第四章③
「~♪」
「あれ、あの子」
と明音が気付く。そして菜々美も気付く。最近、ゲームセンターでリズムゲームをやっていた女子だった。
二人が来たのに気が付いたみたいで、その女の子が歌を止めてこちらを向く。
「何かよう?」
と聞かれた。明音と菜々美は慌てながら
「いや、ちょっとたまには違う所で弁当を食べようかなと思っただけなんだけれども」
彼女は特に反応せずに
「ここは埃っぽいから弁当食べるのにはお勧めしないわ」
と言われてしまった。そう言われてしまってはここで食べる気はしなかった。だからと言って今
更、教室に戻るのも味気ない。
「あのーどこか良い場所しらない?」
菜々美がその彼女に聞くと軽くため息を付いて
「付いて来て」
と言って先を歩く。どうやら教えてくれるようだ。明音と菜々美は彼女に付いて行く。しばらく付いて行くと、そこは音楽準備室だった。
「たくわん先生」
彼女が変なあだ名の先生を呼んで入ってくる。
「いつもより人数が多いけれどもここで弁当食べさせて」
後ろから二人がひょっこり顔を出す。
「ああ、良いよ」
と男の先生が言う。多分音楽の先生なのだろう。
「お邪魔します」
と明音が言って音楽準備室に入る。それに続いて菜々美も入る。
「おっ、珍しいな友達か」
「さっき会ったばかりよ」
「へー」
と先生はそれ以上の詮索せずに自分の弁当を食べていた。
「どうぞ」
と勧められて適当に椅子に座る。ようやく弁当が食べられそうだ。音楽室は音楽室と音楽準備室と楽器の倉庫と三つに分けられている。準備室は主に先生が色々と雑務をしたり、会議をしたりする所である。
「まあ、ゆっくりしていきなよ」
と先生は弁当に入っていた沢庵を一つ食べた。
「いつも沢庵を弁当に入れているから、たくわん先生」
彼女がそう言って教えてくれた。
「そういえば、名前なんていうの?」
明音が彼女に聞く。
「吉川 小百合」
「私は宮本 明音」
「改めて佐々木 菜々美です。よろしく」
と自己紹介をする。
「吉川さんはたくわん先生と仲が良いんですね」
「ああ、大学生の時にバイトで吉川にピアノ教えていたんだよ」
と明音の質問にたくわん先生が答える。
「そういうことよ」
食事しながら小百合が言う。
「それにしても、歌上手だね」
「小学生から音楽を習っていたの」
「へー」
あんまり喋らないのか会話が続かないが、そんなに嫌じゃないようだ。
そんなこんなで色々話して昼休みを過ごしていたら時間になった。
「また、ここ使って良いですか?」
「ああ、構わんよ」
とたくわん先生が言ってくれた。今度もまた使わせてもらおうと明音は思った。また小百合さんに会えるかも知れないと思ったからだ。友達が増えるかもしれないと期待していた。
次の日の昼休み、弁当は教室で今回は食べて音楽準備室に行くとたくわん先生が屋上にいると教えてくれた。明音と菜々美は言ってみる事にした。小百合が前のように気持ちよく歌っていた。
「~♪」
今度は二人を見ても歌を止めずに、そのまま歌い続けた。青空と小百合の歌っている姿がマッチしていて一つの絵のようだった。それを明音と菜々美は二人で聞いていた。透き通る声で空に響き渡る。明音は少し羨ましく思えた。
「どうも」
どうやら歌が終わったようだ。明音と菜々美は拍手で迎える。
「本当に上手だね」
明音が言うと小百合はお辞儀で返した。
「でもいつもなんで屋上で歌っているの?」
「そうね、そのまま飛び降りてしまいたいからかもね」
「へ」
明音がキョトンとしていると小百合が微笑を浮かべて
「冗談よ」
と言った。それに明音は心底ホッとした顔をした。
「驚かさないでよ」
でも、何か悩んでいるのかも知れないと明音は思ったがこれ以上、突っ込んで聞かなかった。
「でも、そんなに上手いのに聞かせる人が無いのは勿体無いよね」
菜々美が言うと、小百合は首を振って
「別にいいのよ。あんまり人前に出たくないし」
そう言う。それ以上、菜々美は何も言わなかった。明音も勿体無いとと心の中では思っていた。
「ねえ、小百合さん。今度一緒に遊びに行かない」
「そうね」
明音の提案に小百合が考え込むように唇に指を当てる。明音がそれをジーと見る。ふと小百合が顔を上げると明音と目が会う。それを見て微笑を浮かべて
「いいわよ」
と言ってくれた。明音は笑顔になって
「ならカラオケ」
「えっ」
明音の提案に菜々美が驚く。
「もう一回、挑戦してみたいの」
それを聞いて菜々美が頷いて
「そうだね、小百合さんの歌もっと聴きたいし」
「分かったわ」
と二人は言ってくれた。明音は楽しみと喜んだ。




