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「宰相も皆も、それでお願い出来ますか?」
「承知しました。
その令嬢の資料はございませんので直ぐ調査を行います。まぁ簡単な物しか用意できないでしょうが…何もないよりはマシでしょう。数日、時間を下さい」
宰相の返答に、セリオールも王妃も頷く。
「調査の内容次第では、彼女を候補に含めると言うのは…自分で言い出して置いてなんですが、悪い話ではないかもしれません。
まぁ教育について行けるからと言って、資質が十分かは不明ですが、それはこれから見て行けば良いでしょう。
何より、これ以上公表が遅れるのは……」
王妃の危惧は、関係者一同も同じくしている為、急遽ソアラの使用人と偽っていた妹令嬢について、妃教育代行問題とは別口で調査が入る事になった。
取り急ぎ集められた資料は、他令嬢の物に比べると、驚くほど薄い。
それもそのはずで、生まれてから一度も社交の場に姿を見せた事がなかったと判明した。
ある意味秘された彼女の生い立ちに、公爵家一家の悪意と言うか…底知れぬ陰鬱さを感じなかった者はいないかもしれない。
まだ断定はできないが今回の疑惑も、彼女の意思が入る余地がなかった可能性が考えられる…と、婚約者候補に組み入れる事が決定した。
婚約者候補となった令嬢の殆どと、セリオールは言葉を交わした事がある。
尤も…ダンスなど、近しくなる事は避けていたが、全く面識がないのはその少女…メゾット公爵家第2令嬢ルナリス・メゾットのみ。
その為、セリオールは早々にルナリスとの時間を取れるよう、調整に入った。
やっと熱が下がり、諸々の疑惑他含めた取り調べが可能になった頃、それらの調査と並行して、セリオールも面会時間を貰う事が出来た。
調査官でも、取り調べの騎士でもないセリオールが部屋へ来た事に、ルナリスは一瞬で真っ青になる。
やって来たのが王族だと言う事で、良くない想像が駆け巡ったのだろう。
固まっていた彼女だったが、ハッと弾かれたように身を起こそうとするのを手で制すると、セリオールはベッド脇までやって来て近くの椅子に腰を下ろした。
「初めまして、で良いかな。
改めて…私の名はセリオール。
それはそうと、体調はどうだろうか?
嫌だったり辛かったりするようなら、また後日に改めるけれど…」
気遣う言葉が最初に発せられた事に、ルナリスの方は息を呑んで目を伏せる。
優しく問いかけてくれてはいるが、これは断罪の始まりだろうと、ルナリスは伏せた目をギュッと瞑った。
尋問は熱が下がって以降、散々受けている。
言える事は全て話した……どうせ助からない命なら、せめて洗いざらい話す事で、囚われた使用人達を助けて欲しい。
勿論わからない事もある。しかし自分が知っている限りの事、そして謝罪も既に言葉にしてあった。
そんな段階で王族が来たとあれば、刑が決まった違いない。
何も話しださないセリオールに、もしかすると最後の確認をされるのかもしれないと思い、ルナリスはベッドの上で、こっそりと深呼吸をした。
最初から嫌だったのだ。妃教育は姉が受けるべきもので、自分が代行して良いモノではないとわかっていたし、何度も拒否した。
真夜中に屋敷から逃げ出そうともした。
だって王族を騙す事になるのだ。そんな事、許される訳がない。
露見すれば首が胴から離れる…とわかっているのに、それに逆らえない自分自身にも、ルナリスは項垂れた。




