何だ?」
と、 俺はそれを開かずに聞いてみた。
「これはレーダーを使って探索した敵かも知れない船の場所を簡単に書いたものだよ」
「ほう、 そうなのか。 成る程、 何隻もあるな… まぁ、 零式水上偵察機の航続距離なら行けなくもないが…」
レーダーねぇ、 まぁ確かに乗っかっていたな。
「…あと頼みたい事なんだけどさ」
「なんだ?」
頼みたい事? 新しい拠点探しか?
「アラス海域という所にいるこの船影を一番初めに調べてくれない?」
俺が開いていた白い紙に書かれたものの一つに指をさしながらそう答えた。




