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「ィ……ィ、ィ…イチャついてんじゃないわよッ!!!!!」
キドニーによって短剣を持っていた腕を捻り上げられ、床に押さえ込まれるようにして拘束されていたソアラが、顔を真っ赤にして喚きだした。
本音を言葉にする事が許されるのならば……ルナリスの頭からソアラや公爵夫妻の存在は、一瞬とは言え綺麗さっぱり消し飛んでいた。
それほどセリオールに生きて会えたことが嬉しくて、他の事に割く余地なんて欠片も残っていなかったのだ。
改めて見れば、ソアラは先に言ったように既に押さえ込まれている。小瓶を放り投げて逃げようとしていた公爵は、不思議な事に床の上で転がっていた。
手足を投げだして、だらしなく仰向けに伸びているのだ。
どうやら身を捩った拍子に、そのままバランスを崩すか何かしたのだろう。
床に頭を打ち付けるなどして、気絶してしまっているようだ。
父親も気絶して、夫人は…ルナリスからは見えないのでわからないが、彼女が騎士に抗える筈もない。倉庫を出る前に問題なく確保されている事だろう。
そんな…誰も味方がいない四面楚歌の状態なのに、ソアラは何処までも強気だった。
「何が愛する人…よ…。
何がカッコイイよッ!!!」
あの細身の身体のどこにそんな余力があったのか……押さえ込んでいるキドニーが舌打ちしてしまう抵抗しながら、ルナリスに食って掛かる。
「愛されるのはわたくし!!
アナタじゃないのよ!!
殿下、わたくしを見てください!! アナタの愛はわたくしの物でしょう!!??
だって、それ以外ありえないわ!!
わたくしに殿下を返しなさい! アナタが妃だなんて…許される事じゃないのよ…その席はわたくしのモノなのよ!」
今更…既に王太子護衛騎士に捕縛されている身…つまり犯罪者というレッテルがベッタリと貼り付けられた後だと言うのに、どんな脳内回路ならそう言う思考に至れるのか…理解に苦しむ。
それはルナリスだけでない。セリオールも同様らしく、まるで異形の化け物でも見る様な目を向けているし、キドニーに至っては頬をピクピクと痙攣させていた。
だが、何より許せない言動があった。
ルナリスは、ソアラをキッと睨み付ける。
「セリオール様は物じゃありません。
ソアラ様の思い通りになる人形じゃないのです…そんな事もわからないのですか?」
「う、煩い煩い煩いッ!!
アナタ如きが、わたくしに意見なんて、許されない事なの!!
いいから、わたくしに殿下を返しなさい!
なんなのよ…殿下の御名を呼ぶなんて…わたくしは許して貰えなかったのに、どうしてあなたは許されてるのよ!!!
なんでアナタばっかり…。王太子殿下も王子殿下もどうして…わたくしの方が相応しいのに!!」
元々、セリオールがルナリスに気付く切っ掛けを作ったのも、ソアラ自身だったにも拘らず、本当に自分に都合の悪い記憶は、綺麗さっぱり白紙化されるらしい。
ここまでくると、いっそ清々しい。当然、悪い意味で…だが。
何を言ってもソアラに届く事はないかもしれない。しかし、ルナリスだって以前とは違う…変わったのだ。
全てを諦め、唯々諾々と言われるまま流されていた頃のルナリスではない。
自身の身体に回されたセリオールの腕から抜け出し、正面からソアラを睨み据える。
丁度、セリオールを背後に庇うような位置取りになりながら口を開いたその瞬間、背中にゆっくりと圧し掛かってくる何かがあった。




