7.鬼退治作戦会議
ゴミが散乱したダイニングルームの床に、オニヤンマが持ってきた地図が広げられている。
「この建物の構造、完全に非対称ね」
オニヤンマが天井近くを旋回しながら叫んだ。
「裏口の配電盤と、地下の配電室、二階の宿直室、それから――」
「テラコッタ製と呼ばれる、1890年式フランス型です」
タヌキが被せる。
「換気口の断面積が同じなので、気圧差が生じると――」
「音が落ちますわ」
今度は南部馬が割り込んだ。
目は閉じたまま、彼女は地図を見ていない。
「ちょうどその三点だけ、風の流れが沈んでおります」
「そう、それ!」
オニヤンマが翅を震わせた。
「空の一番高い場所に日が昇ると、この三点が全部同じ影になるの!」
「配電盤を落とせばボイラー室が逆流します」
「逆流の振動が壁へ伝わりますわ」
「壁が鳴る!」
「足音が乱れる」
「建物全体の均衡が崩れますわ」
三匹は互いの顔を見ていない。
説明も確認もしない。
それぞれが別の感覚で感じる像を、同じ一連の出来事として当然のように重ねていた。
桃太郎も地図を見ていなかった。
通気孔。
配電盤の影。
風の流れ。
振動。
3匹から発せられた言葉が一つの形となって、彼女の脳裏に映像となって思い浮かぶ。
桃太郎はゆっくりと立ち上がった。
「見えた」
その一言で十分だった。
タヌキも、南部馬も、オニヤンマも説明を求めない。
彼らにも同じものが見えていたからだ。
桃太郎は不敵に微笑んだ。
「明日の、太陽が最も高い時だ」
腰のウメガイを軽く叩き、三匹を見渡した。
そしてオニヤンマを見つめて何かに気づき、
「やっぱりその数刻前だ」
タヌキと南部馬もオニヤンマを見て頷く。
「ちょっと、心配しなくたって大丈夫だってば」
「怖い者はいるか」
桃太郎はオニヤンマを無視してさらに三匹に問う。
誰も答えない。
「なら大丈夫だ」
桃太郎は懐から四つのきびだんごを取り出し、全員の前に一つずつ置いた。
タヌキはそれを丸呑みし、
南部馬は静かに咀嚼し、
オニヤンマは羽音を鳴らしながら踊るように食べた。
山窩の執念が練り込まれたその熱は、一人と三匹の腹の底で静かに燃えている。
戦いは、もう始まっていた。




