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Ⅸ 合流

 カルトは雨が降り出したことにも気付かず、立ち尽くしていた。


(雨……?)


 雨と混ざり合ったそこら中を埋め尽くす血液はさらにその惨状を激しいものへと変えていた。


(……俺の、せいなのか? 俺が、止められなかったから)


 カルトはその場にしゃがみ込んでしまった。


「――カルト?」


 突然呼びかけられたカルトは反射的に顔を上げた。


「クレイ? お前、何でここに……」


 そこにいたのはサラハにいるはずのクレイだった。


「何でって、一応紙飛行機に書いたはずなんだが、『そっちに行く』って書いてなかったか?」

「――読んでない」

「は!? しっかりしろよー」

「悪かった……」


 いつものような覇気のないカルトにクレイは違和感を覚えた。


「とりあえず、家に入ろうぜ? あっちの情報も見てないんだろ?」

「ああ……」


 クレイは足取りもおぼつかないカルトを無理やり連れて帰った。


「ったく、何で雨の中立ってたんだよ。いくらエファセといえど危ないだろ」

「――悪かった」


 カルトはクレイに頭を拭かれつつ、説教をされていた。


「しっかりしろよ! エファセのお前がしっかりしなくてどうすんだよ!! 確かに酷い状況だった、でも、止められなかったのは仕方ないだろ!?」


 突然声を荒げたクレイにカルトは目を丸くした。そしてクレイは我に返ったのかあたふたと慌てだした。


「あ、悪い、つい……」

「いや、すまない。俺らしくなかった」


 そのクレイの一言でカルトは正気を取り戻したのである。


「それで、サラハの様子は?」


 いつも通りに戻ったカルトはクレイに尋ねた。


「サラハも酷いぞ。こっちみたく道に逃げ惑う人はいないからな。いたとしてももう死んでる。道に転がってるのは人だった骨と内臓。そして充満する血の匂いだ。もちろん生きてるやつもいるだろうが、家に篭ってるんだろうな」

「それが賢明な判断だろう」


(しかし、既に死んでいるということはサラハの方から侵攻してきたってことか……?)


「バレンティアはどうだったんだ?」

「こっちはそこまででもない。が、中央が堕ちたはずだ。国王は無事だとしても、下のやつらはどうだか」

「そっか」

「……そういえば、もう抵抗はなくなったんだな」

「何がだ?」

「モストロを殺すことにだよ。はじめは酷かっただろ。気配は消せない、ナイフも持てない、銃も持てない。それに“同族なんて殺せない!”とか言い出すしな」

「いつのこと言ってんだよ! 今はもう慣れた」


 クレイは苦笑して答えた。


「まだ1年くらいしか経ってないんだがな」

「それで、これからどうするんだ?」

「とりあえず様子見だ。お前のことだ。サラハに“あいつら”置いてきたんだろ?」

「もちろん!」

「じゃあ、サラハはあいつらに任せるか。お前はこっちにいろ、あいつらには終わり次第連絡しろ、って伝えてな。バレンティアとサラハの様子見が終わったら周りの国、見回りに行く」

「了解! じゃあ、俺あっちのほう見てくるな!」


 遠ざかるクレイの背中を見つつ、カルトは1年間を思い出していた。

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