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王太子の婚約者と言う準王族の誘拐、しかも間接的とはいえ王族を害した以上、他国の王子と言えど貴族牢なんて生温い扱いにはならなかったが、流石に自国貴族ではないので一般牢だ。
その牢内で尋問されているのだが、やはりと言うか…のらりくらりと質問を躱すか、無言を貫いている。
その様子を覗き見ながら、ルナリスは届いた調書を読んでいた。
そこには、あくまでソアラとメゾット夫妻側みた側面が書かれていたが、予想以上に計画については聞いていたらしい。
元々はヨーゴン王女であるフールが目的だったなんて、考え付きもしなかった。
「(だ~か~ら~、もういいでしょ?
あ?
部下って言っても、脅してやらせただけだしなぁ~。
そういうの、アンタ等が調べたら良いんじゃねぇの?
最初っから答えが見えちゃったら、つまんないでしょ~が)」
素直に答える気のないガモールの声を聞きながら、調書の方も読み進める。
(ガモール王子は話す気はないようだけど、とりあえず見えてくるのはミッケンの窮状ね…。
戦争にまで至ってしまうのは避けたい…けれど、ヨーゴンと帝国の間に不和を起こして、ミッケンにまで手が回らないようにしたい…って所かしら)
そんな事を考えながら、そっと牢内の様子を遠目に伺う。
ガモール王子は不遜な態度をとりながらも、視線は忙しなく動いていた。多分だが、部下達の安否を気にしているのだろう。
現に……
「(で?
そのあいつらは何処で何してんだよ?
ったく…部下甲斐のない奴らだぜ。でもまぁ、それも当然か。
脅した相手がどうなろうと、普通は知ったこっちゃねぇよな。クク…)」
だが、話す内容とは裏腹に、声に焦りのような動揺が滲み出ている。
(王族の癖に感情も隠せないなんて…。
よくもまぁ、こんな甘ちゃんに委ねられたわね。私だったら、大事な計画ほど、甘ちゃんに任せるなんて怖くてできないわ…。
……でも、言い換えればそんな彼に預けないといけない程、追い詰められていた…とも言えるのかも…)
ルナリスはすっと目を細めた。
最終的にガモールの証言は、出来る事ならば欲しい。だが、この様子だと押すだけでは何も話してくれないだろう。
しかし、手を変え品を変えれば?
(そうね…陥落させる為にも、先にヨーゴンと帝国の方から着手した方が良いかも。まぁ、そっちも手詰まりになったら『死んだほうがマシ』な目に合わせてやれば良いか…)
ルナリスにしたって、別に拷問を望んでいる訳じゃない。いや、別に嫌だとも思っていないけど。
セリオールを苦しめるに至った輩には、同程度以上の苦しみを…と思っているだけで、その前に得られるモノがあるのなら、余さず拾っておくべきだと考えている。
命に別状がないのなら、セリオールが次期国王となる事は確約された未来だ。だったら彼の治世に少しでも有利になる情報他は、どんなに小さな事でも手に入れておきたい。
「グナタン様、お願いがあります」
マリルーは恭しく騎士としての礼を執りながら、一言添えた。
「ルナリス様。
どうぞマリルーとお呼びください。貴方様は殿下の大事な御方。その方に名を呼んで頂けないのは少々悲しいものがございます」
「ですが、まだ婚約者でしかありません」
ルナリスは困ったように首を振る。
自分もセリオールの傍に居たいと望んでいる。しかし、それはまだ未定な部分を内包しているのだ。




