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桃太郎  作者: はな
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11/15

11.独白

停電、虫の羽音、軋む建物、怒号。


苛立ち、戸惑い、右往左往する警察官たち。


「ポキョー」


天井の換気口で2つの丸い目が光る。


「皆さんは、私たちを障害者だと思っています」


暗闇で明滅する赤い非常灯が、タヌキの丸い輪郭を浮かび上がらせる。


「定められた型どおりに発達しなかった、脳にエラーを抱えた不幸な者達だと」


タヌキは誰に言うでもなく、虚空に向かってつぶやき続ける。


「ですが、人類がまだ定住していなかった頃、好奇心旺盛に未知の土地へ向かったのは誰だったのでしょう」


背負っていた袋を逆さにした。


「恐れを知らずに森へ入り、海を渡り、山を越え、世界の様々な現象に興味を持ち、新天地や新技術を切り開いたのは誰だったのでしょう」


無数のオオムカデが床へ散る。


「少なくとも、皆さんのように規則正しく畑を耕す者たちではありませんでした」


タヌキは床を走る虫たちを見つめながら続けた。


「私たちは元々、障害者ではなかったのです」


場所を移動し、別の袋を逆さにする。


「皆さんが正常だったわけでもありません」


アオカミキリモドキが壁を這い回る。


「皆さんは定住し、群れを作り、ルールを作りました」


場所を移動し、袋を開ける。


「そして、自分たちと違う人間を追い出しました」


黒い塊が転がる。


「『変人』『空気が読めない』『普通じゃない』そうやって千年以上もかけて居場所を奪い続けた」


クロスズメバチが一斉に空中へ飛び出す。


「その結果、生き残った人数を見て


『少数派だ』『支援しなきゃ』『療育してあげよう』


そう言っているだけではありませんか?」


建物の壁が軋む。


「皆さんは私たちを見て、多様性を理解し尊重する事を考えようとします」


タヌキは静かに首を傾げた。


「ですが私には違って見えます」


上を向き、匂いを嗅ぐ。


「『障害者に理解ある優しい自分』に酔っているように見えるのです」


二つの丸い光が闇へ消えた。

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