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程なくしてフールと会える事になったのだが、ある意味噂通りの人物であった。
容姿は本当に噂通りで、同性であっても思わず庇護欲が顔を覗かせてしまうほど可愛らしい女性だった。
ただまぁ、それ以外も噂に違わず至極残念と言うか……彼女はルナリスと話す間も、トーマスに膝抱っこされたままお菓子を頬張っていた。流石に菓子を口に入れたまま喋る等と言った事はなかったが、それも恐らく自分が喋りにくいから…という単純な理由で、マナーを意識している訳ではない。何しろ口端から菓子くずがポロポロと零れ落ちていたのだから…。
その度にトーマスが甲斐甲斐しく世話を焼いていた。フールはルナリスよりかなり年上の筈だが、王妃が眉を顰めていたのも頷けると言うもの……。
だが話すうちに、フールが固まってしまう。
固まったのは、フールがブルームロード王国に来る事になった経緯について、話を聞こうとした時だった。
第3王女の旅に駄々を捏ねて同行したと言うが、マリルー達に調査を依頼した結果、国家間で政略結婚の話が出た時に、既に準備に入っていた節が見られたのだ。
当事者である第3王女…名をテューメ・ヨーゴンと言うが、彼女が旅の準備を始めるなら理解出来る。しかしそれと時期を同じくして、フールも旅の準備をし始めていたのだ。
しかも、婚礼に纏わる物…衣装や装身具は、フールのサイズで注文が出されていた。
ヨーゴン王宮に直接調査に入る事は出来なかったが、商家なら話は別だ。
注文書やサイズ表、納品書などは商家にも保管されている。他にも下働きの者達からの証言も集めてくれていた。
最終的には本丸に接触も考えているが、その為にもフールから言質は取っておきたい。
固まったフールは、強張った表情でトーマスに退室を迫った。
これまでずっとベッタリ張り付いていたフールから、少し出て行ってくれと言われたトーマスはポカンとしていたが、フールが部屋から押し出してしまう。
扉を閉め、内鍵まで掛けた所でフールは向き直った。
「な…なにが聞きたいのよぉ……。
あぢゃぐし…を…虐めな、いで、よぉ……」
くしゃりと顔を歪め、ぽろぽろと涙を零すフールに一瞬思考が停止しかけたが、続く泣き声にドン引いた。
『うわぁぁぁぁ~~~~~~~~ん!!!』と、まるで幼児のように声をあげたのだ。声だけでなく、床にぺたんと座り込んで泣く様は、『ように』どころではなく『幼児そのもの』であった。
扉の外に押し出されたトーマスも、フールの泣き声に焦っているようだったが、ルナリスだってどうして良いかわからない。
同行していたマリルーに、困惑を抱えながらも指示を出してその場を収めたが、フールはトーマスが同席する事を頑として拒否した。
落ち着くのを待って話を聞く。
そしてわかった事は、婚約乗っ取りは計画的だった…と言う事だ。
政略の当事者であった第3王女テューメから、話を持ち掛けられたのだそうだ。
フール自身は、妹であるテューメが、何故婚約を譲ろうとしてくれたのかわからないと言っているが、それについては多分判明している。
調査で拾ってきてくれた証言の中に、テューメには相思相愛な相手がいる…と言うのがあった。
彼女は恐らくだが…国内に留まって、想い人と添い遂げたかったのだろう。
その為、フールを唆したのではないだろうか…。




