ⅩⅢ 疑惑
クレイたちと別れて数時間後、カルトとハルはバレンティアの隣、クルエルに着いていた。
街の様子を見たカルトは思わず呟いた。
「酷いな……ここが隣か、バレンティアはまだ良い方だな」
その横ではハルが街の様子をノートに記していた。
カルトたちの目の前に広がっている光景は、破壊されボロボロになった家、そこら中に散らばる内臓や骨、ポツポツと歩いているのは生気を失った人々、路肩には片腕がない人や足がない人などが座り込んでいる、悲惨な光景だった。
カルトがこれからどうするか悩んでいるとハルにボソッと呼ばれた。
「カルトさん……」
「どうした? ハル」
ハルは頷いてから話し出す。
「ルトとサラハで監視したとき、モストロ、2組いたんです。ルトは気づいてなかったけど」
「そうか、じゃあそいつらのどっちかか……。でも何でルトに言わなかった? お前たち仲良いだろ?」
ハルは俯き、声のトーンを落とした。
「最近のルト、何かおかしくて。だから言わなかったんです」
「そうか……。わかった、一応クレイにも連絡する」
そういうとカルトは右手に“遠・話・通”と書いてそのまま耳にあてた。
これカルトが持つアンリミテッド・コンタクト、という術の中のコールという術である。
アンリミテッド・コンタクトとは無制限接触という意味であり、コールは通話という意味である。
つまり、どこにいても相手に電話がかけられるという意味の術である。
『カルト? どうした、早いな。今どこに着いたんだ?』
「まだクルエルだ、クレイ。近くにルトはいるか」
クレイはカルトの真意など知らずに喜々とした様子で答えた。
『いるぞ? かわるか?』
「いや、離れてくれ、ルトには聞こえない位置に……」
クレイはやっとカルトの言う意味がわかった。
『わかった、ちょっと待ってくれ!』
そう言った後ろでは“悪いルト! ちょっと話してくるな!”というクレイの声が聞こえた。
『で、なんだ、カルト』
「ルトが怪しい」
カルトから唐突に発せられた言葉にクレイは唖然とする。
「は? ルトが怪しいって!? お前、そんなのハルに聞かれたら……」
「そのハルが言ったんだ」
「はっ!? ハルが!?」
クレイが驚くのも無理はなかった、ハルとルトは場所こそ違うが、同時期に拾ったため仲がよかったのだ。
年が同じ、性格が正反対なのも作用して兄弟のように仲がよかった。
「マジで言ってんのか、カルト」
「あぁ、ハルが言うには“何かおかしい”んだと」
「――まあ、ハルが嘘つくわけねぇしな。わかった、注意する」
「頼む……気をつけろよ。クレイ」
ふん、と鼻で笑ったクレイはゆっくりと話し出した。
「俺を誰だと思ってる? お前の弟子、クレイ様だぞ! カルトの迷惑になるようなことはしねぇよ、じゃあな」
(大口叩きやがって……)
カルトの口元には笑みが浮かんでいた。
「あぁ、じゃあな」
(ルトが怪しい、か。俺がしっかりしないとな……)
クレイは何事もなかったようにルトの元へ戻った。
「待たせて悪かったな! ルト」
「あ! クレイさん! もういいんですか?」
「おう! カルトがうるさくてなぁ」
腕を組みながら呆れた感じで言うと、クスクスと笑いながらルトが言った。
「クレイさんとカルトさん仲が良いですよね!」
「そうだな……。まぁ、ずっと一緒にいたからな」
「そうなんですねぇ」
「ほら、もう行くぞ、あと少しで着くはずだ」
クレイたちが向かっているのはバレンティアを挟み、クルエルとは反対側にある町。
「ここか?」
「そうみたいですね……」
「ここは大丈夫そうだな」
二人の視界には普通の生活を送る住民の姿があった。
賑わう市場と道行く住民の姿にクレイはホッとし、また若干の違和感を覚えた。
「そうですね。住民の姿もありますし、大丈夫でしょう」
「ってことは、モストロはロセウス側からきたってことだな」
「そうですね、こちら側は大丈夫と判断しますか?」
「――いや、念のため、こっちからサラハを目指す。どこか、襲われているところもあるかも知れねぇ」
「はい!」




