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100回死んだ悪逆貴族、ヤケクソで死亡フラグ回避を諦めたら無双モードに突入した  作者: 斧名田マニマニ


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悪評を敢えて利用する

「破格な利益を前にしても断るということは……あなたがた商人の背後には、その利益を上回るほど重大視せざるを得ないものが存在するということだな」

「……」

「たとえば、圧倒的な権力を持つ相手から指示を受けていて、その者の怒りを買いたくないとか?」

「……しつこく聞かれても、私は何も話しませんよ」

「ああ。それで構わない」


ノクスは意図的に視線を逸らし、街の喧騒に心を奪われたかのように遠くを見つめる仕草を演じた。

その僅かな隙間に、商人の表情に走った微かな怯えの痕跡を、ノクスは見逃さなかった。


「話せないのであれば、こちらの質問に首を振るだけで結構だ」


ノクスは自然な仕草で商人の袖口に触れ、数枚の硬貨をそっと握らせた。


敢えて悪逆貴族という評判どおりの振る舞いをしたのは、過去の自分への皮肉でもあった。

だが同時に、この状況では最も効果的な手段だということを、ノクスは経験から知っていた。


事実、商人は深い葛藤に陥った。

その肩は明らかに震え、顎が不安げに揺れている。

もう一押しだ。


そこでノクスは、周囲の物音が二人の会話を覆い隠すのを確かめてから、声を落として囁きかけた。


「たった一度、頷くだけだ。口を開かなければ、裏切って告げ口したことにはならない」

「……っ」


ついに商人が決断を下した。

彼は、硬貨を素早く懐へと滑り込ませたのだ。


あとはもうこちらのものだ。

ノクスは状況を見定めたうえで、核心となる質問を投げかけた。


「おまえたちに裏で指示を出した人間は、ジークハルトか?」


緊張に満ちた沈黙が流れる。

ややあって、商人の首が動いた。


肯定を意味する微かな頷き。


(なるほどな)


兄ジークハルトは、アルヴェイン家の没落だけでは満足せず、その後も執念深く嫌がらせを続けていた。

それは過去のどの人生においても、変わることのない常であった。


ジークハルトのアルヴェイン家への憎しみは、完全な逆恨みに起因している。

ジークハルトの母は、ノクスの父との婚約中に不義の関係を持ち、その相手と駆け落ちした。

だが、その時すでに彼女の胎内には父との子、ジークハルトが宿っていたのだった。


五年後、ジークハルトが実子ではないと悟った駆け落ち相手は母子を捨てた。

その衝撃で、ジークハルトの母は自ら命を絶ったという。


母の死後、アルヴェイン家に引き取られたジークハルトは、ありえない事件を起こした。

嫡男の座を手に入れようとして、ノクスの命を狙ったのだ。

当時ノクスはわずか四歳、ジークハルトは五歳だった。


ノクスの父は事態を察知するや否や、ジークハルトの危険な本質を見抜き、「どのような事情があろうとも、お前に家督を継がせることは決してない」と断言した。


その瞬間から、ジークハルトによるアルヴェイン家への憎悪は、深く根を下ろしていった。


結局のところ、ノクスを苦しめる影には必ずジークハルトが潜んでいる。

今回も例外ではない。


得られた情報は僅かだし、高額な代価を支払うこととなった。

それでも、この投資は間違いなく価値があるものだった。

この一片の情報が、今後の展開を大きく左右することになるだろう。


さて、次はどう動くか――。


ノクスは顎に指を当てながら、意味ありげな笑みを浮かべた。

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