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私さえ消えれば、全て丸く収まるのでしょう  作者: 紫


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 何はともあれ、これで…以前に比べればブルームロード王国の未来に希望が持てる…と、皆安堵した。

 セリオールの王太子としての資質は勿論、教育には何の不安もない。

 元から優秀であったし、何より気構えが違う。兄トーマス夫妻や王のように、『自分が世界の中心』を体現する事も、『なんて不幸で可哀想な自分』…と酔いしれる事もない。


 そんなセリオールと、少々不安なソアラとの婚約の儀の日取りも決まった。


 本来なら婚約書類を整えた上で、署名する…所謂(いわゆる)婚約の儀とも言うべき手順を経てから公表し、妃教育を始めるのが普通なのだが、今回は異例の事態で、ソアラの教育は既に始まっている。

 それの為に住まいを公爵邸から王宮に移す事になったのだが、その時に…またも問題が持ち上がった。

 ソアラが駄々をこねたのだ。


「わたくし、自分の専属使用人を連れて行けないなら、教育なんて絶対に受けないわ!」


 他の国は知らない。

 しかしブルームロード王国では、教育中に生家からの使用人同行を認めていない。

 それと言うのも、どうしても甘えが出てしまうと考えられていたからだ。


 王族となる以上、いつまでも甘えてばかりはいられない。自立し、自身を取り巻く海千山千に立ち向かわなくてはならないのだ。


 それ以上に、王族に連なる妃としての教育には、関係のない者が知る必要のない情報も多々含まれている。

 そう言った諸々を考えると、どうしても同行を認める訳にはいかないのだが、ここでも王が許可を出してしまった。


「いいのではないか?

 専属使用人の一人くらい滞在させる事は難しくないだろう?」


 …と………。


 『いや、そう言う意味じゃない』と、全員が突っ込みを入れたかっただろう。


 状況だけを言うなら難しくはない。部屋は余っているし、優秀な使用人達も居るのだから世話する事も問題ない。

 だが、ダメだしされているのはそこではない…と、何度も皆が言い、王に撤回を求めたが、結局そのまま有耶無耶の内に当日となってしまった。


 ここまで来ると、王位も早々にセリオールに譲って欲しいと、声にならない声が王宮内に漂い始める。

 が……それどころではなくなった。



 ソアラの王太子妃教育は、当初の予想を裏切る程順調で、なんの問題もないと思われていた。

 『噂とはアテにならない物だ』と、良い意味でホッとしていたのだ………が…。

 徐々に問題が露呈し始める。


 最初に気付いたのは語学の教育係だった。


 講義時間中に目の前で書かれる文字と、課題として提出されるレポートの文字が違う事に気が付いたのだ。

 加えてソアラの専属使用人が過労で倒れたのと時期を同じくして、課題の提出がピタリと止まった。


 当然のように追及するが、ソアラはのらりくらりと返答を避ける。

 メゾット公爵夫妻も呼び出して疑問を投げかけるが、言い掛かりだと怒りを顕わにするだけで返答になっていない。

 浮かんだ代行疑惑の目は専属使用人に向けられたが、当人は過労に病が重なって高熱で寝込んでおり、話ができる状況ではなかった。


 妃教育の課題代行疑惑も問題だが、専属使用人を倒れるまでこき使うのは如何なものだろうと、非難の矛先がソアラに向けられる。

 この時期のソアラはかなり荒れて誰も近寄れず、辛うじて若い護衛兵士だけが宥める事が可能だった。


 護衛『騎士』ではなく、護衛『兵士』なのは、巡回警備の任に着いていた騎士付きの新人兵士の一人を、ソアラが強引に自分の警護にと希望した為である。そんな無茶が罷り通ったのは、騎士がメゾット公爵家の遠縁だったから…とも言われているが真偽は不明だ。





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