ⅩⅥ 5年後
「ナキー! 朝だぞー!」
「ん。ん? あっ!」
ナキは勢いよくドアを開け階段を下って行った。
「すみません!」
「全く、お前は何年経っても変わらねぇなぁ」
あれから5年。
ナキはカルトたちにすっかり馴染んでいた。
最初の頃はルトとの確執が深く、ハルとも馴染めず、カルトたちが話しかけてもどこかビクビクした様子だったが、1年、2年と年数を重ねていくごとに確執も解け、ハルとルトとは3人でわいわいと遊びに行くような関係になっていた。
今カルトたちが住んでいるのは大陸の中心メディオにも近い、アステールにある大都市、シャムス。
あのとき、ルトを助けに行ったクレイとハルによりモストロは壊滅されたが“まだわずかに残っている”と言われたため、カルトたちはシャムスに生活の拠点を移したのだ。
バレンティアとは全く違う大きな家、にぎやかな商店街、道幅も人々の服装も人柄も何もかも違う、新しい生活。
そんな生活を始めて3年。
カルトたちはアステールの国とシャムスの街で平和に暮らしていた。
「いやー、でもほんとに変わったよな。最初の頃とは比べ物にならねぇ」
「本当にな。ナキ、これからもよろしくな」
「はい! こちらこそよろしくお願いします!」
4人が語っていたそのとき、扉を叩く音がした。
「誰でしょう……?」
「さあなー」
「僕、見てきます!」
「いや、俺が行く」
3人の視線を背中に感じながら、カルトは扉を開けた。
「すみませーん、カルト・ヒネーテさんのお宅でよろしいでしょうか?」
そこにいたのは眼鏡をかけ胸元に幹部の証、百合の花を模かたどったピンバッチをつけた、まさに“美しい”という言葉が似合う男性。
「――違いますけど、どちらさまですか?」
「失礼しました、私わたくし、シャムスのマスターの秘書をしております、ナジュムといいます」
「ナジュムさん?」
「はい。先程も申し上げましたカルト・ヒネーテさんなのですが、ご存知ないでしょうか?」
「――いえ、知らないですね。一応中の者にも聞いてきますね」
カルトはナジュムに背を向け部屋の中に向かっていく。
「あ、お願いします! 特徴としては……」
パンッと乾いた音が家中に響き渡った。
うっ、と声を漏らしながらカルトは片膝をついた。
「そうですね……。――ちょうど貴方とよく似た男性です」
放たれた弾丸はカルトの左肩を貫通していた。
「――お前……本当は何者だ……」
「ふふふ……」




