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「えぇ、ですから顔を見に行きたいと思いまして」
「はい?」
しっかりと休憩する為に会う…と言う謎文言に、一斉に視線がセリオールに集まった。
そんな視線を意に介する事もなく、セリオールは面々の笑みを浮かべる。
「疲れているからこそルナリス成分が必要なのです。
私には一服の清涼剤…最早なくてはならぬ存在」
晴れやか且つ爽やかに言い放つセリオールに、やはり本人と護衛騎士以外の全員が半眼になった。
「………あぁ、そう。
そこまで…ねぇ。良い事だわ……えぇ、砂糖を吐きたいほどに…ね。良いわ、行ってきなさい。
あぁ、待って…その前に」
王妃はしっしと払うように促した手を、一旦止める。
「妃教育の方は順調だと聞いてるけど、そういえば貴方はどう? まぁ今の表情だけでわかるけど、ちゃんと報告として聞いておきたいわ」
片側の口角だけを器用に上げた王妃の顔には、少々意地の悪さが滲み出ていた。
だが、真面目が服を着て歩いているようなセリオールに、揶揄われているのだなんて考えは浮かばない。
少し考え込むような仕草をした。
「どう…と言うのは?
私の気持ちと言う事ですか?
それなら御心配には及びません。ルナリスは可愛いんですよ。先日も講義の合間に菓子を持って行ったんですが…あぁ、どうしてあんなに愛らしいんでしょう…。こう…子リスのような可愛らしさで、つい悶絶してしまいました。
まだ講義が残っているのはわかっていたのですが、つい抱え上げて膝抱っこしてしまい…そうするとこれがまた恥ずかしそうに頬を染めて…顔立ちは美人系なのに、なんだってあんなに可愛らしいのか……あぁ、そうです。ルナリスはまだ痩せすぎですよね?
どうにかしてもう少し食べさせたいのですが、母上…良い案はないでしょうか?
彼女の好物を聞いても、こう…はわっと微笑んで『全部美味しいです』とか言うんですよ。あれって気を遣わせてますよね?
私はどうしたら良いんでしょう…そうそう、この前も「殿下…」…ん?」
護衛騎士であるキドニーが、溢れる愛が止まらないセリオールをやんわりと止めた。
止められた理由がわからないセリオールだったが、キドニーの雄弁な目線が語る。一同を見回し反省したのか、んんと態とらしく咳ばらいをしつつ立ち上がった。
「失礼しました…では」
正気に返ったせいで気恥ずかしかったようだ。
誤魔化すように王妃に一礼し、そそくさと部屋を後にする。行先は…自己申告もあった事だし追及不要だろう。
室内に流れる、何とも言えない空気感を、最初に破ったのは王妃かと思いきや宰相だった。
「いやはや…参りましたな。
こういうと自分に返ってきて辛いものがありますが、良いですな…若いと言うのは…」
しみじみと紡ぎ出された言葉に、一同大いに頷いた。
「全くだわ。
というか、息子の惚気なんて聞きたくなかったんだけど。気恥ずかしすぎて身の置き所がないわよ」
場を持たせるにも扇は自分の手でゴミにしてしまっているので、王妃は仕方なく手で自身を扇いだ。
「それにしても…あんな子だったかしら…
なんだか以前のあの子って、もっとこう…冷めたと言うか…」
宰相達は気不味そうに目配せし合っている。
思う所はあるのだが、口にするのは憚られる…といった感じだ。




