おいでませスパ&リゾート地ドリームランドへ2
リゾートへの呼び込みも終わったので帰る前についでだからひとっ風呂浴びていくかとなったのでユグドラシル温泉へ三人揃ってレッツラゴー。住人たちは風呂に入る気力もないのか、道行きには温泉に辿り着けずに力尽きたらしいゾンビみたいな死体が転がっていたが肝心の温泉の中にはじーちゃんがいるだけでほぼ無人である。
じゃぶじゃぶじゃぶ。
ドパァンと行儀悪くラムレトが温泉に飛び込みを敢行し飛沫が上がった。
「総司くーん!!
やぁやぁやぁ久しぶりだね特に変化はなさそうだけど元気してるぅ!?
あっ、お湯すっごい身体に染み込んでくるゲキヤバ湿度で加湿器待った無し砂が重たい流れていきそぉ!!
排水口に吸い込まれるぅ!!」
「なぁんでメルトと九龍が来てんだ。あの変なウサギの移動か?
どっちにしても揃って外に出てくるのは珍しいな。
アンリミテッド・ゼロホルダー生徒会長は置いてきたのか?」
「ふつーにトンネルね。クーヤがトンネルにナマモノ対応付けたヨ。
試用運転がてらにちとあちこち寄っただけですぐ戻るよろし。エキストラクラス生徒会長は生徒会にもどたアルからな。そのうち来させるネ。
石鹸よこすヨ」
「服くらい脱衣所で脱いでこい。なんで脱ぎ散らしながら来るんだよおめーらは。
育ち悪いわー」
「私の育ての親に言うネ」
「僕の親って確か湿った土と夜空の穴とかいう神だったかな?
会話したことないなぁ。あ、でも一応戦争はしたのかな?
どっちがパッパでどっちがマッマかは諸説あるらしいけど全部バラバラにして河に流したよ!
砂嵐も起こして河を冥界に埋めたんだったかな。
そしたら妹兼弟が復讐者になってねぇ……」
「あー、もういいもういい。せめてパンイチで寝てないならいい。寝てる? 勘弁して。
あとなんでクーぼんはこっちに来たんだ?
ここは男湯、あっちが女湯。なんか当たり前みたいにここで犬かきしとるけど」
胡乱な目をしたじーちゃんが酒を片手にしつつ文句を言ってきた。
温泉に浸かりっぱなしで出てこないと聞いたがこの様子だとマジで住み着いてそうだ。ふやけないのだろうか。あと年寄りが酒を飲みながら熱々の温泉は本当にどうかと思う。医者を常駐させた方がいいだろう。
「一人だとつまらんので」
今の女湯はマジで無人なのだ。面白みが何もない。それに別に大して問題ないだろ。世の中の温泉もだいたいが当温泉では7歳以下であれば混浴としております為、小さなお子様が性別に依らずご入浴される事もございますがご了承下さいとなっている。そして私は問題なくドラム缶だ。
かきかきかき。
「クーヤくんちゃんと身体は洗ったのかい?」
「私は垢なんて出ないぞ」
「老廃物出なくても汚れはついてるっしょ」
「ヌ……!」
痛いところを突かれてしまった。実際その通りではあるのだが。本で作った服は汚損なんかは受け付けないが、私本人はゴミや埃は落とさないと付きっぱなしなのだ。
それも夜寝ると綺麗になっているが。ついでに最近気付いたのだが別に寝てる間に勝手に綺麗になっているわけではなく夜な夜な悪魔連中が世話を焼いているらしい。互い違いだったり裏返しだったりする靴下も寝ると綺麗に整っている。マメな連中である。まあいい。犬かきしながら縁に近付いてざぶりと温泉から上がる。同じくラムレトが私の後をついてざぶりと上がってきた。よく考えたらお前も身体洗ってないだろ。
九龍が使い終わった石鹸をくすねてじゃぶじゃぶじゃぶ。頭も石鹸でじゃぶじゃぶじゃぶ。
「うーん、世の女性達が見たら発狂しそうな絵面。九龍くんもクーヤくんも全身全部石鹸で洗うのやめたほうがいいんじゃない?」
「頭はともかく全身砂で出来てるおめーが言えた義理じゃないだろ。石鹸が奥まで染み込みそう。
ていうかゴシゴシ洗ってるの見てると不安になるからやめてくんない?
絶対に砂量減ってるじゃろそれ」
「後で補充するからヘーキヘーキ!」
「減ってんじゃねェか」
「ふんふーん」
アホな言い合いは放っておいて桶いっぱいにしたお湯で泡を洗い流す。ざぶんとな。
あとは打たせ湯があるのでそれをシャワー代わりに残りの泡も綺麗に落としきってと。これでよし。
以前は全体が苔と樹木と土と氷だったがあんまりだとなったのか改装したらしいユグドラシルの温泉は程々に石畳が敷かれている。歩きやすくて結構なことだ。
にゅるりとカピパラのようにお湯へ入り込む。チンピラおっさんだらけの温泉の男湯などと普通に考えればばっちさ限界突破であるが源泉かけ流しでさらに日々掃除もしていると見えて綺麗なものである。単にじーちゃんが入り浸っているせいで隅の方に置かれているデカいタライに全員追いやられているだけという可能性もあるが。
「そういや九龍のギルドにあの二人が居るって言ってたな?」
「そーそー。5階で暇そうにしてるって。クーヤくんにお願いしてね、二人次第だけど復帰できそうっぽいよ。
九龍くんも電撃復帰しててね。色々面白くなってきたよ!
総司くんもどうだい?」
「儂か。………………面白くなってきたっつーのは否定できん。おめーらが儂を気にしてんのも知ってる。あそこに押し込んだ理由もな。
まぁお陰で死に損なったわけだが文句はねぇ。推しができたしな。最近はクロウディアさんも併せて推しグループだ。ドラゴンのあんちゃんは微妙だが。ドラゴン状態なら推しなんだがな。
クーぼんが来てからマリーベルさん達も生き生きしとるし、澱んだ空気が変わった。赤ん坊も毎日毎日寝て泣いてだ。
…………まぁまた表に出るのも悪くはねぇ、が。年は年だからあんま期待はすんなよ。
寝るのもはえーし勝手に目は覚めるし、動けねーし全盛期とは言わん」
「寝るのが早いのも勝手に起きるのも動かないのも前からだったよね?
お酒すっごい飲んでるし特に変化なくない?
九龍くんのほうが腰痛肩こりに悩んでるよ」
「うるせぇ、変なトカゲ斬り損なったんだぞ。
あの時の儂のショックがわかるか」
「えっ。プギャーーーーーーッ!!!」
「哎呀、マジか総司。トカゲ斬り損なったアルか。
笑っていいアルか?
哈哈哈!!」
「いいもクソも指差して笑ってんじゃねぇか!!
言うんじゃなかったわ!!」
「ヒーーーーッ!! ウケる!!
生徒会長にもおしえとこ!!」
「ケケケ、酒飲んでぐぅたらしてるからトカゲなんぞを斬り損なうよろし。
とっととぬるま湯出るヨ」
ざぶんと九龍が温泉から出ていく。そのまま水浴びが出来る場所に行った。どうやら温泉タイムもぼちぼち終了のようだ。
ラムレトも上がると風呂椅子に腰掛けて砂を乾かしているのかうちわでばさばさと身体を仰いでいる。その程度の風だと焼け石に水じゃないか?
ドライヤーの設置を考えるべきだろうか。
「くそ……しゃあなし、ぼちぼち出るか。ちと待て、持ち込んだ酒は全部飲む」
言いながら木桶から酒とツマミがどかどかと出てきた。どう見ても飲みすぎだぞ。いたいけな老人を労るべく犬かきで近寄って一升瓶を開けて吸い付く。何の酒だろう。穀物とは思うが不思議な味だな。ツマミは魚の燻製か。老人の酒のアテとしてはどうなんだろう。いやでもヒレ部分のようだしひれ酒用なのかもしれない。しゃぶると旨味成分が染み出してきて大変な美味。
「クーぼん、飲むのはいいが飲んでるのに男湯に居るのは変じゃないか?
混浴が許されるのは7歳未満だけですぅー」
「私はみっちゅだ!」
ちょっとサバを読んで申告する。
「じゃあ飲むんじゃありませーん」
だがしかしサバを読んでも足りなかった。
「ぐぬぬ……!!」
あまりにも正論。許せん、一升瓶の中身を全て吸い上げて口をすぼめる。
喰らえ!!
暗黒神ちゃん怒りの毒霧!!
「あ、こら!!
儂の酒を無駄にするんじゃない、テッポウウオか!!」
お湯を掻き分けながら逃げていくじーちゃんの背中を追いかけて放酒しつつ次なる弾丸を求めて木桶を漁る。
「って、酒くさ!
クーヤくんそれなんか変な効果でてなぁい!?
お湯全部酒になってるんだけど!!
神酒!? そんなことある!?」
声がした方向に向かって攻撃性のままに至近距離で砲撃した。
今の私はこの放酒によって全てを撃ち落とさんとするテッポウゴッド!!
お前も撃ち落としてやろうか!! 満席ランプが光る看板顔に向かって全開放酒してやった。
「ウワーーーーーーーーーッ!!!」




