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私さえ消えれば、全て丸く収まるのでしょう  作者: 紫


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 ちなみに拉致(スカウト)理由は『容姿が好みだから』らしいが、此方も当然ながら嘘か誠かわからない。

 万が一『本当』であれば気の毒過ぎるだろう…。


 そんな目に余る行動言動の数々に、ほとほと困り果てた教育係達からの懇願もあり、ソアラは一時的に里下がりする事になる。


 元々の王太子トーマスの…ただでさえ少ない脳細胞が、お花(非常識)に侵蝕された事に端を発する婚約者交代劇や、立場の入れ替え等…数え上げればキリがない常軌を逸した行動言動に加え、更にここにきて王太子妃教育の躓き……。

 王妃を始めとした周囲は、最大級に頭を抱え胃を押さえた。


 暢気なのは主原因である王とトーマス王子夫妻だけ…という惨状は、涙なくしては語れない。


 調査開始と共に専属使用人と言うのが、実はメゾット公爵家の次女…つまりソアラの妹である事が判明した。

 義妹でも問題だが実妹を使用人と称して引き入れ、その上倒れる程こき使うと言うのは、ソアラの人間性を疑うに十分な事実であると指摘が入る。


 もう…どこもかしこも問題だらけで、誰も彼もが頭を抱え胃を押さえる中、王妃が爆弾を投下した。

 いや、一応擁護するなら、王妃は誰かに向けて発言した訳ではなく、どちらかというと思い付きが呟きとなって漏れた…そんな感じである。


「妃教育の代行疑惑が事実なら、ソアラ嬢の妹君は優秀かもしれない…?」


 とうとう王妃まで頭のねじが飛んでしまったか…と室内に不安が増す中、助けを求める様な視線がセリオールに集中する。

 そんな微妙な空気に気付いたのか、少しばかり焦ったように…けれど腑に落ちたと言いたげな表情で王妃は続けた。


「ぁ…いけないわね、つい…言葉にするつもりはなかったのだけど。

 ……けれど…。

 セリオール、貴方はどう思いますか?」


 王妃は考え込むセリオールに視線を向けているが、それ以外は『何言ってんだ? こいつ…』と言わんばかりの視線を王妃に向けている。

 だが、当のセリオールから発せられた言葉は、予想もしなかったものだった。


「……言葉にする事を許して貰える……の、ですか?」


 その発言に、全員が固まる。

 ソアラが婚約者となるに至った経緯に、セリオールは一切関与していない。元々トーマスが外見が好みと言う、あまりにしょうもない理由で選んだ婚約者で、それがそのままスライドしたに過ぎなかった。


 つまり…はっきり言えば押し付けられた婚約者でしかない。


 王族の婚姻は政略が殆どだと理解しているセリオールは、自分を抑え込んで、そんな理不尽も受け入れた。

 内定段階で書類の作成もされていなかったとはいえ、公爵家には一報を入れてしまっていて、セリオールが口を挟める状態でもなかったからだが…。


 なのに…すったもんだの挙句とは言え、自分の声を聞いて貰えるなんて…と、半信半疑の言葉が口を突いて出た。

 実母である王妃は、弟王子のあまりの哀れさに、思わず目頭を押さえたと言う…。


「勿論です。

 貴方には苦労を掛けるばかりで……本当にごめんなさい。

 王陛下を押さえ込める力がわたくしにありさえすれば、こんな事には……」


 自分に集まる視線の意味に、王妃は頷く。


「皆の危惧も理解しています。

 どんなに優秀であっても王家を騙しそうとした事実は消えません。

 事実ではありますが、これ以上選定に時間を掛けられないのも、決して消えない現実です」


 王妃はそこで一度言葉を切り、唇をキュッと引き結んでから、再び口を開いた。





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