海産物食い倒れツアー2
「おりゃーーーーっ!!」
ずしゃんとスライディングしつつ華麗なる動きで水洗トイレを決める。ずごごごと吸い込まれていく海産物魂をちょいと眺めてから今のペースのままなら後2周程であると当たりを付けつつ。
ただいまの私の乗り物であるブラドさんによじ登ってスプーンを掲げた。
「次に行くぞーっ!!」
「………………待て、おかしい。おチビ、何故先ほどよりも重くなっている!? 正気とも思えん速度で太っている!!
明らかに体格を無視した重量になっているぞ!!
ぐ、いかん……、交代だ!! 私の腰が悲鳴を上げている!!」
「誰がデブじゃい!!」
吠えた。このダイエット中のボディに向かってあまりにもでりかしーなるものがない。
ブラドさんは所詮ブラドさんなのだ。ヒゲも生えるし犬臭いし水着だってブーメランだ。許せん。
大きく前後に身体を揺らして負荷を掛けまくってから飛び降りた。全く、幼女の扱いがなっちゃいないな。
掛けた負荷と私が飛び降りた衝撃によりブラドさんは膝から崩れ落ちて引っくり返り大の字となって大口あけてヒューッ、ヒューッと死にかけみたいな呼吸音で酸素を吸い込んでいる。汗だくで犬臭さが上がってしまった。近寄らんとこ。
「もうちと巻いていきてーとこアルが。仕方ね、ブラド休憩入るヨ。
あー、次は……クロウディアは足がおせぇアルからなぁ。
代わりに私ここで食料稼ぐおもたが。クロウディア、一人で保つか?」
「なんじゃい、余が戦闘で行使する魔法は基本的に跳躍型じゃ。肉壁が必要な典型的な魔導師じゃぞ。
配下と召喚物を手足として一つの巨大な群れとしてこそ本領を発揮する。
単騎無双などと下品な真似はせん」
「無理の一言で伝わるネ」
「無理とは言うとらん!!」
「仕方ね、基本的に直属でもない連中クエスト経由無し戦闘駆り出すしねーアルが……。
一応聞くアルが今のクーヤの重量運んで走れるか?」
「………………それは………………無理じゃ………………!!」
絞り出すように、いかにも悔しげな顔でクロウディアさんが呻く。失敬だな!!
「…………えぇい、小娘!! そもそも主は何故魔力を食えば食うほど重うなっておるのじゃ!?
神の肉体が斯様な変質などする筈がないであろうが!
重うなる理屈がわからぬわ!!」
「なんとなく……?」
聞かれても私の意志で重くなっているわけではない。
ちょっと真面目に考える。多分だがアスタレルとの会話が原因だ。ダイエット云々の話をしたのと海産物食い倒れツアーという字面により私の無意識というか認知内に食べるとデブるものでありそして今の私はダイエット中であるという意識が常にあるせいで水洗トイレが食い倒れと紐づいているし食い倒れがデブ化と紐づいている。ようするに今の私は魔力を取り込めば取り込むほどに食い倒れデブ化が進んで体重が増える。言ってしまえばなんとなくでこのボディがそういう仕様になっている。そのうち忘れると思うのでそうなれば元の仕様に戻ると思うが。言われれば言われるほどに記憶が強固になって仕様も強固になるのでやめて欲しい。
「ウルトディアスは可能な限り戦闘行為避けろなってるアルからなぁ。
仕方ね、クーヤ、綾音呼べるか?
悪魔の力無しでちと頼むネ。今すぐこの場に出てこれるもう悪魔くらいしかおらね。その上で悪魔の力は可能な限り無しいうと綾音くれーになる。後で魔石支払うよろし」
「む、しょうがないな」
綾音さんは今派遣業務はお休みなのだが。休日手当を出してなんとか出てもらおう。トンネルを設置し、申し訳ないが急遽呼び出し。
「綾音さーん」
「はいマスター!!」
あまりにも即レス且つ即出勤。相変わらずやる気に満ち満ちているというか、やる気に溢れすぎている。このレスポンスの速さ、もしや呼び出しにいつでも応じられるように常に待機してないか?
そうなると待機手当を出さねばならないのだが。後で面談が必要だな。
せっせと飛び跳ねて準備運動しつつ、ちゃっかりと水着姿で浮き輪も持っている辺り、話も聞いており準備万端で待機していたようである。仕事待機ではなくバカンス待機だった可能性も半々でありそうだ。
「えーと、綾音さんはここでクロウディアさんと食料稼ぎをお願いします」
「そこで死にかけのブラド復帰したら離脱して北側へ向かうヨ。クロノアとチェンジしてクロノア東へ向かう伝えるよろし。私はクーヤ抱えて南側行くネ。今はクーヤを反時計回りで周回させてるヨ。
クーヤが重すぎるアルからな。文字通りの百貫デブいうやつヨ。速度も考えれば運搬役が私とクロノア、マリーベルに綾音くらいしかいねーアル。流石にこの重量背負って全力疾走は私も半周が限度ヨ。東で合流してクロノアかマリーベルと交代するよろし。
この重さはメルトも無理であろ。総司はヘルニアなるネ。交代制で入れ替わりながらクーヤ運搬するヨ」
「余からすれば持ち上げられるだけ信じられんわ。
体重も凄まじいが霊質としての重さも間違いなく増えておる。霊的素養を持たぬ方が余程有利であろう。異界神のような霊的生命体である神性などは掛かる負荷も掛け算式で増えておる筈じゃ。
恐らく長い歴史の中でも上位に食い込むであろう稀に見るデブじゃぞ」
なんか今めちゃくちゃ失礼な事を言われたような……?
気のせいか?
「えーと、北側がクロノアさんで東側がマリーベルさんでしたね?
西側がここで南側がラムレトさんと総司さん、そうなるとラムレトさんと総司さんにクロウディアさんとブラドさんが固定ですか?」
「そうなるネ。東北の食料狩りと休憩、乗り物を私達で回すヨ。
クーヤ、あと何周分で済みそうネ?」
「購入そのものは後2周くらいかなぁ……。多分。
起動したら購入よりはペース落としていいと思う。がんばえー」
「…………2周アルか。潮干珠買えたら地形的にも島には手を出されるなくなる。地上の守りは考えなくてよろし。そうなれば後は全員でただ食料狩りし続けるだけで済む。
そこまでくればもうクーヤを動かす諦めて食料をクーヤの方へ集めるした方が効率良いアルか……?
商品買えば体重減るは思うが……」
「マスター、ブラッキィですね!
不肖ながら私も頑張ります!!」
「うむ! 休日手当は弾むぞ綾音さん!!」
「はい!!」
言うが早いか、浮き輪はしっかりと抱えたまま滑るようにして浜辺を駆け去っていく。駆けていくというよりあれ多分本当に滑ってるな。ローラー的な使い方をしているらしい。
浜辺で大人しく座り込んでいる私の前に九龍がしゃがみ込む。私の両脇に手を差し入れて一呼吸入れるように僅かに呼気を吐き、小さな掛け声と共にゆっくりと身体が持ち上げられていく。九龍の腕に血管が浮いているし足が砂浜にめり込むのが見えた。
抱え込まれて何度か持ち直され、姿勢が安定したところで良しとなったのかぺっぺっとサンダルを脱ぎ捨てて素足となって砂を掻くような動きをしてから今度は長めに息を吸い込んでいる。
しがみついている首筋に汗が伝うのがちょっと見えた。サウナでも平然としていたのだが……これはだいぶ真剣且つ真面目に本気になっているように見えるが。
「……………………クーヤ」
「なにさ」
「あの変な板はどうしたね?」
「板……? あー、あの旅行中に持ってたヤツか。
犬小屋にあると思うけど」
「犬小屋か、流石に取りにはいけねーアルな。あの地獄穴は地面以外に設置できねか?」
「うーん……?
やったことはないけど。ちょっと待つのだ」
ズルをしてあの板の複製品を本で出そう。しかしなんであの板。
「一度降ろすなりしゃがむなりしたら続けて二度は立ち上がれる気がしねーアル。
その板を使ってそのまま魂取り込みするよろし」
「おー……?」
言われたままに板を持って腕輪も準備。これでいいのか?
しかし二度は立ち上がれそうもないとは。あのタニシ相手でもしれりとしていたというのに。走り出した九龍にへばりつきつつも随時水洗トイレはしておく。四箇所に絞らずとも道中でも細かくトイレしておかねば。
……………………ん?
「今私がデブって言った?」
「百貫、デブ、よろし!!
介護考えて痩せるヨ!!」
ギャボーッ!!!
ついに正面きって言いおった!!




