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『転生したら、パワハラ上司が魔王になっていた』  作者: ばけつプリン


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12/18

国境で起きたこと

それは、俺が13歳になる少し前のことだった。



深夜。



屋敷の中が騒がしくなった。



廊下を兵士が走っている。



俺はベッドから起き上がり、部屋を出た。



父の執務室の前に数人の騎士がいる。



バルトもいた。



「何があったの?」


俺が近づくと、バルトが困った顔をした。



「ルーク様」


「国境?」


「……はい」



やっぱり。



「父上は?」


「中です」


「入っていい?」


「今は――」



その時。



扉が開いた。



父が出てくる。



いつになく険しい顔をしていた。



「ルーク。起きていたのか」


「何があったの?」



父は少し黙った。



隠すか迷ったのだろう。



それでも。



「国境で魔族が殺された」


そう答えた。



「戦闘?」


「違う」



詳しい話を聞いた。



人間側の巡回兵が、国境付近で魔族の小隊と遭遇した。



人数は人間6人。


魔族3人。



本来なら、互いに距離を取って離れるはずだった。



だが。



若い人間の兵士が怯えた。



魔族の1人が武器へ触れたのを、攻撃されると勘違いしたらしい。



矢を放った。



魔族1人が死亡。



残った2人は戦わず、遺体を連れて魔王領へ戻った。



「その兵士は?」


「拘束している」


父が答える。



「わざと殺したわけじゃないんでしょ?」


「本人はそう言っている」


「なら説明すれば――」


言いながら。



自分でも甘いと思った。



父の顔を見れば分かる。



そんな簡単な話ではない。



「向こうは何て?」


「まだ何も」



まだ。



また、その言葉だ。



「ただし」


父が続ける。



「必ず何か来る」



◇



翌日。



領都の空気は重かった。



事件の内容は、まだ一般には公表されていない。



それでも兵士たちの動きから、何かあったことは伝わっている。



俺は訓練へ集中できなかった。



「今日は終わりにしましょう」


イリスが言う。



「まだできる」


「魔法が3回も違う方向へ飛んでいます」


「……うん」



確かに。



集中できていない。



「心配ですか?」


「少し」



イリスも事情は知っているらしい。



「戦争になるかな」


聞いてみる。



イリスは答えなかった。



代わりに。



「戦争になってほしい人間は、ほとんどいません」


そう言った。



それでも起きるのが戦争なのだろう。



◇



3日後。



魔王領から使者が来た。



領都の門前に。



黒い馬。


黒い鎧。



3人の魔族。



中央にいる男には、額から2本の角が生えていた。



俺は城壁の上から見ていた。



父に降りろと言われていたが。



気になって仕方がなかった。



遠くなので会話までは聞こえない。



使者が書状を渡す。



父が読む。



その瞬間。



父の顔が変わった。



怒っている。



俺には分かった。



父が使者へ何か言う。



使者は無表情。



しばらく話した後。



魔族たちは帰っていった。



俺は急いで階段を下りた。



「父上!」


父がこちらを見る。



「何て?」


答えてくれない。



「何を要求されたの?」


「ルーク。屋敷へ戻れ」


「でも――」


「戻れ」



声が強かった。



俺は止まった。



父がここまで強く言うのは珍しい。



嫌な予感がした。



◇



その夜。



偶然。



聞いてしまった。



父の執務室。



中には父。



ローデン。



バルト。



それから数人の重臣。



「受け入れられるわけがない!」


ローデンの怒鳴り声。



俺は廊下で足を止めた。



「分かっている」


父の声。



「では拒否を!」


「拒否すればどうなる」



沈黙。



父が続ける。



「魔王軍が国境を越える。その時、死ぬのは10人では済まん」


10人?



何の話だ。



俺は扉へ近づいた。



「しかし……娘まで差し出せというのですか」



身体が止まった。



娘。



ローデンの娘。



それは。



「ミリア……?」



思わず声が漏れた。



中の会話が止まった。



しまった。



扉が開く。



父が立っている。



その表情を見た瞬間。



俺は理解してしまった。



魔王が要求したもの。



それは。



命だった。

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