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耳が聞えなかった少女  作者: 伊藤 孝一
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第七章④

 遂に本番の日を迎えた。文化祭が始まる前の学校はやたらと騒々しい。準備で大忙しとなっていて、バタバタとしている。その中で明音はクラスの準備を手伝っていた。最後の練習までは時間があった。


「そろそろ時間ね」

 

 準備は何とか間に合った。焼きそばの準備も出来ているし、飾りつけも終っていた。


「そろそろ、行こうか」


 菜々美が明音に言う。明音は頷いて委員長に許可を貰ってくる。


「分かったわ、そっちも頑張ってね」


 そう言われて明音と菜々美は練習をやっている音楽室へと向かった。途中で小百合とも合流。


「いよいよね」


「うん」


 音楽室に到着するとすでに吹奏楽部が最後の練習を行っていた。


「おはようございます」


 三人がたくわん先生に言う。たくわん先生が気付いて


「来たか、もう少し待っていてくれ吹奏楽部の仕上げをしているから」


 明音達は大人しくその練習風景を眺める。吹奏楽部の演奏が大迫力で教室に響き渡る。この中で自分達の声が掻き消されないか心配になるほどだ。


「この演奏の中、歌えるんだね」


 菜々美がそう言う。本当にこんな素晴らしい演奏の中で歌えると思うと楽しみで仕方が無い。


「でも、声をしっかり出さないと掻き消されそうな勢いね」


 と小百合。明音もそれはさっき感じていた所だ。


「うん、頑張ろう」


 そんな話をしている内に吹奏楽部の演奏が終る。


「さて、最後の練習だ」


 たくわん先生が手を叩く。


「本番まで時間が無い。しっかり当日の動きを把握しておくようにな」


 吹奏楽部含めて明音達もはっきりと返事をする。


「いよいよね、吹奏楽部も遠慮するつもりないから、掻き消されないようにしっかり歌う事ね」


 宮澤部長が笑みを浮かべながら言う。何となく眼鏡が光った気がする。本番はマイクを使うのである程度、声は届くはずだが、それでも吹奏楽部の音量に勝つにはしっかり歌わなければならない。


「はい、頑張ります」


 明音が気合を入れて宮澤部長に言う。宮澤部長は満足げに微笑して定位置に戻る。明音達もそれぞれの定位置に付いて、練習を始める。


 いよいよ、本番が近づいてくる。胸の高鳴りが耳元まで聞えてきそうな気がするほど高鳴った。


 絶対良い合唱にしよう。


 その気持ち保ち続けながら本番へと向かった。


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