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ⅩⅦ 救出

 出発から1時間、クオーレへと差し掛かりクレイは前に通ったときとは違う感じを覚えた。


「な、なにがあったんだ。 たかが1日だぞ? ふざけんなよ!!」


 クレイが顔をしかめながら言った。


「クレイ、落ち着……」

「落ち着いてられるかよ! おかしいだろ、誰ひとりいないなんて!」


 クレイは声を荒げ、辺りを見渡した。


 そんなクレイの様子に、カルトもハルも言葉を失っていた。


 3人の前に広がるのはまさに惨状。

 当たり前のように人の姿はなく、血液で紅く染まった道。

 そのうえ今回は喰われた者だけではなく背中やら腹やらを刺され“殺されている”者もいた。


「何で……こんな、前通ったときはちゃんと……」


 頭を抱えしゃがみこんだクレイは思い出した。


「そうだ……前だっておかしかったんだ」


 フラフラと歩き出すクレイ。


「クレイ?」

「行くぞ、カルト、ハル」 


 そう言ったクレイは殺気に満ちていた。


「まあ落ち着けクレイ。俺達の目標は“ルトを助ける”ことだろ?」

「……ふん、リミッター解除しといてよく言うぜ。俺に“殺せ”と言ってるようなもんだろ」


 クレイは振り返ることはなく応えスタスタと進んで行った。


 クレイの性格上、1度決めた考えは2度と変えない。

 そのことを知っているカルトとハルは黙ってクレイのあとをついて行ったのだった。



 数分後、クレイはある山の崖となっている所の前で止まった。


「ここだ」

「どうする? 掘るか?」

「いや……ルトはことあるごとに“困ったときは押すんです!”って言ってた。ってことは、どこかに……」


 そう言うとクレイは崖の一部をペタペタと触り始めた。

 クレイの手がある一部を押したとき、“ガコ”という音とともに石がへこみ、隣に扉のようなものが出来た。


「よし、行こうぜ」


 最早それ以上3人の間に言葉はなかった。

 今あるのは同じ、“ルトを助ける”という考え。それただ一つだった。


 扉の中は山の下とは思えない空間だった。

 舗装はしてないがちゃんと歩ける道、小さいが家のようなものまであった。


「ここのどこかにルトが……」

「――行くぞ」


 カルトたちがいくら歩いてもモストロに会うことはなかった。


「誰もいないな、1人くらいはすれ違うかと思ったんだが」

「好都合だろ、――おそらくルトはこの先にいる」


 クレイの言葉の通り、道の先にはいかにもラスボスがいそうな場所があった。


「……たしかにいそうだな」

「ああ」

「行くぞ、ルトを助ける……!」



 ギイィィィという気味の悪い音とともに開いた扉の奥。

 ボワーと灯っている炎の下、手足を縛られたルトの姿があった。


「ルト!」

「ん……? ――え。 クレイさん!?」

「大丈夫かルト」

「カルトさんも!?」

「今助ける……!」

「ハルまで!?  なんで? 紙、置いてきたはず……」


 クレイはポケットからそれを取り出した。


「これのことか?」

「読んだよ、みんな。そのうえで助けにきたんだ」

「ルt……」


 カルトがルトを呼ぼうとした。

 しかし、軽快な明るい声がカルトの声を遮った。


「はぁい! そこまでぇ!!」


 カルトたちは一瞬驚いたが、すぐに臨戦態勢に入った。


「――誰だ」


 カルトの警戒した態度など気にせず、その男は続けた。


「それにしても、本当に来るとはなぁ。君たちには“けいかいしん”ってものがないの? なぁルト、そう思わないか?」

「どういうことだ? ルト、お前は……」


 クレイが話しかけたそのとき、


「ふふ……あはははははは!」


 ルトが狂ったように笑い出した。


「あー、ホント面白いわ。どんだけ馬鹿なのあんたら」


 カルトもクレイもハルも、ルトの変貌振りに驚いていた。


「……ルト」


 クレイが1歩足を踏み出そうとした。


「はぁい、ストップー!」


 男が話し出した。


「君たち本当に頭悪いの? この状況を見ても動こうとするなんて。――いい? よく聞いてね? 君たちが妙な行動を起こせば……各町に点在させたモストロを“暴走”させる」

「な!」


 モストロの暴走……それは昔、1つの国をも滅ぼし、多くの被害も出した大事件の引き金にもなった。


 その事件では1人のモストロが各地を回り、その土地その土地の人々を殺し、喰いあさったという。


 しかし、今回と状況は似ているが、数が違いすぎる。各町に点在、ということは軽く100人近くはいるだろう。1人と100人では桁が違う。


 到底カルトたち3人で対処できる人数ではなかった。

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