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【完結済】私さえ消えれば、全て丸く収まるのでしょう  作者: 紫


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 耳を劈(つんざ)くような激しい音が続いた後、嘘のようにシンと静まり返る。


 ルナリスは周囲の音が霧散した事に気付き、改めて自分の視界と身体を包み込んだ影に意識を向ける。その影が齎(もたら)す暖かさと、愛おしく安心できる香りに、ルナリスは薄く開いた目を潤ませた。


「…セリオール様……」


 自分なんかの為に、セリオールの身が危険に晒されてはならない…そうと理解していても、彼から向けられる不器用な愛情に、どうしても期待してしまう自分がいた。

 だから、こうして救いに来てくれた事が嬉しくて、ルナリスはセリオールの伏せた頬に指先を伸ばす。本当に現実なのか…と、確かめるようにそっと触れれば、セリオールが抱き込む腕の力を緩めてくれた。


「良かった…無事で……」


 再び彼の腕の中に閉じ込められる。

 やっと実感がわいてきた。願いが叶った…と。

 セリオールに一目なりとも会いたかったという願いは、こうして叶えられ、ルナリスも恐る恐るセリオールの背に腕を回して彼を抱き締め返す。


「…助けに来てくださって…ありがとうございます…」

「当然だろう?

 もう、君は私にとってなくてはならない存在なんだ。

 だから…私の方こそありがとう」


 セリオールの言葉の意味がわからず首を傾げる。


「……以前の君だったら、諦めてしまっていたんじゃないかって…そう思ってしまうんだ…。

 多分間違えてない…だろう?

 諦めず、私を信じて待ってくれた事が嬉しいんだ」


 ルナリスは図星を突かれ、目を見開いて固まってしまう。

 確かに以前の自分ならそうだった。けれど、そんな自分に気付かれていたとは思わなかった。


「ど…して…」

「ずっと見ていたから。

 君は何時だって我慢して、耐えて…そして静かに手放してしまう。

 でも、私の事は手放さずに待っていてくれたんだろう?」


 生まれてこの方、古参の使用人達から情や気遣いは向けられていた。

 しかし、これほど深い愛情を向けられた事なんて初めての事で、ルナリスはどう振る舞えば良いのかわからない。

 わからないまま、頬や耳だけでなく体温が高くなるのを感じた。


 気恥ずかしくて、否定した気持ちが顔を覗かせるが、そんな天邪鬼な自分を抑え込んで顔を伏せる。


「……その……お会いしたかった…一目だけでもお会いしてからでないと死ねないって…」


 抱き込む腕の力が強くなる。


「馬鹿…死ぬとか言うな。

 それに……死ぬなんてずっと先の事だ。

 そして、いつの日か、その時はきたら…きっと一緒に天へ向かおう。

 あの世とやらでも、共にいられるように」

「!………ぃ…はい!」


 気恥ずかしさより嬉しさが上回り、ルナリスはパッと顔を上げた。

 だがその瞬間、ルナリスの喉が詰まる。


「!?」


 セリオールの眦近くに走る鮮紅色に息が止まった。

 冷淡さを纏い、人を寄せ付けない程の美貌に傷が付いてしまった事に、ルナリスは身体が震える。

 ルナリスの視線に気付いたのか、セリオールは困ったように微笑んだ。


「愛する人を守れた勲章だ。

 男らしくてカッコイイだろう?」


 茶化すセリオールの笑みが、滲んで歪む。

 自分のせいで彼が負傷するなんて…と、ルナリスの頬を雫が伝い落ちる。自責の念が渦を巻き、ルナリスの身体の中で膨れ上がった。


 自身の感情を持て余し、叫び出しそうな衝動にかられたその時、場違いも甚だしい声が響き渡る。






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