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フールは両親からの溺愛を受け、生まれて此の方、籠の鳥で育った。
だから特に結婚願望もなかったのだそうだ。何しろ隔絶されて育ったのだから、願望を持つ切っ掛けもない。
しかしすぐ下の妹…第2王女に縁談が持ち込まれ、見た事もない様な綺麗なドレスや宝飾品を贈られているのを見て、とても羨ましくなったのだと言う。
「ヒック…だ、だっで…おどうさま、もおかぁざま、も…あ”ちゃく、しをイイゴっでしてくりぇるげど、あんな”きれーな”ドレスはぐれながっだも”ん!!!
そ、そんなの”…ずる”いも”ん!!!」
「「………」」
ルナリスもマリルーも、半眼無言にならざるを得なかった。
何しろこれで、御年28……トーマスよりも年上だと言うのだから、半眼になっても仕方ないだろう。まぁ、気持ちはわからなくもない…。
年齢の話は一旦置くとして、そんな感情を持て余していた時、テューメに縁談相手の絵姿が届けられた。それと一緒にブルームロード王家の寄せ絵も持ち込まれたらしく、フールも見る機会があったのだそうだ。それを見た瞬間、フールは胸の高鳴りを感じたらしい。
本人曰く、何もかもがフールの好みで、間違いなく初恋だと力説している。
どうしても自分がトーマスと結婚したいフールと、何としても回避したいテューメ…二人の利害が一致した結果、婚約乗っ取りを敢行するに至ったらしい。
ちなみに王女姉妹の両親の説得は、テューメが担当したそうだ。
何はともあれ、これで今回のルナリス誘拐、セリオール負傷に繋がる一連の原因が、ヨーゴン王女達が自分の希望を優先した結果だとわかった。
王女だからといって、一生を左右する結婚相手に希望を持つな…とは言わない。
しかし政略は王族に限らず、貴族には大事な仕事の一環で、その希望を他国にまで持ち出すのは、少々話が異なる。
今回の婚約すげ替えの犠牲者は、既に犯罪者として捕縛されているソアラだったので、被害は大きくなっていないが、多くの場合王太子妃として望まれる令嬢は、真っ当な方々だ。
他国王女の個人的希望で、まともな令嬢に不当な傷を負わせるなんて、許されて良い事ではない。
他国でも多くがそうだと思うが、婚約解消や白紙化の原因は女性側に擦り付けられる。男性優位という歪な世界では往々にしてある事だ。
トーマスにこの話を聞かれたくなかったのも、そう言った点について自覚があったのだろう……と、思っていたのだが、ふと気になって追及してみた所……。
「い”やよ”!
だ、だっで……あ”ちゃぐしの方が、がっついてだな”んで…しられ”だら、はずがし、いも”ん!!」
義理とは言え、これが姉になるのか…いや、まだ婚約はしていても結婚はしていないので、未来の姉…ではあるが……。王妃の言う通り、これでは公務に参加する事は難しいだろう…というか、させてはならない。
しかし、おかげで情報は手に入った。
今回ばかりは、お頭だけでなく、口も軽かったフールに感謝しても良い。
この事で第3王女テューメに圧力をかける事ができそうだ。
ヨーゴンの南側は渓谷や山脈、他にも砂漠という不毛の大地が大きく横たわり、海に至る事さえ難しい。その為彼の国も、ある意味ミッケン王国と同じく、海を挟んだ大陸との交易には、ブルームロード王国の港を利用するしかなかった。
なのに、その港を保有するブルームロード王国に、問題を持ち込んでいる。言い方を変えれば、ある意味、意図的に内政干渉を行ったに等しいのだ。




