Ⅹ 状況
サラハに行かせた間にすっかり成長したクレイはカルトの身長も抜き、がっしりした男になっていた。
(本当、頼りになる。成長したな。――しかし、今回の件はいったい誰が。ミラはきっと実行するだけの捨て駒なのだろう。まさかあいつが……?)
「……ト! おいカルト!」
カルトが顔を上げると至近距離にクレイの顔があった。
「あぁ、クレイか。早かったな」
「早くねぇよ。もう何時間経ったと思ってんだ」
「そんなに経ったか?」
「経った! もうバレンティアは全部見てきたぞ?」
「……どうだった?」
「“中央を除いて”まだ軽いほうだな」
「そうか」
(やはり中央は堕ちていたか……)
「あとは、サラハの様子か」
「そうだな。“あいつら”から連絡は?」
「ついさっきあったぞ。 “今出たから夜には着くと思う”ってよ」
「なら、今日は家で待機だ」
「了解!」
「“家で待機”と言ったはずなんだがな」
誰もいない道を1人、ルンルンと歩いていくクレイの後ろ姿を見ていたカルトは思わず呟いた。
(とかいいつつ、ついていく俺も俺か)
「カルト! 市場やってるぞ!」
「市場?」
「おう! 今日の夜飯買ってこうぜ?」
「あぁ」
(何故だ。中央が堕ちた今、なぜ営業している?)
そんなカルトの心配をよそにクレイはスタスタと進んでいく。
「ほら! 行こうぜカルト!」
「ああ」
クレイはまず八百屋へと立ち寄った。
「いらっしゃいませ~!」
「お姉さん、何かオススメない?」
「オススメはこちらの野菜です!」
「じゃあそれ貰うぞ!」
「ありがとうございました!」
袋いっぱいの野菜を買い、クレイが次に向かったのは肉屋だった。
「いらっしゃい!」
「おばちゃん、ここのオススメは?」
「この肉だね! こっちも美味しいよ!」
「じゃあ両方!」
「まいど~!」
右手に野菜、左手に肉を持ったクレイが最後に立ち寄ったのは鮮魚店だった。
「らっしゃい!」
「おじさん、ここは何が美味しいんだ?」
「あれだ! まずこの魚! あっちの魚も美味いぞ! あとそこの魚だな!」
「じゃあ全部くれ!」
「まいど!!」
クレイは手に大量の袋を持ち、そんな調子で市場を通り過ぎた。
「カルト! ここの食材、全部美味しいらしいな! おかげで買いすぎたぜ!」
「……そんなの仕事だからに決まってるだろ? 売るための嘘だ。まあ不味くはないがな」
「そうなのか!? 知ってたなら教えてくれよ!」
「普通知ってるだろ。だいたい買いすぎなんだよ。どうするんだこんなにたくさん」
「いいじゃねぇか。せっかくあいつらも来ることだし! とりあえず帰ろうぜ、カルト。夜飯のレシピ考えようぜ!」
「そうだな……。明後日辺りにはバレンティアを発つぞ」
「へーい」
そう言いながら家路に着いたのだった。




