ⅩⅥ 誘拐
……離せ!……嫌だっ……助けっ!……
“カルトさん!”
カルトは飛び起きた。
誰かに呼ばれた気がしたのだ。
しかし、周りを見てもクレイたちが寝ているいつもの光景だった。
……ただ1つのことを除いて。
「――ルト?」
いつもならハルの隣で寝ているはずのルトがいなかったのだ。
カルトはすぐにクレイたちを起こしにかかった。
「おい、クレイ! ハル!」
「ん……?」
「ふぁ~、なんだよカルト~。もう起きるのかぁ?」
クレイの言葉を無視してカルトは真面目な顔をして言った。
「ルトがいない」
「――ルトが?」
「ああ。……どうする」
「どうするって……とりあえず探そうぜ? 家の中に何か書き置きとかあるかもだろ?」
「ああ」
―10分後―
「ありました」
「あったかハル!」
「――でも、これは」
そこまで言うとハルは黙ってしまった。
「貸してくれ」
ハルの持っていた紙を受け取ったカルトは驚いた。
『カルトさん、クレイさん、ハル。みなさん、僕がモストロたちと繋がっていること、既にご存知でしょう。僕がモストロたちと繋がっている理由、それはあいつらを“全滅”させるためです。僕はカルトさんに救われ、普通の生活をするようになったことで“モストロはなんて酷いことをしてきたんだ”と思い、自分から繋がれるように交渉しました。その結果、あいつらの本拠地は“クオーレの奥深くの山の地下”ということが分かりました。この間、クオーレに向かう途中の道で話したとき、あいつらは既に僕に不信感を抱いてました。おそらく僕はあいつらに“消される”でしょう。あとのことはカルトさんたちにお任せします』
そこにはルトの字で謝罪の言葉が綴られていた。
「まじかよ……」
クレイもカルトもハルも、皆言葉を失っていた。
当然である、カルトをはじめ皆、ルトは“こちらを潰すために情報をモストロに流している”と思っていたのだ。
しかし、本当はルトは“モストロを全滅させるために情報を得て”いたのだ。
「どうする、カルト」
「――ルトを助ける。 クオーレに向かうぞ」
「リミッターは?」
リミッターとは、クレイの体力、力などを抑制させるために施した1種の術のことである。
本来は暴れる鹿や猪などの獣を大人しくさせるためにシャサール(猟師)が使う術だが、クレイを救ったあと、その暴れぶりに困ったカルトが知り合いのシャサールに頼んで教えてもらったのである。
その制限の証はクレイの手と足につけているブレスレットとアンクレット、ブレスレットは握力を、アンクレットは蹴る力を抑える役割をしている。
「――なしだ。 存分に暴れろ」
「ふっ、了解!」
妖しい笑みを浮かべ枷を壊したクレイを先頭として、カルトたちはルトを救うため、クオーレへと向かった。




