Ⅷ 惨劇
そんなバレンティアの様子など知る由もないシャルクのクレイ。
シャルクの首都、サラハの様子はカルトのいるガルブの首都、バレンティアよりもひどい状態だった。
モストロに襲われた人々が逃げまどい、辺りは一面、血の海。そこら中に喰われた者と思われる骨や内臓が散らばっていた。
バレンティアとサラハに唯一共通しているのは、常人なら気を抜いた瞬間、卒倒してしまいそうだ、ということだけだろう。
そんな中、クレイは冷静に街を見渡していた。
「さて、そろそろ俺の出番かな? あれは……」
視線の先にはカルトが飛ばした紙飛行機。
「仕事か! ったく、おせぇよカルト!」
紙飛行機のあとを追うと、そこにはラロがいた。
「あいつか……」
そう呟いたクレイは完全に気配を消し、足音も立てずにラロに近づいた。
そして背後から腕を刺した。
「痛っ!! あ? 何だお前……」
「悪いな。お前に恨みはないんだが、消えてもらうぞ」
「ちょっやめ……!」
叫びながら逃げ惑うラロの肩をつかみ、カルトと同じように胃を刺し、一部を小さなメモとともに紙飛行機に括り付け飛ばした。
そして運命の4月15日、カルトは荒れ果てたバレンティアに立ち尽くしていた。
「やだ! やめて……!」
「やめろ! やめてくれ!」
(なんでこんなことに、俺は確かにあの女を殺したはずなのに。まさかあの女以外にも……!?)
元凶だと思われたミラを葬り、ラロもクレイが葬った今、カルトにはこんな惨状になる要素が思い浮かばなかった。
(ラミアが“気を付けて”と言っていたのはこのことか? 元凶を葬れば、すべてが終わるはずじゃなかったのか? なんでこんなことになってるんだ。何が原因なんだ。どうしたらいいんだ!)
カルトがそんなことを考えている間にも「やめ……まだ死にたくない!!」という悲鳴とともに何人もの命が奪われていく。
(また一人殺された。あっちでもこっちでも)
「いや……!!」
(あぁ、またか)
常人なら気を失いそうな光景にも動じず、カルトはただただ、荒れ果て、周りに骨や血液が溢れ返っている道の真ん中に立ち尽くしていた。




