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耳が聞えなかった少女  作者: 伊藤 孝一
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第四章②

 そして最後の授業も終わり放課後になった。それぞれ帰宅する人や部活に行く人などに別れていった。菜々美と明音は帰宅組みだった。


「やっと終わったー」


 と菜々美が伸びをする。それを見て明音は微笑する。


「今日はどっか行く?」


 と菜々美に聞かれる。明音は特に用事が無いので


「そうだね。どこにしようか」


 と菜々美に聞き返す。すると菜々美はうーんと考え込む。どうやら何も考えていなかったようだ。仕方が無いので前から興味のあった


「ゲームセンターとかどうかな」


 と提案した。


「ゲーセンかー。そういえば、まだ一緒に行った事なかったね」


 明音は一度もゲームセンターに行った事が無かったので気になっていたのだ。なんとなく楽しそうだったし。


「じゃあ、そうしようか」


 菜々美が言うと明音が笑顔になった。


「私行った事が無いから楽しみ」


 明音がそう言うと菜々美は少し驚いた顔をしていた。


「そうだったんだ、なら色々教えてあげるね」


 と菜々美が言うと明音は嬉しく思った。そして二人は学校を後にしてゲームセンターに向かった。





 ゲームセンターに着く。ガチャガチャとうるさいのかと思ったけれども、それほどうるさくは無かった。


「色々あるね」


「そうだね」


 と菜々美が頷く。UFOキャッチャーやレースゲームにメダルゲーム、カードゲームと色々だ。明音はどれをやって良いのか分からずに菜々美の後ろについていった。一番気になるのはヌイグルミが一杯入っているUFOキャッチャーだ。でも、する勇気が無くて素通りしていく。


 ふと、最近有名なクマのヌイグルミがUFOキャッチャーの中にいた。気になって明音の足が止まる。


「ん?」


 とそれに菜々美が気付いて、そのUFOキャッチャーを見る。中には大量のクマのヌイグルミ。


「これが欲しいの?」


 菜々美に聞かれて明音が頷く。明音は気付いてもらえて少し嬉しかった。すると菜々美がニコッと笑う。


「まかせなさい」


 と菜々美がUFOキャッチャーに向かう。そして二百円入れる。そしてアームがヌイグルミの真ん中に入る。そしてアームは見事にすり抜けた。


「なんで」


 と明音が驚く。絶対取れたと思ったのに。


「まあ、そういうものよ」


 と菜々美が言う。そういうものらしい。やっぱりUFOキャッチャーは難しいようだ。今回は諦める事にしよう。


 UFOキャッチャーを抜けると箱型のゲーム。どうやら格闘物やロボット物のゲームのようだ。菜々美はそれにはあまり興味が無いようで通り過ぎていく。さらに奥に入る。すると


「あれ、うちの制服だ」


 と明音が言う。そこには自分と同じ制服の女子が一生懸命ゲームをやっていた。


「あっ本当だ。リズムゲームやっている」


 菜々美も気付く。リズムゲームと言うのは音に合わせてボタンを押すゲームらしい。タイミングが画面に出てくるようだ。せっかくなので見させてもらう。なんだが物凄い勢いでボタンを押し捲っている。さらにCDのような円盤も操作している。


「なんか、凄いね」


 明音が感心していると菜々美が


「かなり難しい曲やっているのにノーミスじゃない、あの子」


 と菜々美が感心していた。曲が終了すると後ろに並んでいたと思われたらしくて


「どうぞ」


 と言われて譲ってどっかに行ってしまった。


「折角だからやってみよう」


 菜々美が明音を誘う。初めてで緊張するけど明音は頷いた。すると菜々美が設定をしてくれて初心者向けにしてくれて円盤は無しになった。


「よし」


と初めてのリズムゲームに挑戦する明音。だが、全然タイミングが合わずにあっという間に終ってしまった。


「難しい」


 明音が呟く。菜々美が笑って


「最初はそういうものよ」


 と慰めた。時計を見るとそろそろ帰った方が良い時間になったので二人はゲームセンターを後にした。あまり遅くまでいるとナンパしてくる男子が出て来るらしい。


「今日は楽しめた?」


「うん、楽しかったよ」


 と明音が言う。それを聞いて菜々美がニコリと笑う。


「また、来ようね」


 菜々美が言うと明音は頷いた。今度はUFOキャッチャーもやって見たいと明音は思った。


途中まで一緒に帰り


「それじゃあ、また明日ね」


 と菜々美と別れた。もう日が傾いて夕焼けになっていた。親に怒られる前に早く帰ろうと明音は家に急いだ。




 次の日の昼休み、いつも通り教室で弁当を食べようとしていた時に菜々美が


「たまには他の所で食べない?」


 と言い出した。明音はたまには気分を変えても良いかも知れないと思ったので


「いいよ」


 と答えた。


「それじゃあ、どこにしようか?」


 菜々美が聞いてくる。明音はしばらく考えて


「屋上なんてどうかな」


 明音が提案してみる。


「いいかも、たまには青空の下でご飯を食べるのも良いかもね」


「なら行ってみよう」


 と言うことで屋上に移動する事になった。3階は上級生のクラスなので緊張する。あまり上級生の教室を通らないようにして屋上に向かう。そしてようやく屋上の扉に辿り着くと


「~♪」


「あれ、なんか歌が聞えてくる」


 明音が言うと菜々美が立ち止まり耳を澄ます。


「本当だ、誰だろう」


「合唱部とかかな」


「うーん、うちには合唱部ないから違うと思う」


 菜々美が言う。明音は屋上に行くのを少しためらった。けれども


「ちょっと見てみようよ」


 と菜々美が階段を上がり屋上への扉をこっそり開けようとする。明音は慌てて菜々美に追いつく。


「じゃあ、行くよ」


 菜々美がそっと屋上の扉を開けた。


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