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ⅩⅧ 脅し

「各町に……」 


 カルトは顔を歪め呟いた。

 そんなカルトの様子を見た男は“クスッ”と笑って言った。


「そこの君。君なら分かるみたいだね、暴走の脅威が。どうやら本当のエファセらしい。だとしたら分かるだろう? 君たちがとるべき行動が……」


 カルトは黙っていた。


「ほら、早くしなよ」


 男が急かしだす。


 カルトはハッとした顔をするとフッと口角を上げ話し出した。


「いや、分からないな。 俺たちはどういう行動をとればいいんだ?」

「なに?」


 男は高笑いし始めた。


「あははははは! お前もそこの馬鹿と同じか! エファセも終わりだな!」


 クレイを指差し高笑いをしていた男の背後、その人は呟いた。


「終わりなのはお前だよ……」

「は?」


 男が振り向く隙もなくその人の持つ大鎌が振り下ろされた。

 突然振ってきた大鎌に頭を割られた男は、ピクリとも動かず絶命していた。



「……ルト?」


 男を殺したのはルトだった、しかし何かが違う。


「お前、ルトなのか?」


 ルトの顔をしたそいつはふふっと笑い話し始めた。


「ふふ、そうだよ。ルトだよ? 助けに来てくれてありがとう! カルト!」


 カルトはクレイと目を合わせ、“行け”と口を動かした。

 クレイはハルの手を引き、道を引き返した。


「ねぇ? クレイたちはどこにいったの?」

「ああ、あいつらは気にするな。 それよりも無事でよかったなぁ、ルト。その大鎌、どこから出したんだ?」

「これは伸縮自在なんだ。 すごいでしょ?」

「それはすごいな。――それはそうと、“本当のルト”はどこにいる?」


 カルトの出す殺気に“偽者のルト”は寒気を覚えた。


「何言ってるのカルト! 僕はここにいるじゃない」

「うるさい馬鹿。お前がルトと入れ替わったのはおそらくクオーレに向かう道の途中だろ」

「……はぁ、しょうがないかぁ。そうだよ、俺はあの日、ルトを捕らえてルトになりすました」


 偽者のルトはニヤニヤしながら続けた。


「でも、少し遅かったかもね。ルト、殺されちゃってるかもよ?」


 カルトは偽者のルトに1歩近付いた。


「お前、何者?」

「俺の名はナキ。モストロの下っ端の下っ端、ちなみにさっき俺が頭を割ったやつは正真正銘モストロのNo.2。ルトはNo.1と一緒にいるよ」

「そうか」


 カルトは手のひらをキーボードのようにして、クレイにあるメッセージを送った。少し経つとカルトの左手のひらに“遂行完了”という文字が浮かんだ。


「カルトォ~早くしないと……ルトが死んじゃうよ?」

「――そうだな」


 カルトはナキに背を向け、足を進めた。


「ちょっ! どこ行くのさ!」

「決まってるだろ、“家”に帰るんだよ」

「は!? ルトを見捨てる気?」


 カルトは足を止め、ナキを横目に見た。


「馬鹿が。誰が見捨てるなんて言った。ちゃんとルトも連れて帰るさ」

「じゃあなんで帰る!? ルトがどこにいるかさえもわからないでしょ!?」


 カルトは前を向き、1歩踏み出した。


「――さっき、クレイとハルがここから出て行っただろ。あの2人はどこにいったと思う?」

「さぁ? 怖くて逃げたとかじゃないの」

「……ルトのところさ。クレイは鼻が利くからな、ハルとともに探しにいってもらった」

「はっ!? どこにいるのかも分からないのにどうやって……無理だよそんなの!」


 カルトはナキの言葉を無視し、スタスタと歩いていった。

 少し歩くとコールがかかってきた。


「クレイか?」

「あぁ、カルト! ルトは無事だ! 今からそっちに向かう!」

「そうか。俺もそっちに向かう」

「わかった! 怪我はしてないのか?」

「ああ、大丈夫だ、そっちはどうだ? ルトとハルは?」

「ハルはかすり傷だ。ルトはぐったりしてるけど話せるから大丈夫だと思う」

「そうか、じゃあまたあとで会おう」


 コールを切ったカルトは後ろから迫ってくる気配に気がついた。


(誰だ、まさかまだあいつらが残っていたのか?)


 迫り来る気配にカルトは腰に挿していた剣を抜き、勢いよく振り向いた。


「ぎゃっ!」

「ん? お前なんでここにいるんだ」


 カルトの視界に移ったのは先程のルトにそっくりなナキではなく、マスクを取った素顔のナキだった。

 ナキは少し俯いたあと頭を下げた。


「お、おいっ!」

「おねがいします!」

「は?」

「俺も連れて行ってください!」


―数十分後―


「おう、カルト! 遅かったな!」

「あぁ……」

「ん? 後ろにいるのって……」


 カルトの後ろに隠れるようについてきていたナキがひょこっと顔を出した。


「ちょっ、カルト!」


 クレイはカルトの手を取り、ナキたちから離れた所に連れて行った。


「お前正気か? 何であいつ連れてきたんだよ!」

「しょうがないだろ? つれてってくれ、って言うんだから」

「断ればよかっただろ!? あいつは簡単に人を殺す危ないやつだ! 分かってるだろ?」

「それは俺たちが何とかすれば良い話だろ? ナキが一緒につれてってくれ、と言ったんだ。それでいいじゃないか。あいつも昔のお前と同じ身だ」


 クレイは呆れ果てた。今回のカルトは頑固だったのだ。

 いつも頑固なのはクレイの方でカルトは“しょうがない”と折れてくれる方なのだが、今回のカルトは折れることはなかった。


「はぁ、いいよ。わかった。しゃーねー。俺が目を光らせとけば良いんだろ?」

「そういうことだ」


 クレイは戻ると不安そうな顔をして俯いていたナキの前に立った。


「よろしくな。ナキ」


 ナキは一瞬にして笑顔になった。


「は、はい! よろしくお願いします!」


 ナキの目には涙が浮かんでいた。

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