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暫くして戻ってきたマリルーは、離宮付近の簡単な手書きの地図を持ってきた。
「お待たせしました。
温室はやはり現在は使われていないとの事でした。ですが『池の奥』と言うのはわかったかもしれません。
庭師の話では、温室の脇に以前は貯水池があったそうなんです。
今は水を抜いて、単なる窪地になってるそうですが、雨の後は水が溜まる事もあるとか……その奥に庭師達が使っていた通用門があったと言っていました。
こちらも現在は使われなくなっていて、木材他で封鎖した筈との事でしたが」
マリルーが言い終るや否や、キドニーが他の騎士に確認を指示した。
結果、通用門を封鎖していた木材他は撤去されていて、鍵も壊されていた事が判明する。
周囲には蹄の後も残されていて、そこからルナリスが連れ去られた事は間違いないようだった。
捜索は秘密裏に進められた。
その為進みは遅かったが、それでも幾つかの情報を手にする。
大きな麻袋を積んだ馬を見た者がいて、進んだ方向がわかり、捜索の範囲を大きく絞る事が出来た。
見た者達は隊商にしてはおかしい…盗賊かもしれないと思ったそうで、記憶に残ってはいたものの、報復が怖くて報告するか悩んでいたらしい。
あの日…メゾット公爵一家と対峙した日、セリオール達は得た情報を王妃にのみ直ぐに伝えた。
王妃の指示で、メゾット一家を返す前に彼の家の馬車をこっそりと調べたが、何もでずそのまま返さざるを得なかった。
王妃曰く…ルナリスが一番邪魔なのはメゾット公爵家だろう…と。
勿論、娘を王太子妃に…と言ってきた家も全て調べたが、これといった情報は何もなかった。
尤も、それとは別に横領等が発覚し、後程罰せられる家がちらほら見つかった事は……まぁ、別の話である。
手に入れた情報を合わせ絞っていくと、やはりメゾット公爵家が怪しいと言う結論に達する。
「しかし公爵家の邸内にはいない…それは間違いないのですね?」
王妃の問いに答えるのは宰相だ。
「影が潜入までしてくれた調査結果ですな。
それに人一人隠すとなると、直接姿を確認出来ずとも使用人達の動きが怪しくなりますから…それもなかったようです」
セリオールは憔悴しきって、真っ青な顔で肘掛椅子に座り込んでいる。
「最悪の結果も覚悟しなければなりませんか……」
王妃が重く零した声に、セリオールが息を呑む。
その時、慌ただしく扉を叩く音がした。入室の許可を出すと転げるように入ってきたのは女性騎士のマリルーだった。
「失礼しますっ!!
怪しい倉庫を発見しました!」
視線が集中する。
「メゾット公爵夫人の生家…今は平民となった弟君の商会が保有していた倉庫です。
その弟君は既に亡くなっていて、所有状況が曖昧になっていた為見落としていたようです」
「直ぐに向かう!」
瞳に光が戻ったセリオールが弾かれたように立ち上がった。
「セリオール待ちなさい!
まだ生存しているかどうかもわかりません」
王妃が止めるが、セリオールは止まらない。
「そんなもの…待っていられません!」
「御安心を!」
控えていたマリルーがニヤリと笑った。
「既に使われなくなって久しい倉庫に、この数日、人の出入りが確認されています。
中には深紅の馬車も乗りつけられたと…家紋は隠されていたそうですが」
マリルーの報告に宰相が眉根を寄せる。
「はぁ…深紅って……ねぇ…。
もうメゾット家だと公言しているようなモノではないですか…あんな趣味の悪い馬車、メゾット家以外に保有している家はありませんよ」
宰相がげんなりと問う。
「そう…食料品の搬入なども確認したの?」
「勿論です」
王妃からの問いに、マリルーが肯定を返すと、最早一刻も猶予もないと言わんばかりにセリオールが駆けだした。
見送るしかなかった王妃が『無事に…』と小さく祈った。




