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多少の交渉はあったが、概ねルナリスの希望は受け入れられた。
帝国と言う、数多の小国を併呑してきた支配体制をとる国だからこそ、ルナリスの脅しは効いた。
ミッケン王国と言う貧しい国から搾取できる利益より、足元が揺らぐ事の方が困るのだろう。下手をすれば内乱に発展する可能性だってゼロではないのだ。
なにはともあれ、帝国とも話は付いた。副産物的に、学術的な事等でも成果はあったが、一番助かったのは、思った以上に帝国が渋らなかった事だ。どちらかと言えば、ヨーゴン王国の方が面倒だったくらいである。
なんにせよ、これでやっと戻る事が出来そうだ。
「これでガモール王子とも話が出来るわね」
ルナリスの呟きに、マリルーは肩を竦めた。
「ガモール王子と話…ですか?
いえ、ルナリス様の提案は、国同士としてアリかと聞かれたら、アリだと思いました、えぇ。
現在ヨーゴンと帝国が接している地域を、緩衝地として明け渡させて、ミッケン王国も含めた中継地として活用する。
まぁ、その方が経済は動きやすくなるでしょうけど…」
ある意味、イヤノグ帝国とヨーゴン王国に、一部とは言え国土の主権を手放させたのだ。
とんでもない提案だと言えるだろう。しかし、今回経済的に力のあるブルームロード王国に迷惑を掛けた事は、両国にとって決して小さくない問題だった。まして、それを準王族…まだ婚約者でしかなく、王族とは言えないルナリスに知られて、交渉材料にされた事は、何より堪えたらしい。
情報が洩れまくっていると言う事に他ならないからだ。
「だからって、別に中継地の何もかもを手放せなんて言ってないわよ? ちゃんと利益を得られる提案もしたんだもの
でも、あんな不平等取引を続けていれば、遠くなくミッケン王国は衰退してしまうわ。ほんの少し調べただけで、今でさえミッケン国民は悲鳴を上げてるのがわかるのよ?
何より、ミッケンを地図から消したところで、得られるモノなんてないわ。
物の売り付け先、買い付け先がなくなると言う事だし、難民が大量流入してくるかもしれないのよ?
そして禍根は残る。
セリオール様の治世になった時に、そう言うのは困るのよ」
マリルーも頷く。
もし、ルナリスの言った未来が現実になれば、ブルームロード王国だって無関係でいられる筈がない。
「ですが、これらの結果がガモール王子と何の関係が?」
マリルーが疑問に思うのも無理はない。
ガモール王子と話が出来たらなんだと言うのだ?
話が出来ても、彼が我が国に持ち込んだ諸々が、消えてなくなる訳ではない。
ブルームロード王国次期国王であるセリオールを、負傷させた罪はきっちり償ってほしい。
第一、ルナリス自身が一番の被害者だろうに…。
マリルーはそのままルナリスへ問う。
するとルナリスは、ここ最近隠しもしなくなった少々悪い笑みを浮かべる。
「当然償って貰うわ。
彼には死んでもらうもの」
マリルーの表情は、更に疑問で歪んだ。
何を言っているのかわからない…日本語でOK…ではなく、我が国の言葉でお願いしたいと切に思った。
他国王族であっても、罪は罪として裁く…と言うのは大変気持ちが良い。しかしそれなら尚更、話をする必要なんかないではないか…と、マリルーはムムッと唸った。
「まぁ、直ぐにわかるわ。
どうせ彼と話さないといけないんだもの」
結局ルナリスは、マリルーの疑問に直接的な事は話さないまま、セリオールの元へと戻って行った。




