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僕らの暗黒神様!  作者: ひよこちゃん


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深海の大星雲2

 良い感じにプルプル出来るのがわかったので羊の耳を指先で高速プルプルさせて遊んで待つことしばし。

 ちなみに大冒険野郎共は泡を吹いて倒れている。しっかりとお宝らしきものは抱き込んでいるあたりがちゃっかりしているというか前のめりというか……。

 カグラと人魚さんのお迎えは運搬も考えて綾音さんとブラドさんが抜擢され、引き続き私の食料係が九龍で全くもって不本意ながら調理係のラムレト、マリーさんとクロウディアさんは精霊談義をしているしクロノアくんは頑固に居座ったままだ。

 そして何やら時折寄り集まって談合している。小難しい事を言っているらしいので私は混ざる気はない。幼女であるからして遊んでたっていいんですぅー。そして深海の大星雲とかいうのは未だにモニャモニャと何やら音を発しているが、よくわからんが無力化はされているようで害は無さそうなので踏んだまま放置である。暇なのでしみじみと情報を引っこ抜いて遊んでいるものの、虚無過ぎて特に目新しいものがあるわけではない。いや、数字そのものは物質界の中で見れば桁数がおかしいとかそういうのはあるのだが。機械のスペックを見ているようなもので人類のようにおもしろおかしい要素があるわけではないのだ。どうにも……多分だがあの勇者ぱーちーと同じく私が踏んづけた事で色々吹っ飛んでいる、といえばいいのか。とにかく私とレガノアが物質界でポックリした後に再構成された新世界の理に則り二代目の元で再誕した存在の一つとなっていたようだ。多分二代目はレガノアの神域と同じく処理能力が足りずに制御出来ていないのだが。まぁそもそも旧世界でもレガノアが直接管理していた存在というわけではないのだが。あくまで箱庭の存在だ、そこまでの干渉が出来るほど私達は近い存在ではない。幾つかの次元にここから下は箱庭であると引かれた境界線、この精霊は箱庭内のルールの中で管理者となった存在の一つに過ぎず、私達から干渉する自由はなかった。

 それが圧縮され崩壊し、新たな秩序の元で編み上げられた新世界で言うなれば未管理天使のような存在となっており、私が目を合わせて眺めた事で諸々吹っ飛んだと。

 ようするに今私が眺めて遊んでいる情報数値は恐らく旧世界の頃と同一なわけである。新世界バージョンを認知する前にデータが飛んでしまった。新世界バージョンであれば多分もっとおもしろおかしいところもあったのかもしれないのに。思ったよりコイツが軽かったのが悪い。そんな、なにもそんな軽いなんて思うわけないだろう。これはレベルではなく重量の話であるわけで、微妙な気持ちになってしまう。本格的なダイエットが必要かもしれない。……そう言えば活性化中の暗黒脳で考えてみると暗黒魔天も多分そうだな。白光魔天もそうだろう。この精霊と似たような状態になっている筈だ。しかし私が見た時に暗黒魔天に変な情報は無かった。…………吹っ飛んで、ない……うーん……よしやめよう。これは深掘りすると私のデブ具合に直結している問題だ。

 しかし、ずーっとモニャモニャ言っているな。なんなんだ。


「アスタレル、この精霊はさっきから何を言ってるのさ」


「たいした事は言ってりゃしませんヨ。

 精々が痩せろこのデブ程度でショウ」


「なんだとーっ!!」


 嘘をつくな! 絶対に違うだろ!!


「そうは言いますがネ。

 対象は暗黒神様、海、洞、涙、滴、波、漰、幾つかの異なる響音を発して暗黒神様にぶつけてその反響で次元の確認をしているだけデス。

 次元ソナーで情報の再収集を試みている、まぁ言ってしまえば再起動の挙動ですネ。

 暗黒神様がその肥えた御身体でぶっ叩いた機械がロールバックしたので再起動を掛けてスタートアップの真っ最中かと。暗黒神様が巨体過ぎて時間が掛かっておりマスが。規模は異なりますが召喚儀式による顕現ですからネ。召喚者との約定を果たせば放流され元の次元に自動で還るでショ。

 暗黒神様がお望みとあらば眷属の一つにも無理にでも出来ますが。お試しになりマス?」


「いらん」


 リリースだリリース。スライムやラムレトと違って絶対に高いし。しかし、そんなつもりは無かったとは言え結果的には結構な勢いで蹴っ飛ばしてしまったようだがこの後どうなるんだろう。元の次元に帰った後は再度未管理天使に戻るのか?

 この精霊のハウス次元は私の領域というわけではないだろうし。謎だ。


「無理デショ。あのゴミ虫に修復と再稼働は不可能デス。

 源祖精霊、暗黒神様が身罷られていた……我々が堕天していた頃の知識とはなりますが世界が再構成された折に決定された天使としての位は調和を司り守護する第三階位にあたりマス。

 旧世界の理で言えば六基の中でも深海の大星雲と呼ばれ、光の三源に属したモノ。物質界の管理者としては境界と波になりマス。

 お察しの通り、当時からゴミ虫には手が足りず眷属全体へ入力された最低限の指向性のみでほぼ自動運転で運用されていた存在デス。永い時間を掛けて疑似魂魄が鋳造され白化していたようデスが、それでもゴミ虫が入力できた演算は旧世界の残響処理程度だったようですネ。レガノアであれば全六基全てに個々レベルで超長期且つ霊子単位での複雑な処理も書き込めたでショウが。一度暗黒神様に上書き処理されてしまえば今一度宇宙の再編でも起こらねば再天使化は無理ですヨ。

 まぁとは言いましても鋳造されていた白化疑似魂魄が吹き飛んだとて、あの精霊の基本機能と在り様自体は何も変わりゃしまセン。世界が変わったとて役割は何も変わらない。機械の製品ラベルが張り替えられたようなもんデス。新世界でも旧世界でもそうあったように今まで通りちまちまと稼働し続けるデショ。同次元に居る存在である同様に白化しているであろう残り五基の元源祖精霊とて互いに無干渉でしょう。それほどの自我も芽生えてなければ書き込まれている対処情報も無い。暗黒神様が眷属にして改造するならまだしも影響があるでしょうが。

 眷属にもせぬのであれば今後考えられる変化と言えば今回のように召喚儀式で喚び出された際に暗黒神様や我々のような旧世界の土台で動く存在を検知する事があれば魂魄に書き込まれていた演算である旧世界の残響処理実行プログラムの為に本体が顕現し喧嘩を売ってくる、という事が無くなる程度かと。これも旧世界でもポンポンと召喚されていた存在でもなし、ほぼ誤差ですネ。

 ま、結論を申し上げればお気になさらずともよろしいかと」


「ふーん……」


 小難しい話の最後だけが脳に残った。要するに気にしなくて良いということだ。ならいいや。特に問題が無いようであるし放置一択だ。なんかそう思ったら脳が不活性化してきた。ふわー。


「九龍くん見て見て。クーヤくんがあの脳がとろけたみたいなお顔をしているよ。

 意識が外宇宙を漂ってそうなヤツ」


「幼児の一時停止みてーなもんであろ」


「あー、人の子って何かしててもいきなりピタッて一時停止するよね。

 ユグドラシルの温泉で人の子をお世話した時に急に止まることがあってびっくりしたよ」


「ムッ!」


 再起動した。

 そして私の目の前にどさっと砂が追加される。ちょっと前まで美味そうな白身魚だったヤツだ。いっぱい悲しい。

 おかわり持ってくるねーと歩き去って行った人の心など持たぬ極悪非道悪鬼外道残虐無比の二人を見送ってから羊の耳のパタパタ作業に戻る。摘むと軟骨がコリコリしていて指先で耳先を弾きまくると弾力でぷるぷると揺れるのが面白いのだ。いやでもそろそろ戻すか。島の最終防衛ラインだしな。

 それになんか昇天しそうな顔をしているのが不気味だし。


「お」


 羊を追い出して砂山を前に悲しみに浸りつつもやることも無いのでまめにトイレをしつつなんとはなしにハシゴを眺めていると、その先端がゆらゆらと揺れはじめた。どうやら人魚さんとカグラのお迎え部隊が戻ってきたらしい。上の方へ視線を向けると微かに叫び声と怒鳴り声と呆れたような声が聞こえてきた。どうやら降下方法で喧嘩しているらしい。横抱きにすんじゃねぇとか盥を離せ、待て突き落とそうとすんなとかしょうもない言い合いのようだが。

 暫く待っていると上空から何か光るものが降ってきた。

 ガラン、ゴロンと音を立てて落下してきたのは人魚さんの盥である。続けてカグラのサングラスにデカい法螺貝、ツルハシにスコップと色々と降ってくる。


「…………………………」


 無言でクロノア君がハシゴの下に待機し始めた。……まぁ最後には人間が降ってくるだろうという確信に近い予測が出来るしな。

 

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