ⅩⅨ 出発
「本当に大丈夫か?」
「もう少し休んだ方がいいんじゃないですか?」
クレイとナキが玄関へと向かうカルトに話しかける。
「大丈夫だって、お前たちは心配しすぎなんだ。何回聞くんだよ」
何度も何度も確認してくる二人にカルトは苛立ちを覚えた。
「まあまあ、無理もないですよ。カルトさんが退院してからまだ1週間しか経っていないんですから……」
ハルが場を和ませようとする。
「1週間でも何週間でも、仕方ないだろ? これも任務の一つなんだから」
淡々と話すカルトに4人は納得したようだった。
「無理はしないでくださいね?」
「あぁ、わかってる。じゃあ行ってくるな」
カルトは玄関に立ち、後ろの4人に背を向けた。
「おう! 頑張ってこいよ!」
「「「いってらっしゃい!」」」
カルトは4人に見送られ家を出た。カルトがこれから向かうのは世界の中心国、メディオの首都のロワという街。ロワにはカルトの所属するエファセの本部があり、カルトの怪我も治ったということで“モストロの親玉と交戦しかけたときの様子や、印象、容姿などを聞きたい”との連絡があったのだ。
(クレイもいるし大丈夫だとは思うが、心配なことに変わりはない。出来る限り早めに帰らなくては……)
そう思うが、直線距離にしてもカルトが今いるシャムスから目指すロワまでは数万キロある。つまり、陸、空、いずれの手段を使おうが着くまでで最低2日、帰りにも最低2日。聴取が最悪2日掛かったとして、往復1週間は掛かる計算だ。
(まあ交通費が全額支給されるのは嬉しいが、な)
シャムスからロワへ行くためには2回ほど乗り換えをする必要があるため、カルトはその1回目の飛行機に乗るため空港へと向かった。
そして、シャムスを飛び立ってから2日後、予定通りロワへ着いたカルトは本部に到着していた。
(ここは相変わらず嫌味なほど大きいな。確か、80階建てだったか?)
本部を目の前にしたカルトは思わずため息をついた。それもそのはず、目の前を見上げると首が痛くなりそうなほど高いビル。無駄に高いこのビルこそがエファセの本部なのである。
カルトは中に入った瞬間、そこら中の視線を一身に受けた。
(相変わらず、ここは居心地が悪いな)
周りの者とこそこそ話している者、ただただカルトを見つめる者と様々であるが、共通して彼らの瞳にはカルトがうつっていた。
(まずは、受付か?)
「すみません。聴取のため招集されたヒネーテと申しますが……」
周りの様子とは異なり、受付の女性はただマニュアル通りに対応した。
「はい。――カルト・ヒネーテ様ですね。ようこそおいでくださいました。最上階、会議室にて長官がお待ちです」
「長官が?」
(長官が聴取って珍しいな。今の長官って確かリストだよな? なんでまたリストが聴取なんて……)
「はい、今回の聴取は長官が担当されるとのことです」
「わかりました、ありがとうございます」
不思議に思いながらも、カルトはこの本部の長官であるリストに指定された“最上階、会議室”へと歩みを進めた。




