表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃太郎  作者: はな
PR
10/15

10.襲撃

時を少し遡る。


午前十一時五十七分。


警察署の裏の茂み。


桃太郎は立ったまま目を閉じていた。


誰も時計を見ていない。


誰も合図を待っていない。


タヌキは既に単独行動で建物に侵入し、換気口の格子を外している。


南部馬は耳を伏せたまま地面へ意識を沈めている。


「来るよ」


オニヤンマが言う。


「もうそろそろですわ」


南部馬が答える。


オニヤンマは太陽を見ていた。


南部馬は風を聞いていた。


タヌキは建物の呼吸を数えていた。


そして桃太郎は、その全てを一枚の動く絵として見ていた。


誰の合図もなく、オニヤンマが上空を旋回しはじめる。


その足には匂い袋がぶら下げられている。


ツバキとサザンカの匂いが風へ乗り、近くの茂みがざわついた。


茂みから音もなく黒い影が雲のように沸き立つ。


チャドクガの群れだった。


「行くわよ!」


オニヤンマが空へ飛び上がる。


蛾の群れが後を追う。


まるで空そのものが剥がれ落ちたようだった。


同じ頃、タヌキは裏口の配電盤へ手を伸ばしていた。


金属音、火花。


建物内の電気が消えた。


南部馬が蹄を踏み鳴らすと、振動が壁へ走り、建物が軋む。


換気口の奥で風向きが反転した。


「逆流成功です」


タヌキが呟く。


配電盤から吹き出す煙、外の土埃、蛾の群れが署内へ流れ込む。


桃太郎は正門の前に移動し、静かに警察署を見上げた。


停電、怒号、混乱。


それらが一つの音となって彼女の耳へ届く。


桃太郎は微笑んだ。


「さぁ、鬼退治だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ