裁きの雷を降らせてやる
ノクスの掌に集った魔力が、一層と膨れ上がる。
強力な光を放つその球体を認めながら、暗殺者はじりっと後退った。
「あいつ、とんでもない魔力を保有してやがる……!」
「こんな魔術の使い手だなんて、話が違うぞ!?」
ざわめく手下たちを一喝するように、リーダー格の男が叫ぶ。
「うるせえ、いちいち動揺するな……! さっき防御結界を張ったばかりだ。続けて攻撃魔法を放てるはずがねぇ。あんなものは虚勢だ!」
ノクスはぷっと吹き出した。
あまりの見当違いに、堪えきれなくなったのだ。
「見えている真実を、自分に都合よく歪めてなんになる? 残念ながら、俺の魔力はまだ山ほど余っている。証明してやろう」
右手で魔力の球体を維持しながら、左手を翳す。
その瞬間、光の膜がリリィを覆い、柔らかな防御結界となって彼女を守った。
「なっ!? あいつ、また、防御魔法を発動させやがった……!!」
「しかも、攻撃魔法を練り続けたままだぞ! どうなってやがる!?」
暗殺者たちはますます狼狽えた。
リーダー格の男さえ、仮面の下で荒い呼吸を繰り返している。
涼しい顔をしているのは、ノクスだけだ。
「――さて、仕切り直しだ。おまえたちがこの部屋を大破させてくれたおかげで、俺にとっての枷は一切なくなった。ここからは遠慮なくいくぞ」
次の瞬間、ノクスは地面を蹴って駆け出した。
ノクスの姿がぶれ、瞬く間に距離を詰める。
「っ……!」
暗殺者たちは必死に後退し、ノクスから逃れようともがいた。
ノクスは掌に魔力の球体を乗せたまま、じわじわと彼らを追い詰めていった。
暗殺者たちの視線は、ノクスの手にある魔力の塊に釘付けになっている。
強大な攻撃魔法がいつ放たれるか分からない状況の中、暗殺者たちは生きた心地がしなかった。
恐怖が暗殺者たちの心を徐々に蝕んでいく。
次第に追い詰められた彼らは、気づけば瓦礫の中央に集まっていた。
お互いの背中がぶつかり合って初めて、逃げ場を失ったことに気づく。
暗殺者たちが絶望のあまり立ち尽くしたとき――。
ノクスは口元を歪めると、静かな声で囁いた。
「『標的、誘導完了』」
暗殺者たちがはっと息を呑む。
自分たちが先ほど雷撃を仕掛けたときと、まったく同じ文言だと気づいたのだろう。
「まさか……罠!?」
暗殺者たちは慌てて周囲を見回した。
そんな彼らの足元で、魔法陣がじわりと発光しはじめる。
「これはなんだ……!? 魔法陣なんていつの間に……!?」
取り乱す暗殺者の足元で、紋様が強烈な輝きを放つ。
魔法陣によって発動したのは拘束魔法だ。
光の鎖が迸り、暗殺者たちの手足を絡め取る。
「ぐっ……! う、動けない……!!」
鎖に絡め取られた暗殺者が必死に身をよじる。
だが光の束は抗うほど食い込み、抜け出すことなど叶わなかった。
ノクスは暗殺者たちの様子を冷ややかに眺めながら、掌に渦巻く魔力をさらに膨れ上がらせた。
「恐れるな。終わりは、一瞬だ」
「ひっ……! や、やめ――」
ノクスの掌から裁きの雷が迸る。
それと同時に白光が室内を貫き、轟音を上げながら暗殺者たちを直撃した。
「ぎゃあああああッッ!!」
焼け焦げた匂いが立ち込め、強烈な衝撃波が壁を震わせる。
雷に射抜かれた手下たちは、煙を上げながらその場に崩れ落ちた。
「ううっ……あぐぅっ……」
敢えて攻撃を加減されたリーダーだけが、血を吐きながらもなんとか意識を保っていた。
ノクスは掌を下ろすと、静かに息を吐いた。
「やはり、ただ倒すだけなら簡単だったな」
リーダー格の男は、化け物を見るような目をノクスに向けてきた。
「割に合わねえ……。こんなに強いなんて、聞いていない……!」
男は血を吐きながら這いずり、出口を目指そうとした。
もちろんノクスが許すわけもない。
彼は指先をピンッと弾くと、痺れの魔法を男に向かって放った。
「ぐあああああっ――!」
激痛が全身を駆け抜け、男は床を転げ回った。
痙攣に支配された体は思うように動かず、ただ無様に震えるばかりだ。
「くっそ……。もういい…………殺せ……殺せよ……!」
荒い息を吐きながら、それでもなお、男は唇を歪めて虚勢を張った。
ノクスは無慈悲な足取りで近づくと、男の頭上に影を落とした。
「そうしたいのは山々だが……おまえには聞くことがある。――暗殺命令を出したのは誰だ?」
「……答えたら……見逃してくれるのか?」
「勘違いするな。選択権などおまえにはない」
ノクスの指先から微細な雷が走り、男の神経を容赦なく刺激する。
「ぎぃいいやあああッッ……!! やめろ! 言うっ……言うからやめてくれぇッ!」
絶叫混じりに、暗殺者は叫んだ。
「……依頼人は……ルヴェリエ侯爵だ!」
その名を聞いた瞬間、セシリアの父の顔が脳裏をよぎった。
まったく、驚きはない。
お茶会を潰した腹いせか。
自分のような害虫からセシリアを守ろうとしたのか。
あるいは――。
(……まあ、理由は本人に直接問いただせばいい)
少しでも「面白そう!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、
ぜひ↓の広告下のフォロー&評価(☆☆☆☆☆を★★★★★に)で応援してください!
皆さまの一票が、ランキングに直接反映されるので、
本当に本当に大きな励みになっています。
どうか力を貸してください!
※カクヨムで先行公開しています
続きが気になると思っていただけましたら、そちらもどうぞご活用ください~!




